13 / 32
12
しおりを挟む
急に目の前に広がっていた景色が移り変わり、いきなり見慣れぬ森の入り口へとやってきていた。
「お、おお……マジでテレポートしたし」
実は結構半信半疑だったこともあり、実際にこうして王道の魔法みたいな力を体験するとやっぱり感動する。
まあクラフトも魔法みたいなもんだけど、それでもテレポートは誰しも憧れるじゃない。
「……ここ、森?」
「ピィ?」
ムトとイチが周りを見回しながらそう言うので僕は頷く。
「そうだよ。ここが【始まりの森】の入り口」
そこで背後に奇妙な光景が映っていることに気づく。
青白い炎のようなものが宙に浮かび、ユラユラと揺らめいていたのだ。
これがゲームでもお馴染みの〝リターンゲート〟である。どうやらヤタの言うようにムトたちの視界には映っていないようだ。
この場所を覚えておかなければ当然《箱庭》へと戻ることができないだろう。
あ、そういや簡易式のマップ機能があったはずだよな。
ステータス画面を開き、マップという欄をクリックすると、大きな四角い地図が映し出される。
しかしそのほとんどは何も描かれておらず、ただ端の方にちょこんと松明でもかざしているかのように明るく道が照らされていた。
その中央には白い三角マークが三つと、青い丸が刻まれている。
この三角マークは僕たちで、青が〝リターンゲート〟だ。
今はほとんど何も映し出されていない地図だが、進んでいけば自動的にマップの詳細が明らかになっていく。
まあ一応地図は大体頭の中に入ってるけどね。
ゲーム時、【始まりの森】は何度も素材集めに活用したため細部まで記憶に残っている。
ただ肉眼でのこの森の光景はさすがに完全には覚えていないので、迷わないためにもマップがあるのは助かる。
「ん……と、確か隠し通路は東側の通路だったな。あとで行ってみるか」
「ねえツナギ」
「おっと、何?」
「前にも教えてくれたけど、そこに何か映し出されてるんでしょ?」
「まーね。ムトに見えないのは残念だけど」
ヤタにも僕のステータス画面は確認できない。
これは僕だけが見ることのできる固有能力みたいなものである。
「それよりもムトはいつも通り武器はいらないの?」
「ん、素手の方が動きやすい」
日頃からムトにも一応護身用として武器を与えようとするのだけど、いつもいらないと言って断られる。
確かに素手で大岩を破壊できるくらいだから大丈夫だとは思うけどね。
「イチ、お前も無暗に前に出たりしないようにな」
「ピィ? ピィピィ!」
まるで任せろと言わんばかりだが、本当に分かってくれているのだろうか。
若干不安要素を抱えながらも、僕はイチを頭の上に乗せムトと肩を並んで前へと歩き出した。
この【始まりの森】は、起伏した大地の上に存在し、昼間でも少し暗いくらいに木々が密集している。
樹海、とまではいかないまでも密林とは呼べるほどの規模だろう。
木々は高木で溢れていて、樹高は十メートルを優に超すものも多い。
足場は石や枝葉などが散々しており、躓かないように歩くのに注意が必要だ。
地球にいた頃のゲーム三昧の僕なら、きっとこんな道を十分も歩けばヘトヘトだったはずだが、今は体力ゲージがほとんど減らないので大分楽に進めている。
レベルも上がったことによる恩恵が大きい。
こういうところはゲームシステムに感謝だ。
また当然のようにムトは息一つ乱さずに軽やかに歩を進めている。彼女なら富士山のような高山でも鼻歌交じりで登頂しそうだ。
「あ、待ってムト」
「どうしたの?」
「キノコを見つけたんだ」
木の根っこの傍に生えている、オレンジ色の傘を持つキノコ。
これが現実世界なら、パッチテストでも行わないと食べられるかどうかなんて分からないが……。
『NEW 《塩茸》を一個入手』
こんな感じに鑑定結果がいとも簡単に手に入る。
手に入れた物をインベントリに入れてクリックすれば、そのものの概要を知ることができるのだ。
これで毒物なのかどうかハッキリと分かる。
「よし、やっぱ《塩茸》だったか! これがあれば塩分に困らないぞ」
ゲームの知識上、記憶の中にあるキノコにそっくりだったため、触る前から気づいてはいたが、思った通りの食材で喜々とした。
「それ、食べれるの?」
「う~ん、食べれるけど、これはどっちかっていうと調味料に近いかな」
この《塩茸》は、文字通り塩で構成されたキノコ。岩塩みたいなものだと思ってもらえばいいと思う。
そう説明すると、ムトが少し味見したいと言ってきたので、一つ手渡してやる。
「ん……しょっぱい」
ムトがペロリと傘の部分を舐めて眉をひそめた。
「あはは、このキノコをちょっと集めてくれる? あまり遠くに行かないようにね」
「ん、任せて」
「ピィ!」
イチも手伝ってくれるようで、三人で近くにある《塩茸》を集めることになった。
そうして探索していると、次々と違う食材にも出会っていく。
「お、おお……マジでテレポートしたし」
実は結構半信半疑だったこともあり、実際にこうして王道の魔法みたいな力を体験するとやっぱり感動する。
まあクラフトも魔法みたいなもんだけど、それでもテレポートは誰しも憧れるじゃない。
「……ここ、森?」
「ピィ?」
ムトとイチが周りを見回しながらそう言うので僕は頷く。
「そうだよ。ここが【始まりの森】の入り口」
そこで背後に奇妙な光景が映っていることに気づく。
青白い炎のようなものが宙に浮かび、ユラユラと揺らめいていたのだ。
これがゲームでもお馴染みの〝リターンゲート〟である。どうやらヤタの言うようにムトたちの視界には映っていないようだ。
この場所を覚えておかなければ当然《箱庭》へと戻ることができないだろう。
あ、そういや簡易式のマップ機能があったはずだよな。
ステータス画面を開き、マップという欄をクリックすると、大きな四角い地図が映し出される。
しかしそのほとんどは何も描かれておらず、ただ端の方にちょこんと松明でもかざしているかのように明るく道が照らされていた。
その中央には白い三角マークが三つと、青い丸が刻まれている。
この三角マークは僕たちで、青が〝リターンゲート〟だ。
今はほとんど何も映し出されていない地図だが、進んでいけば自動的にマップの詳細が明らかになっていく。
まあ一応地図は大体頭の中に入ってるけどね。
ゲーム時、【始まりの森】は何度も素材集めに活用したため細部まで記憶に残っている。
ただ肉眼でのこの森の光景はさすがに完全には覚えていないので、迷わないためにもマップがあるのは助かる。
「ん……と、確か隠し通路は東側の通路だったな。あとで行ってみるか」
「ねえツナギ」
「おっと、何?」
「前にも教えてくれたけど、そこに何か映し出されてるんでしょ?」
「まーね。ムトに見えないのは残念だけど」
ヤタにも僕のステータス画面は確認できない。
これは僕だけが見ることのできる固有能力みたいなものである。
「それよりもムトはいつも通り武器はいらないの?」
「ん、素手の方が動きやすい」
日頃からムトにも一応護身用として武器を与えようとするのだけど、いつもいらないと言って断られる。
確かに素手で大岩を破壊できるくらいだから大丈夫だとは思うけどね。
「イチ、お前も無暗に前に出たりしないようにな」
「ピィ? ピィピィ!」
まるで任せろと言わんばかりだが、本当に分かってくれているのだろうか。
若干不安要素を抱えながらも、僕はイチを頭の上に乗せムトと肩を並んで前へと歩き出した。
この【始まりの森】は、起伏した大地の上に存在し、昼間でも少し暗いくらいに木々が密集している。
樹海、とまではいかないまでも密林とは呼べるほどの規模だろう。
木々は高木で溢れていて、樹高は十メートルを優に超すものも多い。
足場は石や枝葉などが散々しており、躓かないように歩くのに注意が必要だ。
地球にいた頃のゲーム三昧の僕なら、きっとこんな道を十分も歩けばヘトヘトだったはずだが、今は体力ゲージがほとんど減らないので大分楽に進めている。
レベルも上がったことによる恩恵が大きい。
こういうところはゲームシステムに感謝だ。
また当然のようにムトは息一つ乱さずに軽やかに歩を進めている。彼女なら富士山のような高山でも鼻歌交じりで登頂しそうだ。
「あ、待ってムト」
「どうしたの?」
「キノコを見つけたんだ」
木の根っこの傍に生えている、オレンジ色の傘を持つキノコ。
これが現実世界なら、パッチテストでも行わないと食べられるかどうかなんて分からないが……。
『NEW 《塩茸》を一個入手』
こんな感じに鑑定結果がいとも簡単に手に入る。
手に入れた物をインベントリに入れてクリックすれば、そのものの概要を知ることができるのだ。
これで毒物なのかどうかハッキリと分かる。
「よし、やっぱ《塩茸》だったか! これがあれば塩分に困らないぞ」
ゲームの知識上、記憶の中にあるキノコにそっくりだったため、触る前から気づいてはいたが、思った通りの食材で喜々とした。
「それ、食べれるの?」
「う~ん、食べれるけど、これはどっちかっていうと調味料に近いかな」
この《塩茸》は、文字通り塩で構成されたキノコ。岩塩みたいなものだと思ってもらえばいいと思う。
そう説明すると、ムトが少し味見したいと言ってきたので、一つ手渡してやる。
「ん……しょっぱい」
ムトがペロリと傘の部分を舐めて眉をひそめた。
「あはは、このキノコをちょっと集めてくれる? あまり遠くに行かないようにね」
「ん、任せて」
「ピィ!」
イチも手伝ってくれるようで、三人で近くにある《塩茸》を集めることになった。
そうして探索していると、次々と違う食材にも出会っていく。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる