1 / 51
プロローグ
しおりを挟む
俺は【リオンモール】という大型ショッピングモールを一人歩いていた。
特に買い物の予定などはない。ただここを突っ切った方が、俺が通っている大学への近道になるだけだ。
それにもうすぐ夏ということもあって、外は暑いので涼みの意味も兼ねての通行である。
しかし……しかしだ……!
「ねえねえ、次どこ行くぅ?」
「そうだなぁ。映画館でどう?」
「おい、あんま引っ付くなって」
「えーいいじゃーん。嬉しいくせに~」
「ほら、あーん」
「あむ。ん~美味しい~」
右を見ても左を見ても、イチャイチャイチャイチャ……。
どうやら今日は『カップルデイ』というやつらしく、ココには大勢の脳内ピンク野郎どもが溢れ返っているのだ。
「はいはい、羨ましくなんてないですよ。だって俺、草食系だし? いやいやむしろ絶食系だし? 女なんてこっちからお断りだし」
などと誰にも聞かれないように呟くながら歩く姿は、さながら『負け組』と称するのにピッタリかもしれない。
……はぁ、彼女が欲しい。
生まれてこのかた恋人なんてできたことがない。
まあそれもこれも中学の頃に、女に騙されて笑いものにされた経験があり、女を信用できないようになったせいかもしれないが。
それでも……二次元に出てくるような純情で可愛い子が彼女になってくれたらなぁってやっぱ思う。
だって現実世界は……。
「あんもう、今おっぱい触った、エッチー!」
「違うって、ちょっと当たっただけだって」
「なあ、今日このあと俺の家行こうぜ」
「え? う、うん……いい……よ?」
「ねえ……二人っきりになれるとこ行こ?」
「それって誘ってる? しょうがねえなぁ」
…………ああもうっ! 視線だけで人は殺せないかなぁぁぁぁぁぁっ!
このバカップルどもがっ! イチャイチャするなら家かホテル行けや! それとも何か? 人に見せつけて興奮するタイプですか、ああそうですか、変態なんですね!
とは心の中で激昂してはみたものの、今日はカップルたちのための祝宴。つまり俺こそがここではイレギュラーな存在なのである。
ああ、早く出よう、こんなとこ。
自ずと歩幅も大きく、歩く速度も速くなっていく。
するとその時だ。
「――――きゃあぁぁぁぁぁっ!」
突如、上階の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。
いや、女性だけじゃない。男性の声もだ。しかも一人ではなく複数……どんどんその悲鳴が強く多くなっていく。
「な、何だよ一体!?」
思わず足を止めて上を見上げる。
この建物は六階階建てになっていて、この市内では一番の集客率を誇る場所で、連日祭りかと思うくらいの人が通う。
だからこそかあちこちから悲鳴が轟くと、その声音は凄まじい振動を生んでビリビリと床を震わせている。
いや、これは音だけじゃない。大勢の人間が走っているせいもあるか。
すると今度はあらゆる場所から、ガラスを割った音や、物を壊した音などがこだましてくる。
同時に俺がこれから向かう先の通路から、津波のように人がこっちへ向かって押し寄せてきた。
「おいおい、一体何だよ!?」
波に飲まれないように、右脇にある自動販売機と休憩用の椅子が設置されている通路へと身を隠す。
次々と大勢の人たちが、道なりに走り去っていく姿は、まるで何かから逃げているようだった。
途中転倒する人や、我先にと他人を押しのけて前に走る者まで様々だ。
「何でコイツら逃げて……っ!?」
脇道から顔を出して、コイツらが逃げている理由を確かめようとして思わず絶句してしまう。
その視線の先にいたのは――――――――――ドラゴンだった。
特に買い物の予定などはない。ただここを突っ切った方が、俺が通っている大学への近道になるだけだ。
それにもうすぐ夏ということもあって、外は暑いので涼みの意味も兼ねての通行である。
しかし……しかしだ……!
「ねえねえ、次どこ行くぅ?」
「そうだなぁ。映画館でどう?」
「おい、あんま引っ付くなって」
「えーいいじゃーん。嬉しいくせに~」
「ほら、あーん」
「あむ。ん~美味しい~」
右を見ても左を見ても、イチャイチャイチャイチャ……。
どうやら今日は『カップルデイ』というやつらしく、ココには大勢の脳内ピンク野郎どもが溢れ返っているのだ。
「はいはい、羨ましくなんてないですよ。だって俺、草食系だし? いやいやむしろ絶食系だし? 女なんてこっちからお断りだし」
などと誰にも聞かれないように呟くながら歩く姿は、さながら『負け組』と称するのにピッタリかもしれない。
……はぁ、彼女が欲しい。
生まれてこのかた恋人なんてできたことがない。
まあそれもこれも中学の頃に、女に騙されて笑いものにされた経験があり、女を信用できないようになったせいかもしれないが。
それでも……二次元に出てくるような純情で可愛い子が彼女になってくれたらなぁってやっぱ思う。
だって現実世界は……。
「あんもう、今おっぱい触った、エッチー!」
「違うって、ちょっと当たっただけだって」
「なあ、今日このあと俺の家行こうぜ」
「え? う、うん……いい……よ?」
「ねえ……二人っきりになれるとこ行こ?」
「それって誘ってる? しょうがねえなぁ」
…………ああもうっ! 視線だけで人は殺せないかなぁぁぁぁぁぁっ!
このバカップルどもがっ! イチャイチャするなら家かホテル行けや! それとも何か? 人に見せつけて興奮するタイプですか、ああそうですか、変態なんですね!
とは心の中で激昂してはみたものの、今日はカップルたちのための祝宴。つまり俺こそがここではイレギュラーな存在なのである。
ああ、早く出よう、こんなとこ。
自ずと歩幅も大きく、歩く速度も速くなっていく。
するとその時だ。
「――――きゃあぁぁぁぁぁっ!」
突如、上階の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。
いや、女性だけじゃない。男性の声もだ。しかも一人ではなく複数……どんどんその悲鳴が強く多くなっていく。
「な、何だよ一体!?」
思わず足を止めて上を見上げる。
この建物は六階階建てになっていて、この市内では一番の集客率を誇る場所で、連日祭りかと思うくらいの人が通う。
だからこそかあちこちから悲鳴が轟くと、その声音は凄まじい振動を生んでビリビリと床を震わせている。
いや、これは音だけじゃない。大勢の人間が走っているせいもあるか。
すると今度はあらゆる場所から、ガラスを割った音や、物を壊した音などがこだましてくる。
同時に俺がこれから向かう先の通路から、津波のように人がこっちへ向かって押し寄せてきた。
「おいおい、一体何だよ!?」
波に飲まれないように、右脇にある自動販売機と休憩用の椅子が設置されている通路へと身を隠す。
次々と大勢の人たちが、道なりに走り去っていく姿は、まるで何かから逃げているようだった。
途中転倒する人や、我先にと他人を押しのけて前に走る者まで様々だ。
「何でコイツら逃げて……っ!?」
脇道から顔を出して、コイツらが逃げている理由を確かめようとして思わず絶句してしまう。
その視線の先にいたのは――――――――――ドラゴンだった。
10
お気に入りに追加
988
あなたにおすすめの小説
キモオタ レベル0★世界最弱のオタク高校生の僕だけレベルアップ!美女に囲まれハーレム青春物語
さかいおさむ
ファンタジー
街中にダンジョンが現れた現代日本。
人々には戦士としてのレベルが与えられる。
主人公は世界最弱のレベル0。
レベルの低さに絶望していたある日、戦士のレベルの10倍の強さになるというボスが現れる。
世界で倒せるのレベル0の主人公だけ。
ダンジョンで戦うことは諦めていた主人公だが、その日から自分だけがレベルアップできることに。
最強戦士になって、美女の仲間たちとダンジョンの秘密を解き明かす。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
俺の旅の連れは美人奴隷~俺だって異世界に来たのならハーレムを作ってみたい~
藤
ファンタジー
「やめてください」「積極的に行こうよ」「ご主人様ってそういう人だったんだ」様々な女の子とイチャイチャしながら異世界を旅して人生を楽しんでいこう。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる