25 / 32
24
しおりを挟む
【箱庭】に戻ってきた僕は、さっそく此度の成果を確認していた。
珍しい素材などは、高価なため購入することはできなかったけど、一般的な布や毛糸など、比較的安い素材はたんまりと入手することができたのである。
その他にも、一番の収穫といえば――。
「これが、《作物の種》だぁ!」
農耕が盛んな町に相応しく、いろいろな《作物の種》が手に入った。
しかも格安で!
この【箱庭】に現在ある畑は魔物しか育てることができないが、土自体をクラフトすれば、野菜などを育てることができる通常の畑も作れるのである。
その上、嬉しいことに【箱庭】で育てる作物は、例外なく育つのが異常に早く、それこそゲームのような有り得ない速度で収穫までこぎつけることができるのだ。
これはヤタにも確認が取れているので間違いない。
何でも【箱庭】の大地が生んだ恵らしい。
この不思議な現象に説明が欲しいところだが、ヤタも知らないというので、特に追究はしなかった。
だってちゃんと育つなら問題ないしね。
けどまあ、コレだけでも誰もが欲しがる島ではあるかな。譲ったりしないけどね。
ということで、さっそく〝マモノ畑〟から少し離れた場所に、大きく《クラフト紋》を描き、《作物用の畑》をクラフトした。
購入した肥料を蒔いたあとに、等間隔で種を植えていく。
植えたのは《キャベツ》、《ピーマン》、《キュウリ》、《トマト》、《ナスビ》など、収穫時期も違う種を、それぞれ区画に分けて植えたのだ。
そのあとは水を定期的にやるだけ。これで育つのだから、本物の畑作業に勤しんでいる人たちには何だか申し訳ないような気もする。
「ピィピィ~!」
畑仕事に一段落を終えると、待ってましたとばかりに肩の上に位置が飛び乗ってきた。
頭部にはサンタクロースが被るような赤いキャップを被っている。
ちなみにニンには白、サブは緑とこの子たちに土産として町で買ってきたものだ。
赤ちゃん用でセールもしていたから安かったこともあり、ちゃんと留守番をしているご褒美として与えたのである。
イチたちも気に入ったようで、さっきからテンションが高い。
「何だイチ? もしかして遊ぼうって?」
「ピィ~ピィピィ!」
その通りなのか、高速で頭を振っている。よく帽子がズレないもんだ。
今日の仕事の中で、別に急ぎのものはないので、イチや他のみんなと遊ぶことにした。
意外だったのはムトが一番乗り気だったことだ。
〝だるまさんがころんだ〟をやったが、誰よりも真剣に取り組み一度も鬼に捕まることはなかった。
じゃあ缶蹴りはどうかと思いやってみたところ、彼女が鬼になったらなったで僕たちが缶を蹴ることはなかったし、逆に僕が鬼になった時は何度も缶を蹴られて半泣きになりそうになったものである。
この幼女、まさしく怪物につき――。
そんな言葉が不意に浮かんだのもしょうがないんじゃないだろうか。
それから日暮れ時になり、そろそろ夕飯の用意とともに遊びは切り上げた。
ムトはまだ動き足りないらしく、これから海に潜って漁でもしてくるといい去っていく。
彼女の体力に底はあるのだろうかと戦慄した。
そうしてしばらくすると、ムトが巨大なサメを小屋の中に持ってきたので、思わず人生で一番の悲鳴を上げたのである。
あ、サメはちゃんと美味しく調理しましたよ、もちろん。
夜になり僕たちは就寝することにした。
ベッドに横になりながら今日も忙しかったなぁと思い返す。
明日は何をしようかなぁ。
とりあえず〝マモノ畑〟の活用中は日をまたぐような遠出はできないし。
でもせっかくだから大陸を歩いて、様々な場所で素材などを手に入れたいと思う。
ただ一日でできることはタガが知れている。
長期間の旅をするならば、やはり〝マモノ畑〟を活用していない時期にしなければならない。
作物の方は、大事なのは毎日の水やりくらいなので、イチたちのような魔物に任せることもできる。
ん~ウィザード系の魔物がいてくれたら〝マモノ畑〟も任せられるんだけどなぁ。
ウィザード系というのは魔法を扱える、すなわち魔力を持つ魔物のこと。
このタイプが存在するなら、毎日その魔物に魔力を注ぎ込むように指示を出せば、たとえ〝マモノ畑〟を活用中でも遠出することが可能なのだ。
だがウィザード系の魔物と遭遇するのは難しい。
種類は結構いるものの、どれもレベルが高かったり発見が困難だったりするのだ。
僕がゲームで手に入れたウィザード系って何だったっけ?
……ああそうだったそうだった、確か――ウィザードブックだったよな。
その魔物は本の形をしており、空中にフワフワと浮くことができる。
どこにいたんだっけ……ん~とぉ……。
必死で記憶の中を整理しながら目的のものを洗い出していく。
「…………あ」
思わず声に出してしまった。
何故なら肝心なことを忘れていたからである。
そうだそうだ。
ウィザードブックは種から生まれたわけじゃなかった。
――《クラフト配合》だ!
これは複数の《マモノの種》同士を配合させて新たな魔物を誕生させる種を生み出す技である。
これでウィザードブックという魔物を作り出したことを思い出した。
「まあ、今のレベルじゃ《クラフト配合》は使えないんだけどね」
確か《緑のクラフト紋》が使用できるレベルになってからだったと思う。
それにしてもこの異世界生活も大分慣れてきたよなぁ。
当初は夢か幻かドッキリかと思ってしまったが、まさか自分がこんなファンタジー経験をするとは思わなかった。
珍しい素材などは、高価なため購入することはできなかったけど、一般的な布や毛糸など、比較的安い素材はたんまりと入手することができたのである。
その他にも、一番の収穫といえば――。
「これが、《作物の種》だぁ!」
農耕が盛んな町に相応しく、いろいろな《作物の種》が手に入った。
しかも格安で!
この【箱庭】に現在ある畑は魔物しか育てることができないが、土自体をクラフトすれば、野菜などを育てることができる通常の畑も作れるのである。
その上、嬉しいことに【箱庭】で育てる作物は、例外なく育つのが異常に早く、それこそゲームのような有り得ない速度で収穫までこぎつけることができるのだ。
これはヤタにも確認が取れているので間違いない。
何でも【箱庭】の大地が生んだ恵らしい。
この不思議な現象に説明が欲しいところだが、ヤタも知らないというので、特に追究はしなかった。
だってちゃんと育つなら問題ないしね。
けどまあ、コレだけでも誰もが欲しがる島ではあるかな。譲ったりしないけどね。
ということで、さっそく〝マモノ畑〟から少し離れた場所に、大きく《クラフト紋》を描き、《作物用の畑》をクラフトした。
購入した肥料を蒔いたあとに、等間隔で種を植えていく。
植えたのは《キャベツ》、《ピーマン》、《キュウリ》、《トマト》、《ナスビ》など、収穫時期も違う種を、それぞれ区画に分けて植えたのだ。
そのあとは水を定期的にやるだけ。これで育つのだから、本物の畑作業に勤しんでいる人たちには何だか申し訳ないような気もする。
「ピィピィ~!」
畑仕事に一段落を終えると、待ってましたとばかりに肩の上に位置が飛び乗ってきた。
頭部にはサンタクロースが被るような赤いキャップを被っている。
ちなみにニンには白、サブは緑とこの子たちに土産として町で買ってきたものだ。
赤ちゃん用でセールもしていたから安かったこともあり、ちゃんと留守番をしているご褒美として与えたのである。
イチたちも気に入ったようで、さっきからテンションが高い。
「何だイチ? もしかして遊ぼうって?」
「ピィ~ピィピィ!」
その通りなのか、高速で頭を振っている。よく帽子がズレないもんだ。
今日の仕事の中で、別に急ぎのものはないので、イチや他のみんなと遊ぶことにした。
意外だったのはムトが一番乗り気だったことだ。
〝だるまさんがころんだ〟をやったが、誰よりも真剣に取り組み一度も鬼に捕まることはなかった。
じゃあ缶蹴りはどうかと思いやってみたところ、彼女が鬼になったらなったで僕たちが缶を蹴ることはなかったし、逆に僕が鬼になった時は何度も缶を蹴られて半泣きになりそうになったものである。
この幼女、まさしく怪物につき――。
そんな言葉が不意に浮かんだのもしょうがないんじゃないだろうか。
それから日暮れ時になり、そろそろ夕飯の用意とともに遊びは切り上げた。
ムトはまだ動き足りないらしく、これから海に潜って漁でもしてくるといい去っていく。
彼女の体力に底はあるのだろうかと戦慄した。
そうしてしばらくすると、ムトが巨大なサメを小屋の中に持ってきたので、思わず人生で一番の悲鳴を上げたのである。
あ、サメはちゃんと美味しく調理しましたよ、もちろん。
夜になり僕たちは就寝することにした。
ベッドに横になりながら今日も忙しかったなぁと思い返す。
明日は何をしようかなぁ。
とりあえず〝マモノ畑〟の活用中は日をまたぐような遠出はできないし。
でもせっかくだから大陸を歩いて、様々な場所で素材などを手に入れたいと思う。
ただ一日でできることはタガが知れている。
長期間の旅をするならば、やはり〝マモノ畑〟を活用していない時期にしなければならない。
作物の方は、大事なのは毎日の水やりくらいなので、イチたちのような魔物に任せることもできる。
ん~ウィザード系の魔物がいてくれたら〝マモノ畑〟も任せられるんだけどなぁ。
ウィザード系というのは魔法を扱える、すなわち魔力を持つ魔物のこと。
このタイプが存在するなら、毎日その魔物に魔力を注ぎ込むように指示を出せば、たとえ〝マモノ畑〟を活用中でも遠出することが可能なのだ。
だがウィザード系の魔物と遭遇するのは難しい。
種類は結構いるものの、どれもレベルが高かったり発見が困難だったりするのだ。
僕がゲームで手に入れたウィザード系って何だったっけ?
……ああそうだったそうだった、確か――ウィザードブックだったよな。
その魔物は本の形をしており、空中にフワフワと浮くことができる。
どこにいたんだっけ……ん~とぉ……。
必死で記憶の中を整理しながら目的のものを洗い出していく。
「…………あ」
思わず声に出してしまった。
何故なら肝心なことを忘れていたからである。
そうだそうだ。
ウィザードブックは種から生まれたわけじゃなかった。
――《クラフト配合》だ!
これは複数の《マモノの種》同士を配合させて新たな魔物を誕生させる種を生み出す技である。
これでウィザードブックという魔物を作り出したことを思い出した。
「まあ、今のレベルじゃ《クラフト配合》は使えないんだけどね」
確か《緑のクラフト紋》が使用できるレベルになってからだったと思う。
それにしてもこの異世界生活も大分慣れてきたよなぁ。
当初は夢か幻かドッキリかと思ってしまったが、まさか自分がこんなファンタジー経験をするとは思わなかった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
孤独の魔女と独りの少女
徒然ナルモ
ファンタジー
遥かな昔、凡ゆる魔術 凡ゆる法を極め抜き 老いや衰退すらも超克した最強の存在 魔女達の力で、大いなる厄災は払われ 世界は平穏を取り戻してより 、八千年 …避けられぬと思われていた滅びから世界を救った英雄 又は神として、世界は永遠を生きる七人の魔女達によって統治 管理 信仰され続けていた…
そんな中 救った世界を統治せず、行方をくらませた 幻の八人目の魔女が、深い森の中で 一人の少女を弟子にとったと言う
神話を生きる伝説と 今を生きる少女の行く末は、八千年前の滅びの再演か 新たな伝説の幕開けか、そんなものは 育ててみないと分からない
【小説家になろうとカクヨムにも同時に連載しております】
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Deity
谷山佳与
ファンタジー
日本で古くから続く一族直系に産まれた、安倍妃捺は”玉依姫《たまよりひめ》”と特別な呼称で呼ばれ、歴代の一族の中でも群を抜いて高い霊力と神力を持っている。
四兄妹の真ん中で唯一一族の中での成人の儀裳儀《もぎ》と、当主候補として就任するために儀式に挑むのだが・・・・。
※なろうで連載途中だったものをこちらに移動して来ました。
【R18】引きこもりだった僕が貞操観念のゆるい島で癒される話
そーだえんそ
恋愛
高校二年生で引きこもりだった藤代蓮(ふじしろれん)は親の計らいによって朔淫島(さくいんとう)へと向かう。
高校生活ですり減っていた精神を癒やすための慰安旅行的な性格が強かったが、そこで出会った人たちは少し貞操観念がゆるくて自然と深い関係を結ぶことに……。
対人関係での悩みを抱えた主人公が島での生活を通して自信を取り戻していく淡くエッチな物語。
※♡マークあり
※基本的に男一人称視点で記述します
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる