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「おお~! なっつかしぃ~! まさしく【始まりの街】の入口じゃんか!」
入口は東西南北それぞれにあって、巨大な門が設置されている。
まあ、門はずっと開いてて、門番なんていないんだけどね。
「確かここは東門だっけか? ならラッキーだな。ギルドが近かったはず」
門を潜り中に入る。街では多くの人が行き交い賑わっている。ゲームではその名の通り、ここから冒険に出る者たちが多いので、自然と人が多く集まるのだ。
ギルドに登録してクエストなどを行う者たちのことを“冒険者ギルダー”と呼ばれており、モンスターなどを討伐して、その報酬を受けて生活している者は数多くいる。
危険が伴うので、怪我をする者や死んでしまう者だっていた。ゲームでは、たとえ死んでもセーブポイントという場所で、以前セーブしたところから復活できるというシステムなのだが、そのシステムが、今のオレに通じるのかは分からない。
そのセーブポイントは、ギルドにもあったはず。もしそれが無いのであれば、ここはゲームであってゲームでなくなる、実際に死ぬ危険性の高い現実だという事実が発覚する。
できればセーブポイントがあってほしいと願いながら、懐かしいギルドへ到着した。しかし気になることもあった。
「……どうも、見覚えの無い建物とかもあったよなぁ。拡張パックとかで新たに作られたのかね~。けど普通の民家っぽかったし。グラフィックを変更しただけ? ……まあ、気にはなるけど、ここが【始まりの街】には違いないし、問題ないよな。とりあえず中に入ってみるか」
扉を開けて中に入り、まずはすぐ傍にあったセーブポイントを探す。セーブポイントは、青色の魔法陣が描かれてあり、その上に立つとセーブできるというシステムだった。
しかし、そこにあったはずのセーブポイントは――無かった。
「ということは、絶対死ねねーって確率が高くなったな」
レベルはMAXのはずなので、そうそう死ぬようなことはないが、それでもここが現実世界と同じ死の危険があることを知り寒気が走った。
ま、まあ、オレだって伊達にRONで最強キャラって言われてたわけじゃねえんだ。やってやんよ!
意気込みつつ、とりあえずギルド登録を済ませようと受付に近づく。登録をして、クエストを受け、金を稼ぐ必要がある。何といっても、今は無一文なのだから。
しかし受け付けは女の人だ。う~緊張するな。必要以上に何故か美人なので、話しかけるのは少しドギマギする。これがニート生活から脱するための第一歩ということか……。
「……えと、す、すみません、登録したいん……ですけど」
「ありがとうございます。登録について、説明はお受けされますか?」
そこでゲーム時と食い違いがあるかもしれないので、一応説明を受けることにした。
「ギルドへ登録されますと、自動的に世界中にあるギルドへとあなた様の情報が伝達されます」
そこらへんはゲーム時と同じだ。
「“冒険者”にはランクが存在し、下からF・E・D・C・B・A・S・SS・SSSと位置づけされております。最初は誰もがFランクから始まり、実績によって昇格していきます。ランクに応じて受けられるクエストも限られますのでご注意ください。またSランク以上になりますと、様々な特典もございますので、その際はきちんと説明をお受けください」
「は、はい、分かりました。問題ありません」
声が引き攣っていないか不安だ。相手は事務的に対応しているのだから、こちらも事務的に返事をすればいいのだろうが、オレにとってはなかなかに難しいスキルである。
う~、これからこの世界で生きてくんだったら、慣れなきゃいけないよなぁ。
ハードルは高いが、徐々にコミュ力もつけていく必要があるかもしれない。まあ、そう決めても結局はソロ活動に勤しむのがオレなんだけど……。
「クエストを受け、もし失敗されますと、違約金として一万ジェマが必要になります。お払いを拒否されますと、登録抹消になり、三年間は再登録することができません」
「結構シビアなんですね」
知ってたけどね。
「身の丈に合わないクエストを受ける方が多かったので、それを防止させるために設置された規約です」
確かにその規約があれば、自分の実力以上のクエストを受ける人たちも少なくなるだろう。
「パーティ登録についても説明を受けられますか?」
「あ、いいえ。べ、別にいいです。登録をお願いします」
「畏まりました。では――――こちらに血液を染み込ませてください」
受付嬢が差し出してきたのは、テレホンカードのようなものと、小さな針。オレは針で指先を傷つけ血を流し、カードに流していく。
カードと針を受付嬢が受け取り、そのまま奥へ行き、一分ほどしてから戻ってきた。
「これがあなた様の《ギルドカード》になります。紛失されますと、再発行には三千ジェマが必要になりますのでご記憶ください」
「分かりました」
オレが《ギルドカード》を受付嬢から受け取った瞬間、粒子状に変化して消えた。正確に言うと、腰に携帯している小さなバッグに吸い込まれたのだ。それを見ていた受付嬢は、目を見張りながら、
「お、驚きました……、まさか《アイテムボックス》をお持ちだったのですか?」
「へ? い、いえその……まあ、はい」
「かなりレア度が高いはずですのに……もしかして高名な“冒険者”から頂いたのですか?」
「ま、まあそんな感じです、はは」
《アイテムボックス》――所持していると、上限の数だけ、アイテムや装備品などを保管できる便利グッズである。
これは市販されているのではなく、あるクエストを受けて達成しなければ手にできないものなのだ。もちろんオレもクエスト達成者であり、今《ギルドカード》が消えたのも、《アイテムボックス》――腰に携帯している小さなバッグに保管されたからだ。
取り出す時は《ステータス》画面を開いて《アイテム》の欄をクリックして、貴重品の《ギルドカード》をクリックすれば取り出せる。
まあ、そんなことしなくても、確認するだけなら《ギルド》の欄をクリックすればいい。
「《アイテムボックス》を持つ新人さんは珍しいですね。今後の活躍を期待させて頂きます」
「あ、ありがとうございます」
「さっそく何かクエストを受けられますか?」
「は、はい」
「では、あちらの掲示板に張られてあるクエストからお選びください。ですが受けられるのは、Eランクまでです」
オレは返事をしてから掲示板へと向かった。
「う~ん、とりあえず実入りに多いクエストをして金を稼いで、宿を確保しなきゃな」
初日から野宿はちょっと勘弁だ。
いろいろ目を通していくと、
――バタフライ草の採取――
「へぇ、そういやこんなクエストもあったっけなぁ。本当に懐かしいや。なになに、報酬は一輪で三十ジェマか。よし、これにするか」
懐かしさを覚えて即決してしまった。本当は討伐系の方が稼ぐには良いのだが、別にクエストを受けなくとも、モンスターを討伐して、その素材を買い取っても貰えるので、別段討伐系だけに執着する必要はない。
オレは受付嬢にクエストを受諾してもらい、《バタフライ草》の情報を聞いた後にギルドから出た。
だがその時――
「おい、ちょっと待ちな、兄ちゃん」
入口は東西南北それぞれにあって、巨大な門が設置されている。
まあ、門はずっと開いてて、門番なんていないんだけどね。
「確かここは東門だっけか? ならラッキーだな。ギルドが近かったはず」
門を潜り中に入る。街では多くの人が行き交い賑わっている。ゲームではその名の通り、ここから冒険に出る者たちが多いので、自然と人が多く集まるのだ。
ギルドに登録してクエストなどを行う者たちのことを“冒険者ギルダー”と呼ばれており、モンスターなどを討伐して、その報酬を受けて生活している者は数多くいる。
危険が伴うので、怪我をする者や死んでしまう者だっていた。ゲームでは、たとえ死んでもセーブポイントという場所で、以前セーブしたところから復活できるというシステムなのだが、そのシステムが、今のオレに通じるのかは分からない。
そのセーブポイントは、ギルドにもあったはず。もしそれが無いのであれば、ここはゲームであってゲームでなくなる、実際に死ぬ危険性の高い現実だという事実が発覚する。
できればセーブポイントがあってほしいと願いながら、懐かしいギルドへ到着した。しかし気になることもあった。
「……どうも、見覚えの無い建物とかもあったよなぁ。拡張パックとかで新たに作られたのかね~。けど普通の民家っぽかったし。グラフィックを変更しただけ? ……まあ、気にはなるけど、ここが【始まりの街】には違いないし、問題ないよな。とりあえず中に入ってみるか」
扉を開けて中に入り、まずはすぐ傍にあったセーブポイントを探す。セーブポイントは、青色の魔法陣が描かれてあり、その上に立つとセーブできるというシステムだった。
しかし、そこにあったはずのセーブポイントは――無かった。
「ということは、絶対死ねねーって確率が高くなったな」
レベルはMAXのはずなので、そうそう死ぬようなことはないが、それでもここが現実世界と同じ死の危険があることを知り寒気が走った。
ま、まあ、オレだって伊達にRONで最強キャラって言われてたわけじゃねえんだ。やってやんよ!
意気込みつつ、とりあえずギルド登録を済ませようと受付に近づく。登録をして、クエストを受け、金を稼ぐ必要がある。何といっても、今は無一文なのだから。
しかし受け付けは女の人だ。う~緊張するな。必要以上に何故か美人なので、話しかけるのは少しドギマギする。これがニート生活から脱するための第一歩ということか……。
「……えと、す、すみません、登録したいん……ですけど」
「ありがとうございます。登録について、説明はお受けされますか?」
そこでゲーム時と食い違いがあるかもしれないので、一応説明を受けることにした。
「ギルドへ登録されますと、自動的に世界中にあるギルドへとあなた様の情報が伝達されます」
そこらへんはゲーム時と同じだ。
「“冒険者”にはランクが存在し、下からF・E・D・C・B・A・S・SS・SSSと位置づけされております。最初は誰もがFランクから始まり、実績によって昇格していきます。ランクに応じて受けられるクエストも限られますのでご注意ください。またSランク以上になりますと、様々な特典もございますので、その際はきちんと説明をお受けください」
「は、はい、分かりました。問題ありません」
声が引き攣っていないか不安だ。相手は事務的に対応しているのだから、こちらも事務的に返事をすればいいのだろうが、オレにとってはなかなかに難しいスキルである。
う~、これからこの世界で生きてくんだったら、慣れなきゃいけないよなぁ。
ハードルは高いが、徐々にコミュ力もつけていく必要があるかもしれない。まあ、そう決めても結局はソロ活動に勤しむのがオレなんだけど……。
「クエストを受け、もし失敗されますと、違約金として一万ジェマが必要になります。お払いを拒否されますと、登録抹消になり、三年間は再登録することができません」
「結構シビアなんですね」
知ってたけどね。
「身の丈に合わないクエストを受ける方が多かったので、それを防止させるために設置された規約です」
確かにその規約があれば、自分の実力以上のクエストを受ける人たちも少なくなるだろう。
「パーティ登録についても説明を受けられますか?」
「あ、いいえ。べ、別にいいです。登録をお願いします」
「畏まりました。では――――こちらに血液を染み込ませてください」
受付嬢が差し出してきたのは、テレホンカードのようなものと、小さな針。オレは針で指先を傷つけ血を流し、カードに流していく。
カードと針を受付嬢が受け取り、そのまま奥へ行き、一分ほどしてから戻ってきた。
「これがあなた様の《ギルドカード》になります。紛失されますと、再発行には三千ジェマが必要になりますのでご記憶ください」
「分かりました」
オレが《ギルドカード》を受付嬢から受け取った瞬間、粒子状に変化して消えた。正確に言うと、腰に携帯している小さなバッグに吸い込まれたのだ。それを見ていた受付嬢は、目を見張りながら、
「お、驚きました……、まさか《アイテムボックス》をお持ちだったのですか?」
「へ? い、いえその……まあ、はい」
「かなりレア度が高いはずですのに……もしかして高名な“冒険者”から頂いたのですか?」
「ま、まあそんな感じです、はは」
《アイテムボックス》――所持していると、上限の数だけ、アイテムや装備品などを保管できる便利グッズである。
これは市販されているのではなく、あるクエストを受けて達成しなければ手にできないものなのだ。もちろんオレもクエスト達成者であり、今《ギルドカード》が消えたのも、《アイテムボックス》――腰に携帯している小さなバッグに保管されたからだ。
取り出す時は《ステータス》画面を開いて《アイテム》の欄をクリックして、貴重品の《ギルドカード》をクリックすれば取り出せる。
まあ、そんなことしなくても、確認するだけなら《ギルド》の欄をクリックすればいい。
「《アイテムボックス》を持つ新人さんは珍しいですね。今後の活躍を期待させて頂きます」
「あ、ありがとうございます」
「さっそく何かクエストを受けられますか?」
「は、はい」
「では、あちらの掲示板に張られてあるクエストからお選びください。ですが受けられるのは、Eランクまでです」
オレは返事をしてから掲示板へと向かった。
「う~ん、とりあえず実入りに多いクエストをして金を稼いで、宿を確保しなきゃな」
初日から野宿はちょっと勘弁だ。
いろいろ目を通していくと、
――バタフライ草の採取――
「へぇ、そういやこんなクエストもあったっけなぁ。本当に懐かしいや。なになに、報酬は一輪で三十ジェマか。よし、これにするか」
懐かしさを覚えて即決してしまった。本当は討伐系の方が稼ぐには良いのだが、別にクエストを受けなくとも、モンスターを討伐して、その素材を買い取っても貰えるので、別段討伐系だけに執着する必要はない。
オレは受付嬢にクエストを受諾してもらい、《バタフライ草》の情報を聞いた後にギルドから出た。
だがその時――
「おい、ちょっと待ちな、兄ちゃん」
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