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最近は時間の流れを早く感じるようになってきた。気付けばもう週末で、その進む速さに驚く。私は弥生さんのお見舞いに行くため、準備をしている。鞄には必要最低限のものと、タブレットを入れた。
今日のお見舞いは1人で行く予定である。待ち合わせもないので、適当な時間に部屋を出た。駅まで歩いていくと、ちょうど病院方面に向かう電車が到着したところだった。私はギリギリ電車に乗ることが出来た。
電車に揺られいつものように窓の外の景色を眺める。夏の時から変わったことと言えば、服装が長袖になったことくらいだ。ここ1週間は気温も落ち着き、秋の雰囲気が強まった。そんなことを考えていると、電車は終着駅に着いた。
私は改札を出て、病院へと向かった。久しぶりのお見舞いである。
いつものように受付でカードを借りて、弥生さんの部屋に向かう。ピっとカードをかざし開いたドアから中に入った。窓の傍には弥生さんが立っていた。
弥生さんは私に気付くと、クルリと振り向いた。
「葉月ちゃん! こんにちは」
「こんにちは……弥生さん、もう立てるの?」
「うん、そうね。最近は立てるようになったわ! でも、歩くのはまだ少し時間がかかるわね」
そう言うと弥生さんは、少しずつゆっくりと私のほうへ歩いてきた。私は弥生さんの回復の具合に驚いた。
「ね、まだ歩くのは上手ではないの」
少し恥ずかしそうに弥生さんは笑った。
「それに、まだ結構疲れてしまうの」
そう言って、近くの椅子に弥生さんは座り私のほうをじっと見ていた。
「葉月ちゃんは変わりない? 何かあったらすぐ言ってね?」
私はその言葉に、察しが良いなと思いつつ自分が考えていることや少し悩んでいることを彼女に話した。
「実は、弥生さんがこの先もっと元気になって退院できた時のことを考えてたんだ……」
弥生さんは私の話を柔らかな笑みのまま聞いていてくれた。
「私はそこまで考える余裕がなくて、この前初めて考えてみたんだよね」
弥生さんのほうを見ると、彼女は瞬きをした後口を開いた。
「葉月ちゃんは、どうしたいの?」
「私は、弥生さんと一緒に生活がしたい……です」
「いいよ。葉月ちゃんがそう望むのなら!」
「えっ、いいの? そんな簡単に返事して大丈夫?」
弥生さんは私の言葉に、少し目を丸くした後アハハと笑って話を続けた。
「だって、私たちもう家族じゃない! それとも違ったかしら?」
私は首を振り、家族がいいと言った。
「じゃあ、決定ね! 退院後が楽しみだわ!」
「でも生活費は……」
そうだ、お金は大丈夫なのだろうか。私は今まで、両親が遺してくれたもので生活をしてきたと、そう学校と寮の管理人さんから聞いている。高校の間は大丈夫だろうが、その先の未来は分からない。
私がグルグルと頭の中で考えていると、弥生さんが大丈夫よと言った。
「葉月ちゃんは、私の記憶の途中まで見たでしょう?」
「……? うん」
「私は延命治療に協力という名目で、初期の治療を受けたの。対価はちゃんと貰っているわ」
弥生さんはニッコリと笑いながら話した。対価はおそらくお金の事だろう。
「その代わり、私は話してはいけないことが沢山あるけれどね」
「それに、元気になったら私はまだ働けるわ!」
弥生さんは私の目から視線を外さずまっすぐ見つめてそう言った。私も弥生さんの話を頭の中で反芻しながら聞いていた。
「だからね、葉月ちゃん。私が退院したら、一緒に暮らしましょう?」
「うん。ありがとう、弥生さん」
私は涙ぐみながら、返事をした。
私は、このきっかけをくれた藤野さんにメッセージを送ろうとタブレットを開いた。そのタイミングで、ピっと部屋のドアが開いた。
「失礼、少し間が悪かったかな? 一応お見舞いに来たのだけれど」
そう言いながら入ってきたのは、藤野さんだった。
「えっ、藤野さん?」
「葉月、タブレット見ていなかっただろう? メッセージは送っていたんだよ」
そう言われタブレットの画面を見ると、確かに通知が来ていた。
「藤野さん? うちの葉月ちゃんに何か余計なこと言っていませんか?」
そう言った、弥生さんの表情は初めて見るものだった。おそらく、これは怒っている表情だと思った。初めて見る表情に私は少し慌てた。
「えっ、僕? 言ってないよ……そうだよね葉月?」
「うーん、アドバイスは貰ったかな?」
弥生さんがハァと小さくため息をついた。葉月ちゃんが良いなら……と、何かぶつぶつと呟いていた。
「そういえば、藤野さんはいきなりお見舞いに来てどうしたんですか?」
私がそう言うと、藤野さんはニコッと笑って話を始めた。
「葉月もいるし、調度良いね。弥生さん、元気に退院出来たら僕が経営している会社で働く気はないかい?」
「君は昔僕の屋敷で働いていた時も、テキパキと仕事をこなしていたし何より仕事を覚えるのが早かった。そんな働き手が僕は欲しい」
弥生さんは少し考えて私を見た。そして、藤野さんに返答した。
「いいですよ、喜んでそのお話お受けします」
私がそのやり取りを見ながら驚いていると、藤野さんはこの前の件について話を聞かせて欲しいと私に言った。
「この前の話は、正直に言うと興味はあるの。でも私にはまだまだ知らないといけない知識が沢山あると思う」
私は服の裾を握りしめながら、藤野さんの目を見てゆっくりと伝えた。
「これから先、色々な事を学んで学力も身に着けてちゃんとスタートラインに立てたらまた話を聞かせて欲しい……です」
私は欲目なしで、実力で受けたいと藤野さんに言った。
「ああ、わかったよ。葉月らしい答えだね」
藤野さんは初めて見るような優しい顔つきでそう言った。
「葉月ちゃん! 何のことか私には分からないけど、でも格好いいわね!」
弥生さんの言葉を聞いて、内容を教えたらきっと藤野さんは凄く怒られるのだろうなと私は思った。
藤野さんと弥生さんは、実際の仕事内容などの話をしていた。私は、藤野さんが持ってきてくれた適量な花束を花瓶に綺麗に飾り窓際に置いた。花瓶に並んだ花は、秋の柔らかな光に照らされていた。
今日のお見舞いは1人で行く予定である。待ち合わせもないので、適当な時間に部屋を出た。駅まで歩いていくと、ちょうど病院方面に向かう電車が到着したところだった。私はギリギリ電車に乗ることが出来た。
電車に揺られいつものように窓の外の景色を眺める。夏の時から変わったことと言えば、服装が長袖になったことくらいだ。ここ1週間は気温も落ち着き、秋の雰囲気が強まった。そんなことを考えていると、電車は終着駅に着いた。
私は改札を出て、病院へと向かった。久しぶりのお見舞いである。
いつものように受付でカードを借りて、弥生さんの部屋に向かう。ピっとカードをかざし開いたドアから中に入った。窓の傍には弥生さんが立っていた。
弥生さんは私に気付くと、クルリと振り向いた。
「葉月ちゃん! こんにちは」
「こんにちは……弥生さん、もう立てるの?」
「うん、そうね。最近は立てるようになったわ! でも、歩くのはまだ少し時間がかかるわね」
そう言うと弥生さんは、少しずつゆっくりと私のほうへ歩いてきた。私は弥生さんの回復の具合に驚いた。
「ね、まだ歩くのは上手ではないの」
少し恥ずかしそうに弥生さんは笑った。
「それに、まだ結構疲れてしまうの」
そう言って、近くの椅子に弥生さんは座り私のほうをじっと見ていた。
「葉月ちゃんは変わりない? 何かあったらすぐ言ってね?」
私はその言葉に、察しが良いなと思いつつ自分が考えていることや少し悩んでいることを彼女に話した。
「実は、弥生さんがこの先もっと元気になって退院できた時のことを考えてたんだ……」
弥生さんは私の話を柔らかな笑みのまま聞いていてくれた。
「私はそこまで考える余裕がなくて、この前初めて考えてみたんだよね」
弥生さんのほうを見ると、彼女は瞬きをした後口を開いた。
「葉月ちゃんは、どうしたいの?」
「私は、弥生さんと一緒に生活がしたい……です」
「いいよ。葉月ちゃんがそう望むのなら!」
「えっ、いいの? そんな簡単に返事して大丈夫?」
弥生さんは私の言葉に、少し目を丸くした後アハハと笑って話を続けた。
「だって、私たちもう家族じゃない! それとも違ったかしら?」
私は首を振り、家族がいいと言った。
「じゃあ、決定ね! 退院後が楽しみだわ!」
「でも生活費は……」
そうだ、お金は大丈夫なのだろうか。私は今まで、両親が遺してくれたもので生活をしてきたと、そう学校と寮の管理人さんから聞いている。高校の間は大丈夫だろうが、その先の未来は分からない。
私がグルグルと頭の中で考えていると、弥生さんが大丈夫よと言った。
「葉月ちゃんは、私の記憶の途中まで見たでしょう?」
「……? うん」
「私は延命治療に協力という名目で、初期の治療を受けたの。対価はちゃんと貰っているわ」
弥生さんはニッコリと笑いながら話した。対価はおそらくお金の事だろう。
「その代わり、私は話してはいけないことが沢山あるけれどね」
「それに、元気になったら私はまだ働けるわ!」
弥生さんは私の目から視線を外さずまっすぐ見つめてそう言った。私も弥生さんの話を頭の中で反芻しながら聞いていた。
「だからね、葉月ちゃん。私が退院したら、一緒に暮らしましょう?」
「うん。ありがとう、弥生さん」
私は涙ぐみながら、返事をした。
私は、このきっかけをくれた藤野さんにメッセージを送ろうとタブレットを開いた。そのタイミングで、ピっと部屋のドアが開いた。
「失礼、少し間が悪かったかな? 一応お見舞いに来たのだけれど」
そう言いながら入ってきたのは、藤野さんだった。
「えっ、藤野さん?」
「葉月、タブレット見ていなかっただろう? メッセージは送っていたんだよ」
そう言われタブレットの画面を見ると、確かに通知が来ていた。
「藤野さん? うちの葉月ちゃんに何か余計なこと言っていませんか?」
そう言った、弥生さんの表情は初めて見るものだった。おそらく、これは怒っている表情だと思った。初めて見る表情に私は少し慌てた。
「えっ、僕? 言ってないよ……そうだよね葉月?」
「うーん、アドバイスは貰ったかな?」
弥生さんがハァと小さくため息をついた。葉月ちゃんが良いなら……と、何かぶつぶつと呟いていた。
「そういえば、藤野さんはいきなりお見舞いに来てどうしたんですか?」
私がそう言うと、藤野さんはニコッと笑って話を始めた。
「葉月もいるし、調度良いね。弥生さん、元気に退院出来たら僕が経営している会社で働く気はないかい?」
「君は昔僕の屋敷で働いていた時も、テキパキと仕事をこなしていたし何より仕事を覚えるのが早かった。そんな働き手が僕は欲しい」
弥生さんは少し考えて私を見た。そして、藤野さんに返答した。
「いいですよ、喜んでそのお話お受けします」
私がそのやり取りを見ながら驚いていると、藤野さんはこの前の件について話を聞かせて欲しいと私に言った。
「この前の話は、正直に言うと興味はあるの。でも私にはまだまだ知らないといけない知識が沢山あると思う」
私は服の裾を握りしめながら、藤野さんの目を見てゆっくりと伝えた。
「これから先、色々な事を学んで学力も身に着けてちゃんとスタートラインに立てたらまた話を聞かせて欲しい……です」
私は欲目なしで、実力で受けたいと藤野さんに言った。
「ああ、わかったよ。葉月らしい答えだね」
藤野さんは初めて見るような優しい顔つきでそう言った。
「葉月ちゃん! 何のことか私には分からないけど、でも格好いいわね!」
弥生さんの言葉を聞いて、内容を教えたらきっと藤野さんは凄く怒られるのだろうなと私は思った。
藤野さんと弥生さんは、実際の仕事内容などの話をしていた。私は、藤野さんが持ってきてくれた適量な花束を花瓶に綺麗に飾り窓際に置いた。花瓶に並んだ花は、秋の柔らかな光に照らされていた。
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