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(こ、これは………………悩む!)
そこに書かれていたのは、看板に書かれていた通りどんぶり系のメニューだった。
天丼、牛丼、親子丼、その他、釜飯なども米を中心としたものがずらりと並んでいる。
リントにとっては、まさに天国のような文字の羅列だった。
隣に座っているニュウもまた、耳をピクピクと動かして何にしようか悩んでいる。
「―――――――よし、決めた! ニュウはどうだ?」
「ニュウも決めたであります!」
二人して呼吸を合わせたかのように、注文しようとしたその時、
「え~っとぉ、私はねぇ……まずはカツ丼と焼き鳥丼に牛丼でしょ」
「「……え?」」
思わずリントとニュウが同時にハモる。しかしリリノールの言葉はまだ続く。
「それがご飯でぇ、サラダとしてアスパラとキャベツのあんかけ丼と野菜たっぷり中華丼かなぁ」
……いや、それサラダじゃないんだけど……。
と、心の中でついツッコんでしまう。しかし彼女はさらに――。
「あとぉ、汁物としてぇ……麻婆丼とカレー丼がほしいなぁ」
だからそれ、汁物じゃない……。
そんな言葉をリントだけでなく、ニュウも言いたいかのようにリリノールを信じられない表情で見つめていた。
呆然としているリントたちに説明をしてくれたのは、呆れ顔のランテである。
「驚いたでしょ? この子ってば、どこにそんだけのものが入るのってくらい食べるから」
「いや……それにしても全部丼って……」
「あ、お父さぁん! 今言ったやつを二つずつお願いねぇ!」
「「嘘ぉぉぉっ!?」」
さらに驚きをぶっ込んできた。
(ちょ、ちょっと待てよ。えと……確かリリノが頼んだ丼は全部で七つだろ。しかもそれを二つずつ…………え、十四杯ってこと?)
恐るべき胃袋の持ち主である。
(いや、もしかしたら一食一食の量がそんなにないか……も)
と思っていたら、カウンターにコトンと丼のお椀が並べられる。どう見ても普通の大きさだ。
「ほい、まずは牛丼だ」
ガイトが早いの美味いの安いのを謳い文句にしているかのような速度で牛丼をリリノールの前に出した。
そこに盛り付けられている量も、別に少なくはない。むしろサービス精神旺盛とばかりにかなりのボリュームだ。
普通ならこれ一杯でお腹は満足できるほどに。
「いっただきまぁす」
嬉しそうにそう言うと、リリノールが牛丼を美味そうに食べ始める。
さらに驚くことに、ものの十秒ほどの間で、牛丼のお椀は空になり……。
「ほれ、焼き鳥丼な」
「ありがとぉ」
迷わず次のメニューを胃の中に収めていく。
「「…………」」
見た目からはまったく想像だにできない食べっぷりに、リントとニュウはただただ見入るだけだった。
「所長、ニュウ、見てないでさっさと注文しなさいよ」
「へ? あ、ああ、そうだったな……。じゃあ、親子丼で」
「ニュ、ニュウもそれでお願いするであります」
「あいよぉ!」
そんなに待つこともなく、目の前に親子丼が現れた。黄金色の卵に絡みつく鳥肉と玉ねぎ。そしてこの香り。食欲をこれでもかというほど誘ってくる。
ニュウと一緒に「いただきます」をしてから口に運ぶ。
「あむ……んぐんぐ。ん~~~~~っ!?」
別にこの世界で米を食べるのは初めてではない。しかしこんなにも美味い親子丼は初めてだった。
甘さだけでなく、辛さもあって絶妙のバランスを保っている。また鶏肉の柔らかさが半端ではない。舌だけで噛み切れるのではないか、というほどだ。
それに卵の半熟度合いも素晴らしくて、それが玉ねぎの甘さとマッチして美味い。
「~~~~っ!? おいしいのでありますぅぅぅ~!」
ニュウも尻尾を激しく揺らして感動を示している。
「でしょ。リリノのおじさんが厳選して選んだ食材を使ってるんだし、美味しくないわけないのよ」
料理の腕だけでなく、食材を選ぶ目利きも素晴らしいということだ。
(確かに美味いな。これは良い店を教えてもらった。ここなら毎日でも通いたいって思えるな)
ただ人気店というのは少し気が引ける。来る時は否が応にも多くの人間と接しなければならないだろうから。
出前とかやってくれていたら嬉しいが、さすがにあったとしても国内だけだろう。
「どうだい、あんちゃん。美味いかい?」
「はい。こんな美味い丼は初めて食べました」
「おお、おお、嬉しいこと言ってくれるねぇ! ほれ、おしんこと味噌汁オマケだ! お嬢ちゃんにも」
これは得した。何事も褒めてみるものである。ニュウも「ありがとうございます!」と言って喜んで受け取っていた。
味噌汁もまた全身に沁み渡ってくるくらいの温かさと美味さ。
ふぅっと一息吐いて、何気無く隣を見てみギョッとする。
テーブルにこれでもかと言わんばかりに積み重なった丼鉢。
(あれ? おかしいな。すでに十四杯以上あるんだけど……?)
見間違いかと思い目をパチパチとしばたかせるが……。
「お父さぁん、カレー丼あと二つちょうだぁい!」
どうやらいつの間にか、何度もおかわりをしていたようだ。
(一体その細い身体のどこにこれだけのものが……!)
さぞ腹がバカみたいに膨らんでいるのだろうと視線を向けるが、どうもそんな様子は見当たらない。
……人体って不思議だな。
そう思った瞬間であった。
そこに書かれていたのは、看板に書かれていた通りどんぶり系のメニューだった。
天丼、牛丼、親子丼、その他、釜飯なども米を中心としたものがずらりと並んでいる。
リントにとっては、まさに天国のような文字の羅列だった。
隣に座っているニュウもまた、耳をピクピクと動かして何にしようか悩んでいる。
「―――――――よし、決めた! ニュウはどうだ?」
「ニュウも決めたであります!」
二人して呼吸を合わせたかのように、注文しようとしたその時、
「え~っとぉ、私はねぇ……まずはカツ丼と焼き鳥丼に牛丼でしょ」
「「……え?」」
思わずリントとニュウが同時にハモる。しかしリリノールの言葉はまだ続く。
「それがご飯でぇ、サラダとしてアスパラとキャベツのあんかけ丼と野菜たっぷり中華丼かなぁ」
……いや、それサラダじゃないんだけど……。
と、心の中でついツッコんでしまう。しかし彼女はさらに――。
「あとぉ、汁物としてぇ……麻婆丼とカレー丼がほしいなぁ」
だからそれ、汁物じゃない……。
そんな言葉をリントだけでなく、ニュウも言いたいかのようにリリノールを信じられない表情で見つめていた。
呆然としているリントたちに説明をしてくれたのは、呆れ顔のランテである。
「驚いたでしょ? この子ってば、どこにそんだけのものが入るのってくらい食べるから」
「いや……それにしても全部丼って……」
「あ、お父さぁん! 今言ったやつを二つずつお願いねぇ!」
「「嘘ぉぉぉっ!?」」
さらに驚きをぶっ込んできた。
(ちょ、ちょっと待てよ。えと……確かリリノが頼んだ丼は全部で七つだろ。しかもそれを二つずつ…………え、十四杯ってこと?)
恐るべき胃袋の持ち主である。
(いや、もしかしたら一食一食の量がそんなにないか……も)
と思っていたら、カウンターにコトンと丼のお椀が並べられる。どう見ても普通の大きさだ。
「ほい、まずは牛丼だ」
ガイトが早いの美味いの安いのを謳い文句にしているかのような速度で牛丼をリリノールの前に出した。
そこに盛り付けられている量も、別に少なくはない。むしろサービス精神旺盛とばかりにかなりのボリュームだ。
普通ならこれ一杯でお腹は満足できるほどに。
「いっただきまぁす」
嬉しそうにそう言うと、リリノールが牛丼を美味そうに食べ始める。
さらに驚くことに、ものの十秒ほどの間で、牛丼のお椀は空になり……。
「ほれ、焼き鳥丼な」
「ありがとぉ」
迷わず次のメニューを胃の中に収めていく。
「「…………」」
見た目からはまったく想像だにできない食べっぷりに、リントとニュウはただただ見入るだけだった。
「所長、ニュウ、見てないでさっさと注文しなさいよ」
「へ? あ、ああ、そうだったな……。じゃあ、親子丼で」
「ニュ、ニュウもそれでお願いするであります」
「あいよぉ!」
そんなに待つこともなく、目の前に親子丼が現れた。黄金色の卵に絡みつく鳥肉と玉ねぎ。そしてこの香り。食欲をこれでもかというほど誘ってくる。
ニュウと一緒に「いただきます」をしてから口に運ぶ。
「あむ……んぐんぐ。ん~~~~~っ!?」
別にこの世界で米を食べるのは初めてではない。しかしこんなにも美味い親子丼は初めてだった。
甘さだけでなく、辛さもあって絶妙のバランスを保っている。また鶏肉の柔らかさが半端ではない。舌だけで噛み切れるのではないか、というほどだ。
それに卵の半熟度合いも素晴らしくて、それが玉ねぎの甘さとマッチして美味い。
「~~~~っ!? おいしいのでありますぅぅぅ~!」
ニュウも尻尾を激しく揺らして感動を示している。
「でしょ。リリノのおじさんが厳選して選んだ食材を使ってるんだし、美味しくないわけないのよ」
料理の腕だけでなく、食材を選ぶ目利きも素晴らしいということだ。
(確かに美味いな。これは良い店を教えてもらった。ここなら毎日でも通いたいって思えるな)
ただ人気店というのは少し気が引ける。来る時は否が応にも多くの人間と接しなければならないだろうから。
出前とかやってくれていたら嬉しいが、さすがにあったとしても国内だけだろう。
「どうだい、あんちゃん。美味いかい?」
「はい。こんな美味い丼は初めて食べました」
「おお、おお、嬉しいこと言ってくれるねぇ! ほれ、おしんこと味噌汁オマケだ! お嬢ちゃんにも」
これは得した。何事も褒めてみるものである。ニュウも「ありがとうございます!」と言って喜んで受け取っていた。
味噌汁もまた全身に沁み渡ってくるくらいの温かさと美味さ。
ふぅっと一息吐いて、何気無く隣を見てみギョッとする。
テーブルにこれでもかと言わんばかりに積み重なった丼鉢。
(あれ? おかしいな。すでに十四杯以上あるんだけど……?)
見間違いかと思い目をパチパチとしばたかせるが……。
「お父さぁん、カレー丼あと二つちょうだぁい!」
どうやらいつの間にか、何度もおかわりをしていたようだ。
(一体その細い身体のどこにこれだけのものが……!)
さぞ腹がバカみたいに膨らんでいるのだろうと視線を向けるが、どうもそんな様子は見当たらない。
……人体って不思議だな。
そう思った瞬間であった。
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