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 【箱庭】に戻ってきた僕は、さっそく此度の成果を確認していた。
 珍しい素材などは、高価なため購入することはできなかったけど、一般的な布や毛糸など、比較的安い素材はたんまりと入手することができたのである。

 その他にも、一番の収穫といえば――。

「これが、《作物の種》だぁ!」

 農耕が盛んな町に相応しく、いろいろな《作物の種》が手に入った。
 しかも格安で!
 この【箱庭】に現在ある畑は魔物しか育てることができないが、土自体をクラフトすれば、野菜などを育てることができる通常の畑も作れるのである。

 その上、嬉しいことに【箱庭】で育てる作物は、例外なく育つのが異常に早く、それこそゲームのような有り得ない速度で収穫までこぎつけることができるのだ。
 これはヤタにも確認が取れているので間違いない。

 何でも【箱庭】の大地が生んだ恵らしい。
 この不思議な現象に説明が欲しいところだが、ヤタも知らないというので、特に追究はしなかった。
 だってちゃんと育つなら問題ないしね。

 けどまあ、コレだけでも誰もが欲しがる島ではあるかな。譲ったりしないけどね。

 ということで、さっそく〝マモノ畑〟から少し離れた場所に、大きく《クラフト紋》を描き、《作物用の畑》をクラフトした。
 購入した肥料を蒔いたあとに、等間隔で種を植えていく。

 植えたのは《キャベツ》、《ピーマン》、《キュウリ》、《トマト》、《ナスビ》など、収穫時期も違う種を、それぞれ区画に分けて植えたのだ。
 そのあとは水を定期的にやるだけ。これで育つのだから、本物の畑作業に勤しんでいる人たちには何だか申し訳ないような気もする。

「ピィピィ~!」

 畑仕事に一段落を終えると、待ってましたとばかりに肩の上に位置が飛び乗ってきた。
 頭部にはサンタクロースが被るような赤いキャップを被っている。
 ちなみにニンには白、サブは緑とこの子たちに土産として町で買ってきたものだ。

 赤ちゃん用でセールもしていたから安かったこともあり、ちゃんと留守番をしているご褒美として与えたのである。
 イチたちも気に入ったようで、さっきからテンションが高い。

「何だイチ? もしかして遊ぼうって?」
「ピィ~ピィピィ!」

 その通りなのか、高速で頭を振っている。よく帽子がズレないもんだ。
 今日の仕事の中で、別に急ぎのものはないので、イチや他のみんなと遊ぶことにした。
 意外だったのはムトが一番乗り気だったことだ。

 〝だるまさんがころんだ〟をやったが、誰よりも真剣に取り組み一度も鬼に捕まることはなかった。
 じゃあ缶蹴りはどうかと思いやってみたところ、彼女が鬼になったらなったで僕たちが缶を蹴ることはなかったし、逆に僕が鬼になった時は何度も缶を蹴られて半泣きになりそうになったものである。

 この幼女、まさしく怪物につき――。
 そんな言葉が不意に浮かんだのもしょうがないんじゃないだろうか。

 それから日暮れ時になり、そろそろ夕飯の用意とともに遊びは切り上げた。
 ムトはまだ動き足りないらしく、これから海に潜って漁でもしてくるといい去っていく。
 彼女の体力に底はあるのだろうかと戦慄した。

 そうしてしばらくすると、ムトが巨大なサメを小屋の中に持ってきたので、思わず人生で一番の悲鳴を上げたのである。

 あ、サメはちゃんと美味しく調理しましたよ、もちろん。

 夜になり僕たちは就寝することにした。
 ベッドに横になりながら今日も忙しかったなぁと思い返す。

 明日は何をしようかなぁ。

 とりあえず〝マモノ畑〟の活用中は日をまたぐような遠出はできないし。
 でもせっかくだから大陸を歩いて、様々な場所で素材などを手に入れたいと思う。
 ただ一日でできることはタガが知れている。

 長期間の旅をするならば、やはり〝マモノ畑〟を活用していない時期にしなければならない。
 作物の方は、大事なのは毎日の水やりくらいなので、イチたちのような魔物に任せることもできる。

 ん~ウィザード系の魔物がいてくれたら〝マモノ畑〟も任せられるんだけどなぁ。

 ウィザード系というのは魔法を扱える、すなわち魔力を持つ魔物のこと。
 このタイプが存在するなら、毎日その魔物に魔力を注ぎ込むように指示を出せば、たとえ〝マモノ畑〟を活用中でも遠出することが可能なのだ。
 だがウィザード系の魔物と遭遇するのは難しい。
 種類は結構いるものの、どれもレベルが高かったり発見が困難だったりするのだ。

 僕がゲームで手に入れたウィザード系って何だったっけ?
 ……ああそうだったそうだった、確か――ウィザードブックだったよな。

 その魔物は本の形をしており、空中にフワフワと浮くことができる。

 どこにいたんだっけ……ん~とぉ……。

 必死で記憶の中を整理しながら目的のものを洗い出していく。

「…………あ」

 思わず声に出してしまった。
 何故なら肝心なことを忘れていたからである。
 そうだそうだ。
 ウィザードブックは種から生まれたわけじゃなかった。

 ――《クラフト配合》だ!

 これは複数の《マモノの種》同士を配合させて新たな魔物を誕生させる種を生み出す技である。
 これでウィザードブックという魔物を作り出したことを思い出した。

「まあ、今のレベルじゃ《クラフト配合》は使えないんだけどね」

 確か《緑のクラフト紋》が使用できるレベルになってからだったと思う。
 それにしてもこの異世界生活も大分慣れてきたよなぁ。
 当初は夢か幻かドッキリかと思ってしまったが、まさか自分がこんなファンタジー経験をするとは思わなかった。


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