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 ――――【アビッソ遺跡】。

 街の外れに位置する旧市街地だった場所に存在する遺跡であり、今では観光名所の一つとして開放されている。
 とはいっても、重要な研究対象でもあるので、立ち入ることができない場所もある。

「何て、ゲームの知識ではあるけど、こうやって来てみると、やっぱりデッカいよなぁ」

 遺跡はローマに存在するコロッセウムのような外壁をしており、中央には教会のような建物があったはず。一般人は教会の周りまで行くことは許されているが、中に入ることは禁じられている。
 名目上はいつ壊れるか分からないから危ないといったことでだ。実際は、ここの所有者が、地下にあるダンジョンの存在を守っているからという理由。

「ま、あくまでもゲームだった時の話だけどね」

 オレはポツリポツリといる観光客に混じって、遺跡の遺跡の中へと入っていく。中には巨大な教会が建てられてあり、立派なステンドグラスも視界に飛び込んでくる。

「すっげーなぁ。一体何年くらい前の遺跡なんだろうか……」

 この世界――【ネヲン】というところは、多くの大陸、島々があり、各国にはそれぞれ迷宮を所持していたりする。
 また迷宮攻略者は英雄と呼ばれ、王に匹敵する権力を持つことができた。
 まだまだ未踏地帯や遺跡なども数多く、そこには様々な食材やモンスターが豊富だったはず。

「この知識がどこまで役立てられるかは分かんねーけどな」 

 オレはじっくりと教会を眺めながら、記憶から情報を引っ張り出してくる。

 う~ん、確か地下ダンジョンは確か教会の地下階段の先にある“オーブ”を触ると行けるんだよなぁ。

 一応警備員もいるので、おいそれと教会の中には入れないようになっている。

「ゲームじゃ、所有者と会ってフラグを立ててからじゃないと入れなかったんだよなぁ」

 その所有者は、この街の区役所に務める所長なのだが、いきなり尋ねて行っても許可などくれるわけがない。ゲームでは所長の出すクエストをクリアしていき、信頼を得てからということになっていた。

「……けど、時間も限られてるし、ここは強行突破しかない」 

 しかしその時、妙な光景を目にした。
 それは教会に次々と、ある者たちが入っていくのだ。

「アレは――“第三師団”っ!?」

 何故こうも縁があるのか。しかも先頭を歩いているのは【クオール王国】で出会った、美少女師団長のメルヴィス・オートリアである。
 警備の者たちに案内されて、ぞろぞろと集団で中に入っていく。

「……まさかだと思うけど……!」

 オレはある思いつきを確かめるために、一度外に出てギルドへと向かった。すぐさま掲示板へと直行し確認をする。

「――やっぱりあった」

 そこに貼られてあるクエスト。

“【アビッソ遺跡】にて、調査を願う。夜な夜な遺跡から謎の物音や、人影を発見するという目撃情報が確認されている”

 するとそこへ受付嬢がやって来て、その張り紙を剥がした。

「あ、あの、どうして剥がすんですか?」
「え? ああ、これはもう受注されましたので」
「受注?」
「はい。依頼を出されていた区役所の所長からのご報告で、何でも頼りになる調査団に依頼したと、今連絡がありまして」

 どうやらこのクエストを所長を通じて“第三師団”が引き受けたようだ。

「……重複受注はできないんですか?」
「は、はぁ。所長にお聞きしてみなければ分かりませんが、どうされますか?」
「……いいえ、やっぱりいいです。ありがとうございました」

 オレは頭を下げてからギルドを出た。
 そのまま遺跡へと急いで戻ると、すでに“第三師団”の姿は無かった。中に入ったのだろう。

「う~ん、どうすっかなぁ。仮に地下ダンジョンに行けたとしても、あの子たちじゃレベル不足だぞ」

 その地下ダンジョンが、もしゲームと同じ設定だったら、52レベル程度でクリアできるものではない。ランクにしてSSSランク以上の危険度を誇るダンジョンなのだから。
 とはいってもSSSランクのモンスターが出てくるのは最下層。上層エリアではせいぜいSランクのモンスターが襲ってくるくらい。

 上層エリアだけなら、彼女たちでも問題ないだろうが、もし先に進もうというのであれば、これはマズイことこの上ない。

「できたら何も見つからずに彼女たちが帰ってくることが一番なんだけど……」

 しかしこのまま何もせずにジッと待つのも意味が無いので、オレも中に入ることにした。中がどうなっているかは、頭の中に入っているので隠れる場所なども把握しているし、多分大丈夫だろう。
 オレはスキルの《忍び足》を使って、周囲を警戒しつつ、誰にも見つからないように物陰から物陰へと突き進み移動していく。教会には裏口もあったはずなので、そこから侵入することにする。

 しかしそこには案の定、警備員が立っていた。ただ一人だけだ。


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