ほぼ不滅、『残機10億』のスキル無双 ~このダンジョン都市でゾンビって呼ばれてます。~

十本スイ

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「あ~あ、今日も会えなかったわぁ~」

 言葉とは裏腹に、それほどショックを受けていない様子で、酒を呷りながら屈強そうな大柄な男が、テーブルを挟んで対面にいる細身の男に向かって口にした。

「は? 何言ってんだよお前は? 会えないって、もしかして美女にとかか?」
「違えよ。ほら、例のアイツだよアイツ」
「アイツ……?」
「このダンジョン都市の都市伝説だよ」
「……ああ、あんなもん眉唾だろ?」
「それがそうとは限らねえらしいぜ? 実際に会ったって奴もいるみてえだしよぉ」

 グビグビッと美味そうに酒を飲み干すと、真っ赤に染まった顔を愉快そうに歪めながら言う。

「マジか? 確かあれだろ? 常に一人でダンジョンに潜ってる奴で、しかも殺されてもすぐに生き返るっつう有り得ねえ〝魔法〟を持ってるって話。そんな非常識な人間がいるわけがねえだろうが」
「だ~か~ら~、それがいるんだっての! それに〝魔法〟じゃなくて、そいつの力はもしかすると〝スキル〟かもしれねえっていう噂もあるしよ!」
「おいおい、それこそもっと有り得ねえだろうが。〝スキル〟なんて一万人に一人って言われてんだぞ? それにこの都市にいる〝スキル持ち〟は、全員大手ギルドに加入してるから身バレしてるしな」
「いやいや、そいつはいつも一人だし、フリーの冒険者なんだよ。俺はなぁ、いつかそいつに会ってみてえんだよ!」
「はあ? 何で?」
「だってよぉ、そんな不死身のバケモノがいればよ、盾役として最強じゃねえか! そうすりゃ多少格上のモンスター相手でも経験値稼ぎができるってもんよ!」
「うわぁ、お前な、かなり最低なこと言ってるからな」
「何でだよ! ダンジョン攻略なんて適材適所だろ! 俺はそいつの能力を有効に活用してやるだけだって! ガハハハハハ!」

 明らかに酔っぱらっっている大柄な男を、細身の男は呆れたような眼差しで一瞥し、溜息交じりに周囲を見回す。
 ここはダンジョン都市にある居酒屋で、今の時間帯はちょうどダンジョン攻略から返ってきた連中で溢れ返っている。

 レベルが上がったり、珍しい素材をゲットして喜んでいる者、何の成果もなく攻略に失敗して落胆している者など様々だ
 この都市は、ここにいる者たちのような『冒険者』と呼ばれる者たちが住む街である。

 毎日喧噪が絶えず、日本の中でも最も騒がしい街として有名だ。
 そしてそんな都市には、幾つか都市伝説が蔓延っている。

 ほとんどが一笑に付す程度の、何の根拠もない笑い話ではあるのだが、その中で現在とてもホットで、皆の注目を引く伝説が存在するのだ。

 それは――。

「――〝ダンジョン都市のゾンビ冒険者〟かぁ。んなもん、マジでいるのかねぇ」

 細身の男は大げさに肩を竦め、都市伝説の話に興味を失せたかのように頭を振ると、楽しそうに笑う大柄な男に向けて、今日のダンジョン攻略の成果を話し始めたのだった。



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