異世界帰りの俺は、スキル『ゲート』で現実世界を楽しむ

十本スイ

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第五話 先輩との何気ない会話を楽しむ

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「やっぱいたなぁ虎さん」
「おお、我が愛しの後輩ではないか! やや、しかも今日の戦利品は見事なものだ!」

 そこにいたのは会長でもある虎さんだった。いつも彼は昼食はここでとるらしい。

「俺もいい?」
「当然だ! 君も会員なのだからね!」

 すでに弁当箱を広げていた虎さんの弁当を見て感嘆する。

「さすがは虎さんの婚約者さんが作った弁当。すげえや」
「アッハッハ! だろう? きっと良いお嫁さんになれるであろうな!」

 と言っているが、その相手はあんただっつうの。まったく、羨ましい限りだ。
 写真では婚約者がどんな人か知っているが、マジで美人でスタイルも良くて、家事も完璧な将来は間違いなく良妻賢母な人である。

 こうやって毎日手の込んだ弁当だって作るんだから大したものだ。同時に愛されているんだなって思うと腹立たしい気持ちにもなるが。

「にしてもゲームの種類も大分増えたよなぁ。よくもまあこんなに買ったもんだ」

 部屋はそれほど広くはないが、俺ら四人くらいなら過ごすには十分だ。
 ただ壁の周りを覆うように立てられた棚には、所狭しと様々なボードゲームが置かれている。

 まだ部費が出ない段階なので、これらほとんどが俺たちが自腹で購入したものだ。
 あと一人部員が入れば、晴れて部活として認定されるのだが、なかなか勧誘が上手くいかない。

 同じゲームなら、テレビゲームやパソコンの方に向かってしまうのだ。

 気持ちは分かるけど、一度体験してもらえばココの良さを存分に理解できると思うんだよなぁ。

「そういや虎さん、しおんの奴、ゲーム作りすっげえ燃えてるよ?」
「おお~、それは楽しみだ!」
「次こそはギャフンって言わせるって張り切ってるな」
「ハッハッハ! 良い傾向だ! 彼女はきっと素晴らしいクリエイターになるだろう! ……ところで一つ気になったのだが、ギャフンってどういう意味なのだろうな?」
「…………確かに」

 そういえばどういう語源からきているのか分からない。
 ギャフン……あまり日本に馴染みのない音ではあるから外国から来たものなのだろうか。

 そんな取り留めもない話をしながら昼食を楽しんでいた時、虎さんが「そういえば」と話し始めた。

「つい先日、この街でバスジャックがあったそうだな。ちょうど我々が熱海へ向かった日のことだ」
「へ、へぇ……珍しいこともあるもんだなぁ」

 それ、俺だよね多分。

「しかも驚くのはたった一人の少年が犯人を取り押さえたという話だ。犯人は銃を持っていたということだが、何とも勇敢な少年であるな」
「ゆ、勇敢……ねぇ」

 俺にとっちゃ復讐心も心のどこかにあっただろうし、勇気とはまた違うような……。

「ただその少年が人間だったのかは甚だ疑問だがな」
「い、嫌だなぁ虎さん! 人間じゃないって、それはさすがに言い過ぎだってば」
「む? そうか? しかし犯人を倒す手際がとても慣れていたようだし。もしかしたら……」

 いつまでもこんな話題をされるのは本意ではないので、

「そ、そうだなぁ。でもまあ無謀っちゃ無謀だけどな! だって下手すりゃ殺されてたかもしれねえし!」

 うん、体験談だから説得力あるぞー。何せそれで一度殺されてんだから。

「確かにな。できれば未来ある若者が、そのような無茶なことをしないことを今後も祈るばかりだ。死んだらそれまでなのだからな」
「そう……だな。虎さんの言う通りだ。俺も気をつけるよ」
「うむ! 我々ボードゲーム同好会のメンバーは全員天寿を全うできるように努めようではないか! ハッハッハ!」

 良かった。これであの事件の関係者ってバレることもないだろう。
 それに虎さんの言う通り、次こそはちゃんと満足のいく人生を送って、それで寿命で死んでいきたい。
 そんな平和な死に方を俺は今度こそ望む。


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