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『ピコット族』は元々の身体が小さいこともあり、家は非常に規模が小さい。人が二人も入るとかなり手狭に感じる。
 見た目は人間の家とそう違いはないような木造住宅なのだが。

「すみません、狭いですよね」
「いえ、お気になさらずに」

 フォノとパメラはテーブルの椅子に座るが、オレとメルヴィスは地べたに腰を下ろす。それでちょうどテーブルと合う高さになる。

「ん……おお、この飲み物美味いですね!」

 パメラが出してくれた飲み物を口に含んだオレは、そのフルーティな香りと濃厚なミルク味の飲み物に感動する。

「それは私たちが育てている《ミルウリ》という樹から取れる樹液なんです。とっても栄養価が高くて美味しいんです」

 ふぅん。これは驚きだ。ゲーム時でもかなりの食材をコレクターしていたオレが知らなかったとは……。探せばまだまだ未踏食材というべきものはあるようだ。

「あのぉ、お兄ちゃん、これも食べてみて!」

 そう言ってフォノが差し出してきたのはポテトチップのような形状の食べ物。

「はむ………おお、カリカリしてて美味い! これはあれだな、一度食べたら止められない系だな」
「ふふ、確かにイックウ殿が仰る通りですな。これは手軽に頂けて美味しいです」

 メルヴィスも満足気にパクパクと食べている。

「それはね、《ミルウリチップ》って言って、皮を油で揚げたやつなの!」
「へぇ、ありがと。美味いよ」
「えへへ~」
「あらあら、フォノったらすっかり懐いちゃって」
「ふむ。イックウ殿は何故か幼女を惹きつけますからな。危ない存在です」
「誤解を招くようなことを言わないでくれる! ああ、パメラさんも『え? 嘘?』的な感じで見ないでぇっ!」
「あらあら、冗談ですよ」
「そうですぞ、冗談です、イックウ殿」
「心臓に悪いってその冗談っ!?」

 フォノだけは何を話しているか理解はできていないようだ。オレの隣に座って美味しそうに《ミルウリチップ》を食べている。もきゅもきゅと食べる姿は……萌えるぜ!

「ところで、例のモンスターの話、でしたわね」
「ああ、そうでした。何か情報はありませんか?」
「そうですね。私たちの中でも実際に見た者はあまりいません。ただその者からは、ジオファルコンだったと聞きました」
「ジオファルコン……か」
「ご存知なのですか、イックウ殿」
「ああ、SSランク級のモンスターだ。ここにそいつがいるのは確かにありえないな。奴はそもそも高山で生息するモンスターだし、地上に下りてくることもない」
「なるほど。ではやはり例の推測が強い、ということですか?」
「そうだな。あの【アビッソの穴】で会った奴、アイツが関わってる可能性が高いんじゃねーかなぁ」
「やはり、ですか。私ももしかしたらと思っていたのですが、確証はないのでまだ上に報告はしていないのです」
「え、そうなの?」
「はい。イックウ殿のことは説明しましたが、例の人物のことはまだ。何分、あれが人なのかモンスターなのか、まだ定かではありませんから。あそこに住んでいるモンスターなのだとしたら、放置していても大丈夫だと判断しました」

 なるほど。そういう見解をしていたのか。
 オレは、間違いなくアイツが人だということは知っている。まあそれも《鑑定士》のサブジョブの恩恵があって、奴の《ステータス》を見ることができたからなんだけど。

「パメラ殿、そのモンスターが現れたのはいつ頃で?」
「確か……一週間ほど前ですね」
「となると、もしあの赤ローブの仕業だとすると、【アビッソの穴】から出てきているということですな」
「だろうな。まあ、アイツが犯人だと仮定するなら、だけど」
「そうですな。ですがイックウ殿はそやつが関わっている可能性を考えてらっしゃるのでしょう?」
「あくまでもジオファルコンが召喚されたものだとしたら、だけどな。だってボルケーノドラゴンを召喚できる奴だぞ? ジオファルコンとも契約してる可能性はすっげー高い」
「確かに。パメラ殿、ジオファルコンが現れた周辺に、一族に関係ない人影などの確認はありませぬか?」
「そうですね……」
「あたし知ってるよ」

 フォノの言葉に全員の視線が彼女に集まる。

「フォノ? あなた、知ってるの?」
「うん、ミロットおじさんが言ってたよ。何かね、赤い服を着た人がいたって」
「赤い服!? イックウ殿!」
「ああ、これで奴の可能性がまた高まっちまったな」

 ああ嫌だ嫌だ。アイツはめっちゃ強いだろうし厄介そう。できれば関わり合いたくない。

「そのミロット殿という方を紹介してもらってもよいかな?」
「うん、いいよ! 今から行く?」
「よいのかな?」
「うん! ほら、お兄ちゃんも行こ!」

 フォノがオレの手を取って家の外へと引っ張っていく。その後にメルヴィスもついてくる。

「失礼のないようにね、フォノ!」
「うん。行ってきます、お母さん!」

 そうしてミロットなる人のところへ向かうことになった。
 


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