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「おお! 《つくしん房》に《ノビル草》、それに《野々イチゴ》もゲット!」
《つくしん房》は、野草であるつくしがブドウみたいに房になってかなり変わっているものの、《ノビル草》は野草のノビルとそう変わらない。そして《野々イチゴ》もまた野イチゴと同じで、若干この世界の方が実が大きいがそれだけである。
よしよし、いいねいいね。新素材をゲットって、やっぱテンション上がるよなぁ。
ムトたちも言われた通りに食材を集めてきてくれる。
けど……こらこら、二人ともつまみ食いしないの。
特に《野々イチゴ》が気に入ったようで、止められない止まらない状態でパクついている。
採取した素材を粗方インベントリに収納したところで、そろそろ次に進むことにした。
だが今度はそんなのどかな空気を一掃する場面に出くわすことになる。
木々の蔭から二体の魔物が姿を現したのだ。
「スライム二匹、か」
見た目はイチによく似ているが、全身から黒々としたオーラを滲み出している。
このオーラの正体こそ――《邪気》。
つまりは闘争本能に支配された《邪気種》というわけだ。
そして敵の頭上には緑色の体力ゲージと、青色の気力ゲージの二つが記されているのを確認できる。
これはイチやムトなどもそうだが、このゲージを確認できるのも僕だけらしい。
「よ、よし! 初めての戦闘だ……!」
思わずゴクリと息を呑んでしまう。
敵さんはすでに戦闘状態で、いつでも飛び掛かってきそうだ。
穏やかなイチとは真逆の威圧感を放っている。
僕は石の槍を構え重心を低くした。
「……ツナギ、倒せばいいの?」
「え? ああ、そうだけど、とりあえずムトとイチは見ててほしい」
「……大丈夫?」
「うん。もし危なかったら手を貸してくれればいいから」
これからいろいろなダンジョンを探索するに当たって、魔物との戦闘は避けられない。いつもムトに助けてもらっているばかりじゃ成長しない。
戦うこと自体に恐怖はあるけど、乗り越えとかないと後々キツイしね。
槍を持つ手に力が入っていく。
「さあ――来いっ!」
覚悟を決めた僕の声に呼応するかのように、まず一匹のスライムが飛び掛かってきた。
「はあぁっ!」
動きはちゃんと見えていたので、それに合わせて槍を振るう。
すると見事に命中し、スライムの身体に刃が入った。
同時に相手の体力ゲージとともに気力ゲージが一気に半分以上削られる。
身体を真っ二つにしたわけではないが、裂傷が走り、地面に落下してからも動きが鈍くなっていた。
殺したらクラフトすることはできない。だから――。
今度は柄の方をスライムに向けて叩きつけた。
すると気力ゲージの方が先にゼロになり、スライムはその場から身動きできなくなったのである。
この気力ゲージをゼロにすれば、相手を気絶させることが可能なのだ。
「よし、あと一匹!」
と、次の相手に視線を向けようとしたその時、背中に衝撃を受け、結構な痛みに声を上げてしまった。
「痛っつぅ……っ」
見れば残り一匹が体当たりを僕にくらわせたようだった。
あんなに柔らかいボディなのに、タイヤでもぶつかってきたような衝撃がある。
「負けるか! 行くぞ!」
こちらからスライム目掛けて駆け寄り槍を一閃するが、スライムもその小ささを優位に発揮して後方へ跳んで回避する。
だがそこで僕はスライム目掛けて槍を投擲してやった。
切っ先が地面に着地した瞬間にスライムを捉え、体力ゲージを九割、気力ゲージを一気にゼロにまで削ったのである。
起き出してくる前に、すぐに地面に《クラフト紋》を描く。
そしてその上に最初に気絶させたスライムを乗せる。
「――クラフト!」
紋が青く発光した直後、スライムを覆っている邪気が紋に吸収されていき、すべての邪気を吸収したあと、紋は粒子状に散った。
『《スライムの種》一個入手』
『NEW 《スライム油》一個入手』
目の前にそう表示されてホッと息を吐く。
どうやら新素材も手に入れることができたようだ。
それと同時に、何故か傷つけたスライムの体力ゲージが回復し、気力ゲージだけがゼロのままである。
これはどういった現象か、ゲームの時でも分からなかったが、邪気を祓えば魔物は五体満足で復活するのだ。
「ふぅ……いや、まだ一匹いたんだった!」
すぐにもう一匹も同じようにクラフトを行い、同じ素材をゲットすることができた。
僕にとって初めての実戦だったが、何とか上手く事が運べて良かったと安堵した。
《つくしん房》は、野草であるつくしがブドウみたいに房になってかなり変わっているものの、《ノビル草》は野草のノビルとそう変わらない。そして《野々イチゴ》もまた野イチゴと同じで、若干この世界の方が実が大きいがそれだけである。
よしよし、いいねいいね。新素材をゲットって、やっぱテンション上がるよなぁ。
ムトたちも言われた通りに食材を集めてきてくれる。
けど……こらこら、二人ともつまみ食いしないの。
特に《野々イチゴ》が気に入ったようで、止められない止まらない状態でパクついている。
採取した素材を粗方インベントリに収納したところで、そろそろ次に進むことにした。
だが今度はそんなのどかな空気を一掃する場面に出くわすことになる。
木々の蔭から二体の魔物が姿を現したのだ。
「スライム二匹、か」
見た目はイチによく似ているが、全身から黒々としたオーラを滲み出している。
このオーラの正体こそ――《邪気》。
つまりは闘争本能に支配された《邪気種》というわけだ。
そして敵の頭上には緑色の体力ゲージと、青色の気力ゲージの二つが記されているのを確認できる。
これはイチやムトなどもそうだが、このゲージを確認できるのも僕だけらしい。
「よ、よし! 初めての戦闘だ……!」
思わずゴクリと息を呑んでしまう。
敵さんはすでに戦闘状態で、いつでも飛び掛かってきそうだ。
穏やかなイチとは真逆の威圧感を放っている。
僕は石の槍を構え重心を低くした。
「……ツナギ、倒せばいいの?」
「え? ああ、そうだけど、とりあえずムトとイチは見ててほしい」
「……大丈夫?」
「うん。もし危なかったら手を貸してくれればいいから」
これからいろいろなダンジョンを探索するに当たって、魔物との戦闘は避けられない。いつもムトに助けてもらっているばかりじゃ成長しない。
戦うこと自体に恐怖はあるけど、乗り越えとかないと後々キツイしね。
槍を持つ手に力が入っていく。
「さあ――来いっ!」
覚悟を決めた僕の声に呼応するかのように、まず一匹のスライムが飛び掛かってきた。
「はあぁっ!」
動きはちゃんと見えていたので、それに合わせて槍を振るう。
すると見事に命中し、スライムの身体に刃が入った。
同時に相手の体力ゲージとともに気力ゲージが一気に半分以上削られる。
身体を真っ二つにしたわけではないが、裂傷が走り、地面に落下してからも動きが鈍くなっていた。
殺したらクラフトすることはできない。だから――。
今度は柄の方をスライムに向けて叩きつけた。
すると気力ゲージの方が先にゼロになり、スライムはその場から身動きできなくなったのである。
この気力ゲージをゼロにすれば、相手を気絶させることが可能なのだ。
「よし、あと一匹!」
と、次の相手に視線を向けようとしたその時、背中に衝撃を受け、結構な痛みに声を上げてしまった。
「痛っつぅ……っ」
見れば残り一匹が体当たりを僕にくらわせたようだった。
あんなに柔らかいボディなのに、タイヤでもぶつかってきたような衝撃がある。
「負けるか! 行くぞ!」
こちらからスライム目掛けて駆け寄り槍を一閃するが、スライムもその小ささを優位に発揮して後方へ跳んで回避する。
だがそこで僕はスライム目掛けて槍を投擲してやった。
切っ先が地面に着地した瞬間にスライムを捉え、体力ゲージを九割、気力ゲージを一気にゼロにまで削ったのである。
起き出してくる前に、すぐに地面に《クラフト紋》を描く。
そしてその上に最初に気絶させたスライムを乗せる。
「――クラフト!」
紋が青く発光した直後、スライムを覆っている邪気が紋に吸収されていき、すべての邪気を吸収したあと、紋は粒子状に散った。
『《スライムの種》一個入手』
『NEW 《スライム油》一個入手』
目の前にそう表示されてホッと息を吐く。
どうやら新素材も手に入れることができたようだ。
それと同時に、何故か傷つけたスライムの体力ゲージが回復し、気力ゲージだけがゼロのままである。
これはどういった現象か、ゲームの時でも分からなかったが、邪気を祓えば魔物は五体満足で復活するのだ。
「ふぅ……いや、まだ一匹いたんだった!」
すぐにもう一匹も同じようにクラフトを行い、同じ素材をゲットすることができた。
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