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第十三話 今後の方針
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「その顔を見れば、今後その力とどう向き合っていけばよいか分かったようじゃな」
……当然だ。
もしこんな力が世間に知られたらどうなる?
異世界人の上、これほど万能な力を持つということで、権力者なら喉から手が出るほど欲しいのではないか?
いや、権力者だけでなく、俺を手に入れて悪事を働こうと思う奴だって出てくるはずだ。
そうなったら俺の人生はお先真っ暗コース直進である。
ったく、勘弁しろよ。便利なのはいいけど、ちょっと意外過ぎるだろうが。
アホな主人公ならば、この力で困っている人たちを助けまくったり、世界に仇名す敵を倒そうとするかもしれない。
しかし俺は基本的に平和主義者というか臆病者だ。情けない男なのは十分分かっている。自分のことなんだから。
力を揮って世に名を知らしめたいなどという功名心もまったくない。
つうか、戦うことすらできることなら避けたいのだ。
「……爺さんはそれが分かってるから、結構無茶をしてまで俺の覚醒を促したってわけか?」
「知らずに苦労するのと、知って苦労するのとではまったく違うからのう」
「…………」
「望もうが望むまいが、お主に宿った力は世界の理すら外すような甚大なものじゃ。かつてその力を宿した者は、力の大きさに飲み込まれて破滅してしまったがのう」
「! 爺さん、アンタ……」
だから俺が二の舞にならないように、早めの魔術覚醒をしたということらしい。ただ何故そこまでして他人の俺に力を貸してくれたのか分からない。
爺さんの瞳の奥に悔恨さを感じたように思えたが気のせいだろうか。
「…………一応礼は言っとく。あんがと」
「別にええ。大半は暇潰しという理由もあったしのう」
やっぱそういうことかバカヤロウ、コノヤロウ。
「あ、でもさ。この〝外道札〟で元の世界に戻れる力を想像すれば簡単に戻れるかも」
俺はそう思い、一枚のカードに思念を送り込む。
イメージとしては《異世界への扉》である。しかし――。
「あっれぇ……ウンともスンとも言わねぇし……」
「まあ、お主の力は目覚めたばかりじゃ。魔力だってコントロール不足ということもあるし、そもそも世界を渡る力なぞ、お主程度の魔力でどうこうできるとは思えんがのう。それに三国が使った召喚魔法も、長年貯め続けていた魔力を使って行うもののはずじゃしな」
もしかしたらそうかもしれないと思っていたが、どうやらそこまで都合良くはいかないようだ。
「その〝外道札〟には制限はあるということじゃ。それに……シラキリよ、新たに一枚を作ってみよ」
「へ? うん……………………あれ?」
右手に魔力を集中するが、まったくもって〝外道札〟の〝げ〟の字も生み出せない。うっすらとカードの枠のようなものは形作れている気はするが、実体化してくれないのだ。
「んん~~~~~っ、ぷはぁ~もうダメ! めっちゃしんどい!」
魔力を集束させるのがこれほどキツイとは……。
「それほどの効果を有するものじゃ。一枚作るにも相当の魔力が必要。また魔力を圧縮させて物質化するのは非常に難しい」
「そ、そうなんだ……あれ? でも何で五枚も生み出せたんだ?」
「お主が魔術に目覚めた瞬間に、儂の魔力がお主へと注がれるようにしておいたんじゃよ」
つまり今手元にある〝外道札〟は、爺さんの魔力も含まれているということらしい。しかしなるほど、確かにこのカードを生み出す瞬間、周りを覆っていた爺さんの魔力が俺に集まってきたのは、端からこういう目的があったからだ。
どうやらすべては爺さんの掌の上にいたらしい。
「魔術に目覚めた衝撃で初期ブーストがかかり、爆発的な力が生まれた。加えて儂の魔力をプラスして五枚もの〝外道札〟を作るに至ったというわけじゃな」
「んじゃ、今後は地道に魔力を圧縮させて一枚一枚作らなきゃダメってことか……メンド」
「頑張ってください、ボータさん! わたしも応援しますから!」
「あんがと、カヤちゃん」
礼を言うと嬉しそうにはにかむ様子を見せる彼女に疲れた心が癒される。でもしんどいのはなぁ。もっと楽に〝外道札〟を作る方法があればいいんだけど。
「ぼくも応援するよぉ~!」
いつの間にか傍に来ていたポチ。水をたんまり飲んで満足気だ。
俺はチワワサイズになっているポチの頭を撫でてやると、「えへへ~、もっと撫でて~」とせがんでくる。ああ、ずっとそのサイズのままでいてくれ。可愛いわぁ。
アニマルセラピーは大歓迎。ただ怪物サイズのポチだけはノーサンキューだが。
「あ、でも作る時に毎回爺さんが魔力を提供してくれたらいいんじゃ。それにコントロールも爺さん頼みで」
「お主な……少しは自分で成長しようとは思わんのか」
「いやだって、その方が簡単だって思って」
「歩みを止める者に魅力はないぞ」
そんなこと言われてもなぁ。でも爺さんの言うことも尤もだとは思う。だから反論はできんかった。
……当然だ。
もしこんな力が世間に知られたらどうなる?
異世界人の上、これほど万能な力を持つということで、権力者なら喉から手が出るほど欲しいのではないか?
いや、権力者だけでなく、俺を手に入れて悪事を働こうと思う奴だって出てくるはずだ。
そうなったら俺の人生はお先真っ暗コース直進である。
ったく、勘弁しろよ。便利なのはいいけど、ちょっと意外過ぎるだろうが。
アホな主人公ならば、この力で困っている人たちを助けまくったり、世界に仇名す敵を倒そうとするかもしれない。
しかし俺は基本的に平和主義者というか臆病者だ。情けない男なのは十分分かっている。自分のことなんだから。
力を揮って世に名を知らしめたいなどという功名心もまったくない。
つうか、戦うことすらできることなら避けたいのだ。
「……爺さんはそれが分かってるから、結構無茶をしてまで俺の覚醒を促したってわけか?」
「知らずに苦労するのと、知って苦労するのとではまったく違うからのう」
「…………」
「望もうが望むまいが、お主に宿った力は世界の理すら外すような甚大なものじゃ。かつてその力を宿した者は、力の大きさに飲み込まれて破滅してしまったがのう」
「! 爺さん、アンタ……」
だから俺が二の舞にならないように、早めの魔術覚醒をしたということらしい。ただ何故そこまでして他人の俺に力を貸してくれたのか分からない。
爺さんの瞳の奥に悔恨さを感じたように思えたが気のせいだろうか。
「…………一応礼は言っとく。あんがと」
「別にええ。大半は暇潰しという理由もあったしのう」
やっぱそういうことかバカヤロウ、コノヤロウ。
「あ、でもさ。この〝外道札〟で元の世界に戻れる力を想像すれば簡単に戻れるかも」
俺はそう思い、一枚のカードに思念を送り込む。
イメージとしては《異世界への扉》である。しかし――。
「あっれぇ……ウンともスンとも言わねぇし……」
「まあ、お主の力は目覚めたばかりじゃ。魔力だってコントロール不足ということもあるし、そもそも世界を渡る力なぞ、お主程度の魔力でどうこうできるとは思えんがのう。それに三国が使った召喚魔法も、長年貯め続けていた魔力を使って行うもののはずじゃしな」
もしかしたらそうかもしれないと思っていたが、どうやらそこまで都合良くはいかないようだ。
「その〝外道札〟には制限はあるということじゃ。それに……シラキリよ、新たに一枚を作ってみよ」
「へ? うん……………………あれ?」
右手に魔力を集中するが、まったくもって〝外道札〟の〝げ〟の字も生み出せない。うっすらとカードの枠のようなものは形作れている気はするが、実体化してくれないのだ。
「んん~~~~~っ、ぷはぁ~もうダメ! めっちゃしんどい!」
魔力を集束させるのがこれほどキツイとは……。
「それほどの効果を有するものじゃ。一枚作るにも相当の魔力が必要。また魔力を圧縮させて物質化するのは非常に難しい」
「そ、そうなんだ……あれ? でも何で五枚も生み出せたんだ?」
「お主が魔術に目覚めた瞬間に、儂の魔力がお主へと注がれるようにしておいたんじゃよ」
つまり今手元にある〝外道札〟は、爺さんの魔力も含まれているということらしい。しかしなるほど、確かにこのカードを生み出す瞬間、周りを覆っていた爺さんの魔力が俺に集まってきたのは、端からこういう目的があったからだ。
どうやらすべては爺さんの掌の上にいたらしい。
「魔術に目覚めた衝撃で初期ブーストがかかり、爆発的な力が生まれた。加えて儂の魔力をプラスして五枚もの〝外道札〟を作るに至ったというわけじゃな」
「んじゃ、今後は地道に魔力を圧縮させて一枚一枚作らなきゃダメってことか……メンド」
「頑張ってください、ボータさん! わたしも応援しますから!」
「あんがと、カヤちゃん」
礼を言うと嬉しそうにはにかむ様子を見せる彼女に疲れた心が癒される。でもしんどいのはなぁ。もっと楽に〝外道札〟を作る方法があればいいんだけど。
「ぼくも応援するよぉ~!」
いつの間にか傍に来ていたポチ。水をたんまり飲んで満足気だ。
俺はチワワサイズになっているポチの頭を撫でてやると、「えへへ~、もっと撫でて~」とせがんでくる。ああ、ずっとそのサイズのままでいてくれ。可愛いわぁ。
アニマルセラピーは大歓迎。ただ怪物サイズのポチだけはノーサンキューだが。
「あ、でも作る時に毎回爺さんが魔力を提供してくれたらいいんじゃ。それにコントロールも爺さん頼みで」
「お主な……少しは自分で成長しようとは思わんのか」
「いやだって、その方が簡単だって思って」
「歩みを止める者に魅力はないぞ」
そんなこと言われてもなぁ。でも爺さんの言うことも尤もだとは思う。だから反論はできんかった。
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