ほぼ不滅、『残機10億』のスキル無双 ~このダンジョン都市でゾンビって呼ばれてます。~

十本スイ

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第十二話 

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「それでも幾つかHランクのわたしでも受け入れてくれそうな募集要項はあったんですけど……」

 わたしは《スマートデバイス》を朱乃さんに見せる。そこには募集要項が記されていた。

「なになに……条件が初心者の女性冒険者だけぇ? ……しかも他全員男じゃん! ダメだよ、これ! 絶対に下心満開で危ないヤツだよ!」
「で、ですよね……」
「他のも……初心者で女の子限定ってのばかり。……こっちは男女混合って書いてあるけど、何だか怪しいよね?」

 そうなのだ。初心者はともかく、わざわざ女子限定って書いているところが引っかかる。

 実はこういう掲示板には偽り事項も多くて、実際に会いに行ってみたら、まったく違う条件を提示されたりとかよくあるらしいのだ。

「こういうのって顔が見えないじゃないですか。だから素直に頼るのは怖くて……」
「そうだよねぇ。いざ行ってみたら、ただ女の子とイチャイチャしたい、あるいはエッチなことが目的なクズ野郎だっているでしょうし」

 中には真面目な募集もあるのだろうが、その見極めは掲示板からでは難しい。じゃあ一度会ってみればとも思うが、もし変な人たちだったら会った瞬間に最悪な展開になってしまうことだって有り得る。

 この都市では自分の身は自分で身を守らなければならない。仮に騙されて殺されたとしても、厳罰が下されない事例だって過去にはあるのだ。都市外では考えられない法律体制である。

「う~ん、だったら私も一緒についてってあげようか? 二人ならもしヤバイ連中でも何とかなるかもだし」
「ダメです! そんなご迷惑かけられません! それにもし最低なことをするような人たちだったら、朱乃さんを巻き込んでしまったこと、わたしは一生後悔しちゃいますから!」
「小汐ちゃん……! ああんもう、可愛いんだから!」
「はぷっ!?」

 何故か感極まったような表情で抱きしめられた。

「く、苦しいですぅ~」
「あ、ごめんごめーん! でもさ、それだといつまで立ってもダンジョン攻略できなくない?」
「うぅ……それは…………はい」
「逆にこっちから募集をかけるってのは……って、それも危険かもね」
「やっぱり一緒に攻略してくれる人は、直接会って人となりを知ってからがいいですよね」
「女の子がいい?」
「え? あ……そうですね。その方が気が楽です」
「だよねぇ。じゃあそれこそ女子限定って掲示板に書き込めば? 攻撃職のね! そんで、待ち合わせ場所は人が多いとこ! あ、ココでもいいしね!」
「ふぇ? ココで?」
「うん! それならお父さんや私だって、その人を見ることができるでしょ? 小汐ちゃんだけなら難しくても、三人でその人を観察すれば、信用できる人かどうかくらい分かると思うしさ!」

 なるほど。確かにここなら、もし悪いことを考えて接触してきても、店長さんと朱乃さんが見抜いて追い払ってくれるかもしれない。
 けれど……。

「……何だかやっぱりご迷惑をかけてしまうことになりますし」
「もう! いちいちそんなこと気にしてたら立派な冒険者になんてなれないぞ! お父さん曰く、冒険者は時に大胆で、時に強かじゃなければらしいし! 利用できるものは利用しないと!」
「…………本当に良いんですか?」
「もっちろん! お父さんだって、小汐ちゃんのためならOKしてくれるって! お父さんってば、娘が二人できたみたいで嬉しいっていつも言ってるしね!」

 ここまで言ってくれるなら、少しは頼ってもいいかもしれない。

「で、では……そうしてみます。よ、よろしくお願いします!」
「うん! あ、でもせっかくだったら例の不死身の冒険者が仲間になってくれるといいわね!」
「不死身の……冒険者ですか?」

 そんな方がいらっしゃるなんて、冒険者というのは奥が深いです!

「ここ最近噂になってるのよ。何でも〝ダンジョン都市のゾンビ冒険者〟って呼ばれててね」
「ゾ、ゾンビ!?」
「その冒険者を見た人たちによるとね、モンスターに殺されてもすぐに生き返るらしいのよ」
「す、凄いですねそれ……!」

 そんな能力があるなら無敵だ。まさしくゾンビアタックというやつだろう。

「まあでも都市伝説なんだけどねぇ」
「え? 本当にいるんじゃないんですか?」
「う~ん、いたら面白いって思って誰かが吹いたホラ話じゃない?」
「そうなんですか……もしいるなら一目お会いしてみたかったですけど」
「確かに仲間なら心強いもんね。死んでも生き返るなら、何度でも盾や囮にできるし」
「もう、それは酷いですよぉ」

 でも実在するなら本当に会ってみたい。そんな伝説になるような人に。
 その後、店長さんからは簡単に了承をもらい、わたしはさっそく掲示板に募集の書き込みをしたのだった。

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