ほぼ不滅、『残機10億』のスキル無双 ~このダンジョン都市でゾンビって呼ばれてます。~

十本スイ

文字の大きさ
上 下
15 / 25

第十四話

しおりを挟む
 ……うん、めっちゃ減ってるよね。だって約1500万以上の命が失われたってわけだからなぁ。

 俺だってこんなに死ぬ予定じゃなかったのだ。しかしある時はダンジョンのトラップにかかって死に続け、ある時は加減が分からず、ついついオーバーキル全開でモンスターを殺しまくったり、とにかく自分の戦い方を会得するまでは、必要以上の命を使い続けてしまったというわけだ。

 そのお蔭でということもあり、今ではモンスターの強さを見極め最低限の力だけでやりくりできるようにはなったが。
 《レコードポイント》も750万ということは、750機を増やしたわけだが、支出と収入が違い過ぎて、何だか焼け石に水状態だった。

 ただ無意味に死に続けたわけじゃなく、こうして稼げるようになったので、俺的にはプラスマイナスゼロだと思っている。

「けど毎日毎日ダンジョン探索…………たまには癒しが欲しい」

 それに死んでも生き返るとはいっても、やはり死ぬのは怖いし痛いのだ。だからできるだけ死なないように攻略しているが、不意の攻撃や罠にハマることだってある。
 この前、火炙りのトラップにかかった時は最悪だった。あの生きたまま身を焦がされる痛みは、二度と経験したくないほどの恐怖を俺に植え付けたものだ。それに渦潮に飲み込まれた時も、溺死があんなにも苦しいことに気づいた。

 何にせよ、即死が一番マシな死に方だと身をもって体験したのだから凄いものだ。この世の中で恐らくは俺だけだろう。そんな摩訶不思議な体験をしているのは。

「何度死んでも慣れることはねえしなぁ。……今日くらいは久々にのんびり過ごすかねぇ」

 正直1000万円なら、苦も無く稼ぐくらいはできるようになった。一日二日休息した程度で慌てるようなことじゃない。

「……うし、たまには街ブラでもしてみっか」

 俺はそう決めて、アパートから街へ繰り出すことにした。







「う~ん……街ブラっていっても、何すりゃいいか分からん」

 これまでは借金に追われて、ゆっくりすることなんてなかった。だから三ヶ月もこの街に住んでいるのに、知っていることといえばダンジョンや神殿などの冒険者に関する建物に関してだけだ。
 あとはコンビニでその日の飯を調達するくらい。

 そういやテレビのロケ番組での街ブラっていえば、商店街とかウロウロしてるよなぁ。

 そこで見つけた店に立ち寄ったり、いろんな人と談笑したりしている。
 ということで、俺も商店街へとやってきた。
 大型ショッピングモールみたいに、左右にずら~っと様々な店が立ち並んでいる。
 あちこちから良い香りも漂ってきて、腹の虫が騒ぎ出す。

 落ち着け腹の虫よ。さっきカップ麺を食ったじゃねえか!

 これでも結構食べる方なので、もちろん足りないといえば足りない。しかしちょっとくらい空腹でも即死することはない。それに死んだとしても生き返るし。いや、さすがにその死に方はカッコ悪過ぎだとは思うが。

「ああ……でもこのニオイだけで白飯三杯はイケるかも」

 俺が通路の真ん中で鼻をクンクンと鳴らしニヤけている姿を見て、すれ違う人たちが怪訝な表情を向けてくる。

「ねえねえママ、あのひとヘンだよ?」
「ああいう人には絶対に近づいちゃダメよ!」

 …………。

「ありゃ完全に薬に手を出してる奴だな、間違いない」
「うわぁ、ヤッバ、何あのニヤけ顔、キモいんですけどぉ」

 …………。

「最近の若い者はおかしな奴が多いわい」
「そうですねぇ。嫌な時代になったもんですよ」

 ……………………涙が出てくる。だって……ガラスハートだもん。

 そんなに言わなくてもいいんじゃね、と思いつつ、俺はすぐさま顔を俯かせて、早足でその場から離脱した。
 逃げるように路地に入った俺は、顔を真っ赤にしながら壁に手を掛けて項垂れる。

 まさか来て早々に老若男女から心を砕かれる言葉をもらうとは予想外だった。
 街に癒しを求めてやってきたってのに、まさか致命傷に近いダメージを負うなんて誰が予想できたであろうか。

「うぅ……もう帰ろうかな」

 するとそこへ、背後から何かがぶつかってきた衝撃があった。

「いつっ……、あん? 何だてめえこらぁ、ぶつかっといて謝罪もなしか、おお!」

 いや、それこっちのセリフなんですけど。だって俺、ここに立ち止まってたわけだし。

 見るとガタイの良い男性が、女性を侍らしながらそこに立っていた。しかも超美人でグラマラスな人だ。

「……すみません」
「はあ? 聞こえねえんだよ! ったく、この冒険者の街にてめえみてえなもやしがいるんじゃねえよ」
「アハハ! もう武志ってばぁ、そ~んなゾンビみたいなキモイ奴と喋ってないでさっさとホテル行こうよぉ」

 うわぁ、酷い言い草。まあ基本的に女性にはキモがられるから慣れてるけどな。

「そうだなそうだな。けどゾンビっていや知ってっか? 最近この街で噂になってる都市伝説をよ」
「え~知らな~い」
「何でも殺されても死なねえゾンビ冒険者がいるって話だぜ」

 ……なぬ?

「うわっ、何だかマジでキモくな~い?」
「フンッ、どうせ都市伝説だ。嘘だよ噓。でもまあ、もしかしたらコイツみてえなヤツだったりしてなぁ。ガハハハハ!」
「キャハハハ、それウケるんですけどー!」

 何がおかしいのやら。

 しかも周りの人たちなんて、絡まれている俺を助けようなんてしない。それどころかクスクスと笑っている連中までいる始末。本当にこの世には救いはねえなぁ。

「んじゃ行くか、ホテル」
「うん、今日はた~っぷり楽しませてねぇ」
「もちろんだぜ。冒険者として培ったこのタフさで、一日中弄んでやるよ」

 すでに俺のことは眼中無しといった感じで、カップルはそのまま過ぎ去って行った。

 いいなぁ、あんな美女とこれからしっぽりとくんずほぐれつかぁ。羨ましい……。
 いや、それよりもゾンビ冒険者って、あれ……俺のことだよな? いつの間に都市伝説にまで発展してんの? 

 俺も一心不乱で攻略していて、いちいち周りを気にしてられない状況でもあったから、俺を見ていた奴らもいたかもしれない。
 にしてもゾンビ冒険者って……言い得て妙だな。

 自分でも意外にしっくりきてしまうところが虚しいところだ。
 俺は徐々に小さくなっていく、さっきのカップルの背中を見つめる。

 冒険者はモテる。何故なら強い男性に惹かれる女性は多いからだ。だから冒険者を目指すという奴もまた少なからずいる。
 中にはハーレムを築いている奴もいるらしく、本当に羨ましいことだ。

 俺だってそこまでとは言わないが、いつか俺のことを真っ直ぐ見てくれるような子と出会いたいものである。

「……はぁ。益々帰りたくなってきたなぁ」

 だがその時、視線の先に一件の店らしき建物を発見した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...