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第二話
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突如地球に異変が起きたのは、今から約二十年ほど前だったらしい。
西暦2051年。科学の進歩が目覚ましく、非常に金と労力、そして時間を費やす宇宙旅行ですら一般化されるところまで来ていた。
多くの人間が宇宙に意識を向け始めたその頃、世界規模で未曾有の大地震が起きたのである。
理由は今でもハッキリと分かっていない。専門家たちが幾ら頭を悩ましても、何の兆候もなく、突然起きた大災害だったとのこと。
世界のあちこちで甚大な被害をもたらし、大勢の死者を出す結果となった。日本も例外ではなく、国中の人々が嘆き苦しむ時代が到来する。
当時の人口が三割以上も削られるという、史上初の大事件として歴史に刻み込まれた。
人々はこれを――〝世界大震災〟と呼称する。
そして地震の直後、目に見える異変は大地の破壊だけではなく、日本の東京にも別の形で存在していた。
それが〝ダンジョン〟と呼ばれる五つの塔。
まるで最初からそこに存在していたかのように、地震が鎮まると、五つの塔が東京の街中に堂々と聳え立っていたのである。
ダンジョンの中は異空間としか思えない構造になっており、階層ごとに分かれているフロアには、砂漠やアマゾン、荒野や海など、凡そ有り得ないと思われるフィールドを実現した。しかも明らかに、塔の見た目からは考えられないほどの大きな規模を持つ。
そしてそんなフィールドには、モンスターと呼ばれる異形なる存在がいて、自由にその世界を闊歩している。
また東京だけではなく、世界のあちこちにも同じようなダンジョンが出現し、また森や山などが、ダンジョン化したりしてモンスターが出現するようになったのだ。
まさしくそれまでの世界とは相反する姿へと変わったといえよう。
そして世界が変貌を遂げただけでなく、その日から人間自身にも変化が訪れたのだ。
五つの塔は、ちょうど五芒星を築くような形で出現したのだが、その中央には小さな神殿のようなものも同時に現れたのである。
白亜の宮殿のようなその中は、とても神秘的な空気に包まれていて、部屋の真ん中には奇妙な青い球体が浮かんでいた。
その場に居合わせた人間が、何気なくその球体に触れた時、その人間にある力が備わったのである。
それが――魔法。
現代科学では説明できない不可思議な現象を引き起こすことのできる能力。同時に〝ステータス〟という概念も手にしたのだ。
つまりこの球体は、人間を進化させるための、神からの贈り物だったのである。
政府は、これを〝洗礼の儀〟と称し、選別した者たちを次々と球体に触れさせた。
ただ、その球体に触れた人間すべてが進化する、というわけではなかったのである。
魔法を授かるにも、恐らく才能が必要だったのだろう。
ただステータスだけは、触れた者全員が身に着けることができた。
まるでゲームのような仕様ではあるが、実際に魔法を使用することができ、ダンジョンに棲息するモンスターを倒すことで経験値が溜まり、〝ランク〟というものが上がることも確認されたのである。
このランクが上がれば、身体能力や魔法が強く成長していく。これらの事実は、最早世界の在り方が変貌したと認識するには十分だった。
日本だけでなく、世界中にも同じようなダンジョンの出現が確認されている。
それから世界は、宇宙旅行どころではなく、ダンジョンの調査にすべてを注ぐようになった。
何故ならダンジョンに眠るお宝や、モンスターから取得できる素材などが、非常に人間の生活を豊かにしてくれるものだと分かったからだ。
金、銀、銅などの鉱物だけではなく、地球には存在し得なかった未知の鉱物や物質なども発見され、それらが新たなエネルギー源として利用でききると分かったのだ。
故に各国では、ダンジョン攻略が最大事業となったのである。
ダンジョンを攻略し、謎を解いていく。その者たちのことを『冒険者』と呼んだ。
また日本でも政府が力ある者たちを集め、塔があるココを【ダンジョン都市・日京】と名付けた。何でも〝秘境〟という言葉とかけた洒落たネーミングセンスだという者もいる。
そしてこの都市は、僅か二十余年という期間で独立都市に生まれ変わり、この都市では独自の政権を確立するに至った。そう、まさにここは日本という国の中にある別の国家ともいえる。
それを可能としたのは、やはり冒険者という存在の強さであろう。普通の人間よりも優れた存在の登場により、日本は瞬く間に真っ二つに割れたのだ。
無論当初は現行の政府体制が黙っておらず、都市もすべて政府の管理下に置くように動いた……が、冒険者たちが名乗りを上げ、独自の政権を提示し、ほとんど力ずくで今の状態になったらしい。
まあ冒険者側にも幾らか妥協した部分もあるようだが、そのせいもあって、今も都市外では、一般人と冒険者には壁や確執などが根付いている。
噂では、現在の総理は、虎視眈々と都市の管理を手に入れようと画策しているという話だ。
そうして現在西暦2077年。
二十年以上が経った今、俺もまた冒険者になるためにココにやってきたのである。
しかし勢い勇んで〝洗礼の儀〟を行った挙句、俺は絶望を見ることになってしまう。
何故なら俺には一切の魔力がなかったのである。
つまり魔法を使えない凡人であることが決定付けられたのだ。
別に魔法が使えずとも冒険者になれないことはない。ただし魔法があるのと無いのとでは、その戦力に大きな差が開くのも確か。
魔力を扱えば、身体能力を強化したり、五感もまた鋭くさせて生存率を向上させることが可能。
それができないとなれば、冒険者としてすぐに限界がやってくる。たとえ武器を持ってしても、生身では超えられない壁が出てくるからだ。
弱小モンスターなら問題はないだろう。しかし高ランクモンスター相手ではもう無理。どれだけ頑張っても、一人じゃ絶対に勝てない存在が多過ぎるのだ。
だが俺は、尻尾を巻いて帰るわけには行かなかった。
俺はどうしても冒険者になって手に入れたいものがあるのだ。
それは――――――自由だ!
え、今も自由に動き回れるだって? 残念ながらそう言うわけじゃないんだ。
俺が冒険者になったのも、手っ取り早く稼げるから選んだだけ。
そうでもしないと俺は返せないんだよ――――――〝借金〟がっ!
西暦2051年。科学の進歩が目覚ましく、非常に金と労力、そして時間を費やす宇宙旅行ですら一般化されるところまで来ていた。
多くの人間が宇宙に意識を向け始めたその頃、世界規模で未曾有の大地震が起きたのである。
理由は今でもハッキリと分かっていない。専門家たちが幾ら頭を悩ましても、何の兆候もなく、突然起きた大災害だったとのこと。
世界のあちこちで甚大な被害をもたらし、大勢の死者を出す結果となった。日本も例外ではなく、国中の人々が嘆き苦しむ時代が到来する。
当時の人口が三割以上も削られるという、史上初の大事件として歴史に刻み込まれた。
人々はこれを――〝世界大震災〟と呼称する。
そして地震の直後、目に見える異変は大地の破壊だけではなく、日本の東京にも別の形で存在していた。
それが〝ダンジョン〟と呼ばれる五つの塔。
まるで最初からそこに存在していたかのように、地震が鎮まると、五つの塔が東京の街中に堂々と聳え立っていたのである。
ダンジョンの中は異空間としか思えない構造になっており、階層ごとに分かれているフロアには、砂漠やアマゾン、荒野や海など、凡そ有り得ないと思われるフィールドを実現した。しかも明らかに、塔の見た目からは考えられないほどの大きな規模を持つ。
そしてそんなフィールドには、モンスターと呼ばれる異形なる存在がいて、自由にその世界を闊歩している。
また東京だけではなく、世界のあちこちにも同じようなダンジョンが出現し、また森や山などが、ダンジョン化したりしてモンスターが出現するようになったのだ。
まさしくそれまでの世界とは相反する姿へと変わったといえよう。
そして世界が変貌を遂げただけでなく、その日から人間自身にも変化が訪れたのだ。
五つの塔は、ちょうど五芒星を築くような形で出現したのだが、その中央には小さな神殿のようなものも同時に現れたのである。
白亜の宮殿のようなその中は、とても神秘的な空気に包まれていて、部屋の真ん中には奇妙な青い球体が浮かんでいた。
その場に居合わせた人間が、何気なくその球体に触れた時、その人間にある力が備わったのである。
それが――魔法。
現代科学では説明できない不可思議な現象を引き起こすことのできる能力。同時に〝ステータス〟という概念も手にしたのだ。
つまりこの球体は、人間を進化させるための、神からの贈り物だったのである。
政府は、これを〝洗礼の儀〟と称し、選別した者たちを次々と球体に触れさせた。
ただ、その球体に触れた人間すべてが進化する、というわけではなかったのである。
魔法を授かるにも、恐らく才能が必要だったのだろう。
ただステータスだけは、触れた者全員が身に着けることができた。
まるでゲームのような仕様ではあるが、実際に魔法を使用することができ、ダンジョンに棲息するモンスターを倒すことで経験値が溜まり、〝ランク〟というものが上がることも確認されたのである。
このランクが上がれば、身体能力や魔法が強く成長していく。これらの事実は、最早世界の在り方が変貌したと認識するには十分だった。
日本だけでなく、世界中にも同じようなダンジョンの出現が確認されている。
それから世界は、宇宙旅行どころではなく、ダンジョンの調査にすべてを注ぐようになった。
何故ならダンジョンに眠るお宝や、モンスターから取得できる素材などが、非常に人間の生活を豊かにしてくれるものだと分かったからだ。
金、銀、銅などの鉱物だけではなく、地球には存在し得なかった未知の鉱物や物質なども発見され、それらが新たなエネルギー源として利用でききると分かったのだ。
故に各国では、ダンジョン攻略が最大事業となったのである。
ダンジョンを攻略し、謎を解いていく。その者たちのことを『冒険者』と呼んだ。
また日本でも政府が力ある者たちを集め、塔があるココを【ダンジョン都市・日京】と名付けた。何でも〝秘境〟という言葉とかけた洒落たネーミングセンスだという者もいる。
そしてこの都市は、僅か二十余年という期間で独立都市に生まれ変わり、この都市では独自の政権を確立するに至った。そう、まさにここは日本という国の中にある別の国家ともいえる。
それを可能としたのは、やはり冒険者という存在の強さであろう。普通の人間よりも優れた存在の登場により、日本は瞬く間に真っ二つに割れたのだ。
無論当初は現行の政府体制が黙っておらず、都市もすべて政府の管理下に置くように動いた……が、冒険者たちが名乗りを上げ、独自の政権を提示し、ほとんど力ずくで今の状態になったらしい。
まあ冒険者側にも幾らか妥協した部分もあるようだが、そのせいもあって、今も都市外では、一般人と冒険者には壁や確執などが根付いている。
噂では、現在の総理は、虎視眈々と都市の管理を手に入れようと画策しているという話だ。
そうして現在西暦2077年。
二十年以上が経った今、俺もまた冒険者になるためにココにやってきたのである。
しかし勢い勇んで〝洗礼の儀〟を行った挙句、俺は絶望を見ることになってしまう。
何故なら俺には一切の魔力がなかったのである。
つまり魔法を使えない凡人であることが決定付けられたのだ。
別に魔法が使えずとも冒険者になれないことはない。ただし魔法があるのと無いのとでは、その戦力に大きな差が開くのも確か。
魔力を扱えば、身体能力を強化したり、五感もまた鋭くさせて生存率を向上させることが可能。
それができないとなれば、冒険者としてすぐに限界がやってくる。たとえ武器を持ってしても、生身では超えられない壁が出てくるからだ。
弱小モンスターなら問題はないだろう。しかし高ランクモンスター相手ではもう無理。どれだけ頑張っても、一人じゃ絶対に勝てない存在が多過ぎるのだ。
だが俺は、尻尾を巻いて帰るわけには行かなかった。
俺はどうしても冒険者になって手に入れたいものがあるのだ。
それは――――――自由だ!
え、今も自由に動き回れるだって? 残念ながらそう言うわけじゃないんだ。
俺が冒険者になったのも、手っ取り早く稼げるから選んだだけ。
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