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「にょふふ~、強そうな奴、見つけたにょ~」
これまで多くのモンスターと戦ってきたボクだが、まさかこれほど凄まじいオーラを醸し出している相手と出会ったのは久しぶりだった。
しかしそれがモンスターではなく――――人だ。
赤いローブで身を包んでいるが、直感的に相手は人だというのが分かる。しかもこの雰囲気……。
「……君さぁ、もしかしたらボクと一緒かなぁ?」
「…………お前は」
男の声。彼の両眼から流れ出ている血の涙が、霧状に変質して周囲を覆っている。これは多分、ヤバイやつだ。
チラリと地面に蹲っている女性を見る。恐らくこの赤い霧にやられたのだろう。
ただならぬ雰囲気を漂わせる赤ローブ。恐らく彼は、自分と同じ――100レベルだ。
しかも……。
彼の後ろに佇む巨大生物。確か名前は――覇王亀だ。SSランクのモンスター。
「にょふふ~、あの時に現れたレッドフェンリルちゃんを召喚した奴って、君のことだよね~?」
「……! ほう、アレが手負いで帰って来たから何事だと思っていたが、なるほど……お前なら納得だ――リョフ」
「おお~、ボクのこと知ってるんだね~!」
「RONの中でお前を知らない奴はいないだろう」
「! ふぅん、ここをRONと結び付けられるってことは、やっぱり君はボクと同じ境遇にいるってことかぁ」
「フン、まさかお前もここへやって来ていたとはな」
「ん~けど君も多分100レベルでしょ? 名前、教えてほしいなぁ」
「……D」
「ディー?」
「そうだ。アルファベットの……Dだ」
「ああ、そっちか。う~ん、でもおかしいなぁ。ボクってば、100レベルの奴らは把握してたんだけど、君なんていなかったよ?」
「これ以上は答える義務はないな」
「……ま、いっか。ボクは強い奴と戦えればそれでいいし~」
「噂通りに戦闘狂か」
「にょふふ~、だってぇ、せ~っかくこんな世界に来れたんだもん。ガッツリバトルを楽しまなきゃ損でしょ?」
「…………《傲慢の瞳》」
「さっせないよっ!」
彼があの不気味な瞳を使おうとした瞬間を狙って、ボクは瞬時に剣を何も無いところから作成して右手に握り、彼へと肉薄する。寸断するつもりで剣を横薙ぎに一閃。
しかし切ったのは空だけ。すでにそこにはDの姿はいなかった。
「あらら。へぇ、スピード、速いね~」
いつの間にか覇王亀の背に乗っていたDを見上げる。
「――ここでお前など相手にしている暇などない」
「そ~んなツレナイこと言わないで、ボクと殺し合おうよ!」
スキルの《電光石火》を使い、Dの懐へと迫るが、覇王亀の長い尻尾がボクに襲い掛かってくる。
「おっと、それはか~んべん!」
剣でガードしてダメージはないが、空中にいるため踏ん張りが効かずにそのまま弾き飛ばされてしまう。
ただすぐに体勢を整え、クルリと一回転してから砂場に着地する。それからDを見上げてみるが、残念ながら覇王亀の背にはいなかった。
隙を突いてどこかへ身を潜ませ奇襲を狙ってくるつもりかと思ったが、完全に彼の気配はここから消えていた。
「……ちぇ、逃げたのかぁ。せ~っかく面白くなりそうだったのに~」
物足りない。レッドフェンリルの時と同じ不完全燃焼な気分だ。
「残ったのは亀ちゃんだけかぁ。……ま、いっか。せめてボクの《方天画戟》の試し斬りをさせてよ」
持っていた剣を消して、西洋のハルバートに似た、愛用の深紅の槍を創造する。
「いっくよぉ~! ちゃ~んと抵抗くらいしてよね!」
そのまま跳躍して、覇王亀の頭上へと上る。しかし相手は戦闘意志がまったくないのか、ジッと動かないまま。
すると突然、覇王亀の足元に魔法陣が広がり、そこに沈み込むようにして消失してしまう。
「あ~っ、待ってよぉっ!」
しかし制止の希望は叶えられず、鬱憤晴らしのターゲットはそのままどこかへと去ってしまった。
「もう~! これじゃあ、レッドフェンリルちゃんと一緒じゃんかぁっ!」
少しくらいバトってもいいと思うんだけどなぁ。
「……あ~あ、でもまあしょ~がないかぁ。また探そ」
いつまでも悔しがっていても仕方ないので、槍を消してその場から去ろうとした時、不意に先程からずっと蹲っていた女性に視線が向いた。
しかしどうにもおかしいことに気づく。ここにやって来て、彼女を見た時、確かに体格は自分と変わらない女性だった。
それなのに今はどうだろう……。
「あれぇ?」
何故―――何故、今横たわっているのが……。
「――子供なのぉ?」
そこにいたのは、五歳児ほどの少女だった。
これまで多くのモンスターと戦ってきたボクだが、まさかこれほど凄まじいオーラを醸し出している相手と出会ったのは久しぶりだった。
しかしそれがモンスターではなく――――人だ。
赤いローブで身を包んでいるが、直感的に相手は人だというのが分かる。しかもこの雰囲気……。
「……君さぁ、もしかしたらボクと一緒かなぁ?」
「…………お前は」
男の声。彼の両眼から流れ出ている血の涙が、霧状に変質して周囲を覆っている。これは多分、ヤバイやつだ。
チラリと地面に蹲っている女性を見る。恐らくこの赤い霧にやられたのだろう。
ただならぬ雰囲気を漂わせる赤ローブ。恐らく彼は、自分と同じ――100レベルだ。
しかも……。
彼の後ろに佇む巨大生物。確か名前は――覇王亀だ。SSランクのモンスター。
「にょふふ~、あの時に現れたレッドフェンリルちゃんを召喚した奴って、君のことだよね~?」
「……! ほう、アレが手負いで帰って来たから何事だと思っていたが、なるほど……お前なら納得だ――リョフ」
「おお~、ボクのこと知ってるんだね~!」
「RONの中でお前を知らない奴はいないだろう」
「! ふぅん、ここをRONと結び付けられるってことは、やっぱり君はボクと同じ境遇にいるってことかぁ」
「フン、まさかお前もここへやって来ていたとはな」
「ん~けど君も多分100レベルでしょ? 名前、教えてほしいなぁ」
「……D」
「ディー?」
「そうだ。アルファベットの……Dだ」
「ああ、そっちか。う~ん、でもおかしいなぁ。ボクってば、100レベルの奴らは把握してたんだけど、君なんていなかったよ?」
「これ以上は答える義務はないな」
「……ま、いっか。ボクは強い奴と戦えればそれでいいし~」
「噂通りに戦闘狂か」
「にょふふ~、だってぇ、せ~っかくこんな世界に来れたんだもん。ガッツリバトルを楽しまなきゃ損でしょ?」
「…………《傲慢の瞳》」
「さっせないよっ!」
彼があの不気味な瞳を使おうとした瞬間を狙って、ボクは瞬時に剣を何も無いところから作成して右手に握り、彼へと肉薄する。寸断するつもりで剣を横薙ぎに一閃。
しかし切ったのは空だけ。すでにそこにはDの姿はいなかった。
「あらら。へぇ、スピード、速いね~」
いつの間にか覇王亀の背に乗っていたDを見上げる。
「――ここでお前など相手にしている暇などない」
「そ~んなツレナイこと言わないで、ボクと殺し合おうよ!」
スキルの《電光石火》を使い、Dの懐へと迫るが、覇王亀の長い尻尾がボクに襲い掛かってくる。
「おっと、それはか~んべん!」
剣でガードしてダメージはないが、空中にいるため踏ん張りが効かずにそのまま弾き飛ばされてしまう。
ただすぐに体勢を整え、クルリと一回転してから砂場に着地する。それからDを見上げてみるが、残念ながら覇王亀の背にはいなかった。
隙を突いてどこかへ身を潜ませ奇襲を狙ってくるつもりかと思ったが、完全に彼の気配はここから消えていた。
「……ちぇ、逃げたのかぁ。せ~っかく面白くなりそうだったのに~」
物足りない。レッドフェンリルの時と同じ不完全燃焼な気分だ。
「残ったのは亀ちゃんだけかぁ。……ま、いっか。せめてボクの《方天画戟》の試し斬りをさせてよ」
持っていた剣を消して、西洋のハルバートに似た、愛用の深紅の槍を創造する。
「いっくよぉ~! ちゃ~んと抵抗くらいしてよね!」
そのまま跳躍して、覇王亀の頭上へと上る。しかし相手は戦闘意志がまったくないのか、ジッと動かないまま。
すると突然、覇王亀の足元に魔法陣が広がり、そこに沈み込むようにして消失してしまう。
「あ~っ、待ってよぉっ!」
しかし制止の希望は叶えられず、鬱憤晴らしのターゲットはそのままどこかへと去ってしまった。
「もう~! これじゃあ、レッドフェンリルちゃんと一緒じゃんかぁっ!」
少しくらいバトってもいいと思うんだけどなぁ。
「……あ~あ、でもまあしょ~がないかぁ。また探そ」
いつまでも悔しがっていても仕方ないので、槍を消してその場から去ろうとした時、不意に先程からずっと蹲っていた女性に視線が向いた。
しかしどうにもおかしいことに気づく。ここにやって来て、彼女を見た時、確かに体格は自分と変わらない女性だった。
それなのに今はどうだろう……。
「あれぇ?」
何故―――何故、今横たわっているのが……。
「――子供なのぉ?」
そこにいたのは、五歳児ほどの少女だった。
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