ほぼ不滅、『残機10億』のスキル無双 ~このダンジョン都市でゾンビって呼ばれてます。~

十本スイ

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第七話 

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 当初のパラメーターと比べて、全体的に二倍に膨らんでいた。
 しかも驚くべきは〝NEXT〟がフルになっていることである。

 これが限界値に辿り着くと、神殿でランクを上げることができるとされていた。
 普通はこんなにも早くランクなど上がらないだろう。

 恐らくは先程のキルマンティス一掃で、一気に経験値が溜まったということだ。

 ちなみにパラメーターも、モンスターを倒すことで増えるらしい。しかし上限値が設定されていて、ランクを上げることで限界値を突破することができるシステムだと聞いた。

「何だか実感が湧かねえけど、とりあえず不幸中の幸いってことで納得しとこ」

 何せ1001個分の命を捧げたのだ。これくらいのサービスはあってもいいだろう。

 まあ、普通に考えたら割に合わない対応だとは思うが。だって千回以上死んだのと一緒だしな。そう考えたらすげえ能力だなこれ。

 しかしパラメーターが上昇したお蔭で、身体能力も向上した。だから身体が軽く感じたのだ。

「……いや、いろいろ考えるのは後だ。今はとにかく街に戻ろう。……裸だし」

 この状況で誰かに会ったらきっと変態呼ばわりされるだろう。
 俺は食い破られてボロボロになっているとはいえ、地面に落ちている服を着る。また探すと、俺が落としたショルダーバッグもあったので、その中に入っているタオルも利用して、下半身だけは入念に隠した。

 そうして来た道を慎重に引き返していき、できるだけモンスターと遭遇しないように進む。また遭遇したら全力で逃げるを繰り返し、無事に地上まで戻ってくることができた。






 俺のボロボロの姿を見て怪訝な視線を向けてくる者たちを、強固な心臓を持ってスルーしながら一旦家に帰ってくると、ちゃんとした衣服に着替えてまた外出する。
目指すべきは神殿である。

 そして神殿に入ると、俺はそこで働いている神官に驚かれた。
 ここに来る理由は、基本的には魔法やステータスを確保するため、ランクを上げるためなので、一度ステータスを得たら、普通しばらくは顔を見せることはない。

 何せランクを上げるためには、経験値を溜めないといけないし、一日や二日で溜まるようなものじゃないからだ。
 しかし俺はその翌日にこうして現れたのだから、俺の顔を見知っている神官が驚くのも無理はない。

「あなたは確か昨日来られた……どうかされたのですか?」
「えっと…………ランクを上げたいんですけど」
「は?」

 ああもう分かってますよ。だからそんな「コイツ何言ってんの?」的な顔をしないでほしい。

「あ、あのですね、昨日も説明させて頂きましたが、ランクを上げるにはモンスターを倒して経験値を溜めないといけないのです。確かにFからEへ上げるのは、最初のハードルですから比較的楽かもしれませんが、それでもさすがに一日でどうこうできるものではありません。これまでの最高記録でさえ、三日なのですから」

 それでも三日っていう記録も凄いと思う。俺みたいに最初から難関ダンジョンに挑み、一気に高ランクのモンスターを殲滅したわけじゃないだろう。
 普通に初心者に適したダンジョンに潜って、寝る間も惜しんでモンスターを倒し尽くしたはずだ。

「ま、まあその……とりあえず試すのはタダっすよね?」
「……はぁぁぁ、分かりました。あなたには現実を知ってもらった方が良さそうですね」

 いやぁ、本当にすみませんね。俺だって気持ちは分かるんですよ。逆の立場なら、絶対同じことを思いましたし。
 俺は神殿の中央に存在する球体に近づき、そっと右手で触れた。


〝ランクアップ可能  『実行』:『中止』〟


 突如文字が目前に浮かび上がり、俺は迷わず『実行』の文字を指で押した。
 すると球体が光り輝き、その光が俺の身体へと流れ込んでいく。
 その様子を見て、神官はあんぐりと口を開けて固まっている。

 光が収まると、俺は一応ステータスを確認してみた。


 地村十利   ランク:G   NEXT:0/1000

体力:45
魔力:0
攻撃:36
防御:30
魔攻:0
魔防:30
敏捷:36
 運:1


 どうやら問題なくランクアップを果たすことができたらしい。 
 ただパラメーターが何もしていないのに上がっている。

「あの……」

 俺は傍でいまだに凍り付いている神官に話しかけた。だが反応が無い。

「あの、ちょっと聞きたいことがあるんすけど?」
「…………」
「聞いてます? おーい」
「……! え、あ、はい?」
「ランクアップできたんすけど、ちょっと聞きたいことがあって」
「……な、何でしょうか?」
「パラメーターが自然と上がってるんすけど、モンスターを倒したわけでもないのに、どういうことっすか?」
「あ、ああそれはですね、〝ランクアップボーナス〟というものでして……」

 聞けばランクアップ時にもパラメーターが上昇するとのこと。これはラッキーだ。
 俺にしては珍しい幸運である。とはいってもシステムだから最初から決まっていることだが。

「そうっすか。お世話になりました。またランクアップができるようになったら来ますんで、そん時によろしくっす」
「え、あ、はい……お疲れ様……でした」

 何だか白昼夢でも見ているような感じの神官に見送られて、俺は真っ直ぐ神殿から出た。

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