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 村から出立して二日が経った頃、かなり急いで歩を進めていたこともあり、早くも視線の先に街が見えてきた。
 小高い丘の上から天満と真悟は大きく伸びをしながらこれまでの道程を振り返る。

「それにしてもよぉ、やっぱ天満の《万象網羅》って便利だよな。こうしていつでも食べ物も取り出せるしさ」

 今、二人の手の中には、水分タップリの桃のような果実――《アップリ》があり、それにかぶりつきながら街を遠目に眺めているのだ。

 これまで腹が減れば、何か食べられるモンスターを狩っていたが、都合良く食材が手に入らない時は、【ワンガ】の村を出る時にリードしておいたこの《アップリ》を非常食として口にしていたのだ。

 水分も栄養も豊富なので、非常食としては一番適している食べ物だろう。
 これなら飲み物としても兼任することができるので重宝できる。

《ステータス》

名前:テンマ・ハナサカ   種族:人間  
Lv:12        NEXT:342

《パラメーター》

HP :163/163    MP :88/170

STR:90→105    DEX:93→100
VIT:87→97     AGI:88→95
MND:170→172   LUC:26→26

《スキル》

万象網羅(Lv2)

《特性》

異世界人補正


 ――現在のステータスだ。

 パラメーターの〝→〟は、武具装備の付加による変動数字である。ちなみに運――LUCは日によって勝手に変動するようだ。
 結構レベルを上げたことで、パラメーターもそうだが、何よりも《万象網羅》がレベル2に上がったのは大きかった。

 これでストックが一つ増えて、合計二つのリードが可能になったのである。
 一つは《アップリ》で埋まっているが、もう一つは一応装備している武器(スチールソード)だ。武器を弾かれた時などや、これを復元しまくって売ることも考えて、だ。

 かなり卑怯な金銭の稼ぎ方だが、一つの店で何本も同じものを売ったらさすがに怪しまれるので、精々が三、四本程度だろう。
 まあ、その時は別の何かをリードして売ればいいだけで、これで金には困ることがなくなった。

 ただこの旅で試したことがあり、天満が生物と認定する存在もリード可能だということを知ったのだ。
 しかし生物の場合は人格などなく、人形のようになってしまい、また顕現させていられる時間というのもあって、スライムでも一時間で消えてしまったのだ。

 せっかく旅のお供ペットができたと思って喜んでいたが、ただただ命令を聞くだけのロボットそのもので、何の可愛らしさもなかった。
 なら人はどうなのかと思い、とりあえず真悟を復元してみたが、これまた能面のような表情をした一切自らの意志で喋らない存在が生まれた。
 喋れと命令すれば、まるで機械人形のように片言では喋るみたいではある。

 こちらは僅か三十分ほどで消失。存在の稀少価値などによって、出現させ続けられる時間が決まっているようだ。
 ちなみに真悟をリードしたことにより、彼の恥ずかしい過去なども情報として記憶に刻まれたので、それをもとにからかってやったのだが、人形が消えた瞬間に情報も消えてしまった。

 真悟はホッとしていたが、物凄く残念な気持ちになったのを覚えている。
 ちなみに真悟のステータスだが、カードの表記は本人にしか確認できないので、実際に地面に書いてもらって把握しておいた。

《ステータス》

名前:シンゴ・カイタニ   種族:人間  
Lv:43        NEXT:17890

《パラメーター》

HP :510/510    MP :200/380

STR:276→288    DEX:270→275
VIT:255→275    AGI:248→255
MND:425→427    LUC:38→38

《魔法》

雷魔法(Lv5)

《特性》

異世界人補正



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