死刑執行人

陽真

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物語ノ始マリ

公爵と相談。

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「それで、今後の事なのですが‥‥‥‥、学園入学の際の後見人になっていただくという事でよろしいですか?」
僕はタイミングを見計らって、本題に戻した。
「うん。そうだね。学園の入学式は過ぎてしまっているから、編入生となるのかな?」
「はい、そうなります」
「そうか、じゃあ、こんなのはどうだろう」
サレズ卿はイタズラっ子のような顔をした。

話によると、僕たちをサレズ卿の御子息、リーグ様の腹違いの弟といことにしたらどうか、というものだった。
リーグ様は今年入学したらしい。
貴族社会において、腹違いの兄弟、姉妹は不思議ではない。
学園内においても、一定の教養をつけるために庶子の子であったとしても通っていることは極々自然なことだという。

学園には初等部から高等部まであるが厳密に年齢制限はなく、ただ、八歳以上ということだけが決まっている。
であるから、この年齢制限の下を行かないこと、それと、リーグ様の弟として不思議ではない年齢さえ、気を付けていれば問題ないだろう、という事だった。

まぁ、流石に八歳まで戻るのは些か、抵抗があるから問題はないんだけど。

「僕達は問題ないですが、御子息、リーグ様は宜しいのですか?」
ユズマにアイコンタクトで確認を取ると、サレズ卿に言った。
「そのことに関しては大丈夫。リーグにこの件を話して、了承を得ている。本当はいけないんだろうけど今回は大目に見てくれると助かる」
「それならば問題ありません。今回はリーグ様のご協力が不可欠ですから」
「そう言ってもらえると助かる。編入時期は、そうだな、夏季休暇の後なんてどうかな」
サレズ卿は少し考えてそう言った。

「夏季休暇後ですか?確かにその方が都合が良いですが‥‥‥」
夏季休暇後ならば、多少なりとも目立たなそうだ。
まぁ、公爵家の庶子となれば噂はされそうだけど。
しかし、夏季休暇後となると少し調査の時期をずらさなければならないのか?
僕としたことが、学園のスケジュールを確認し忘れていた。
あぁあ、失態だな。

「丁度、今が夏季休暇中でね。潜入の時期を気にしているなら問題ない」
サレズ卿は僕の考えを察したのか、優しい顔で言った。
「申し訳ありません。しかしそれなら問題はないですね。夏季休暇後ですか‥‥‥ユズマ、勉強頑張りましょうね」
「うっ!やっぱりそれ言う?言われないように空気になっていたのに。勝手に話、進むから大丈夫かなって思ったのに!」
ユズマは突然振られて、勉強の話を持ち出されて我儘を言うように言った。

「ユズマ。今日はやめておこう思ったが、久しぶりに一戦しようか」
ユズマの言動と行動に呆れたのか怒ったのかサレズ卿は口調に威圧を込めて言った。
「えっえっ?し、し、師匠、やっぱりするんですね。‥‥‥‥剣持ってきて良かった。あ、でも、する気なかったんですね」
「今日は黒曜と協力者の関係だったからね。やめておこうと思ったけど、弟子の余りの愚行に我慢ならなくてね」
「ひぃっ!許して下さ~い!」
ユズマは部屋の中を駆け回り、隅の方でブルブルと震えていた。

【速剣】と呼ばれるユズマが恐るほどとは、サレズ卿の実力は想像以上になのか?
ユズマには悪いけど少しその腕前を見てみたい。
「おや?シースくんは少し見たそうな顔をしているね」
「えっ!シース、なんで‥‥‥‥。仲間でしょ?助けてよぉぉ」
「大人しく、しごかれてきてください」
「シースの裏切り者ぉぉ!」
ユズマは僕の言葉でいじけたように壁の方を向いた。

「少し、からかい過ぎましたかね」
「いいんだよ。あのくらいで丁度いい。‥‥‥ユズマ、もし学業を投げ出すことがあれば私と一戦交えることになることを忘れるな」
サレズ卿は隅でいじけているユズマに、凛とした声で言った。
「わ、分かりました。勉強めっちゃ頑張ります!」
「うん。その息だよ」
ユズマの決意を聞くとサレズ卿はさっきとは一点、優しい表情で言った。

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