40 / 43
第39話 再来
しおりを挟む
「ぐがはぁぁぁっ!?」
明らかにダメージを負っている様子で、岩熊の顔も苦悶に彩られている。しかし井狩の攻撃は止まらずに、そこから烈火のごとく繰り出されていく。
ピンボールのように弾かれては、先回りした井狩に再び殴られ吹き飛ぶ。
この場にいる十束含めた全員が、呆気に取られている。これほどの力を井狩が持っているとは思っていなかったのかもしれない。
あれほど圧倒的だった岩熊を、まるで相手にしない力量を持つ井狩に皆が見惚れてしまっている。
腕や足が変な方向へ曲がり、かつ吐血しながら、今もなお井狩の怒涛の攻撃を受けている岩熊だが、すでに意識はないのか、途中で悲鳴も止まっていた。
最後に岩熊の顎をアッパーで打ち抜くと、彼はそのまま放物線を描きながら宙を飛び、無防備に大地へと落下した。
(と、とんでもねえや、この人……!?)
十束も言葉が出ないほど衝撃を受けていた。強いらしいということは、海東からも聞いていたし、設定でも知っていたが、これほどの実力を持っていたとは驚きしかない。
(しかもまだゲームが始まって間もないにもかかわらず……この人の戦闘センスはズバ抜けてる)
確か過去に傭兵をやっていたという設定はあった。恐らくは、その部隊でも傑物ではあったのだろう。そんな人物が純粋な力を増幅させる能力を得ている。
まさに〝鬼に金棒〟というわけだ。
「はあ……はあはあ……げほっ、げほっ」
及川たちも呆然としていた矢先、勝者であるはずの井狩が、何故か顔を青ざめ血を吐いて片膝をついたのである。
「「井狩さんっ!」」
当然とばかりに、井狩が心配で及川と鈴村が駆け寄る。
十束も、綿本たち非戦闘者と一緒に彼に近づいていく。
「だ、大丈夫……さ。少し……休めば……っ」
見れば、彼の身体が痙攣しており、ところどころ皮膚が裂けて血が噴き出していた。
岩熊の攻撃を全弾かわしていたにもかかわらず、これはどういうことなのか。それはこの場にいる十束と井狩しか分からないだろう。
(いくら戦闘センスがあっても、反動だけはどうしようもないってわけか)
強い力には必ず反動というものがある。
特に井狩のソレは、全身をありえないほど強化するもの。一時的に高ランクモンスターでさえ凌駕する肉体を得られるが、能力が切れると反動で身体に相応の負荷が襲う。
自身の力を二倍加する《倍力》というBスキルだが、それだけならまだしも、《十倍力》という十倍加するスキルも使ったのだ。負荷は相当なものだろう。
レベルがもっと高ければ、リスクも軽減できるが、さすがにこの短期間では、《十倍力》の負荷は耐えられなかったのだ。
「無茶をし過ぎですよ、井狩さん……!」
「はは……悪いね、及川くん。けれど……こうでもしなければ、きっと奴は倒せなかった」
及川に肩を貸してもらって立ち上がる井狩は苦笑交じりだ。
確かに《倍力》程度では、さすがに岩熊を倒すまでは至らなかったかもしれない。
「鈴村さん……はあはあ……申し訳ないが、このあとの指揮は……任せてもいいかい?」
「任せな! 井狩さんのお蔭で大分休めたし、それに……死んだ奴らも弔ってやらないといけないしね」
いろいろギリギリな場面はあったものの、どうにか最小限の犠牲で仲間を救えたようだ。海東も命には別条はないようだし、綿本も無事に取り戻せて十束もホッとしていた。
だが、皆が安堵したその時だ。
まるでその場の重力が増したかのような負のプレッシャーが全員を襲った。
十束の嫌な予感が爆発的に膨らみ、それは現実と化す。
近場の空間が歪み、そこから巨大な存在が姿を現した。
そして、十束はソイツの名を思わず口にする。
「…………………………オーガ」
明らかにダメージを負っている様子で、岩熊の顔も苦悶に彩られている。しかし井狩の攻撃は止まらずに、そこから烈火のごとく繰り出されていく。
ピンボールのように弾かれては、先回りした井狩に再び殴られ吹き飛ぶ。
この場にいる十束含めた全員が、呆気に取られている。これほどの力を井狩が持っているとは思っていなかったのかもしれない。
あれほど圧倒的だった岩熊を、まるで相手にしない力量を持つ井狩に皆が見惚れてしまっている。
腕や足が変な方向へ曲がり、かつ吐血しながら、今もなお井狩の怒涛の攻撃を受けている岩熊だが、すでに意識はないのか、途中で悲鳴も止まっていた。
最後に岩熊の顎をアッパーで打ち抜くと、彼はそのまま放物線を描きながら宙を飛び、無防備に大地へと落下した。
(と、とんでもねえや、この人……!?)
十束も言葉が出ないほど衝撃を受けていた。強いらしいということは、海東からも聞いていたし、設定でも知っていたが、これほどの実力を持っていたとは驚きしかない。
(しかもまだゲームが始まって間もないにもかかわらず……この人の戦闘センスはズバ抜けてる)
確か過去に傭兵をやっていたという設定はあった。恐らくは、その部隊でも傑物ではあったのだろう。そんな人物が純粋な力を増幅させる能力を得ている。
まさに〝鬼に金棒〟というわけだ。
「はあ……はあはあ……げほっ、げほっ」
及川たちも呆然としていた矢先、勝者であるはずの井狩が、何故か顔を青ざめ血を吐いて片膝をついたのである。
「「井狩さんっ!」」
当然とばかりに、井狩が心配で及川と鈴村が駆け寄る。
十束も、綿本たち非戦闘者と一緒に彼に近づいていく。
「だ、大丈夫……さ。少し……休めば……っ」
見れば、彼の身体が痙攣しており、ところどころ皮膚が裂けて血が噴き出していた。
岩熊の攻撃を全弾かわしていたにもかかわらず、これはどういうことなのか。それはこの場にいる十束と井狩しか分からないだろう。
(いくら戦闘センスがあっても、反動だけはどうしようもないってわけか)
強い力には必ず反動というものがある。
特に井狩のソレは、全身をありえないほど強化するもの。一時的に高ランクモンスターでさえ凌駕する肉体を得られるが、能力が切れると反動で身体に相応の負荷が襲う。
自身の力を二倍加する《倍力》というBスキルだが、それだけならまだしも、《十倍力》という十倍加するスキルも使ったのだ。負荷は相当なものだろう。
レベルがもっと高ければ、リスクも軽減できるが、さすがにこの短期間では、《十倍力》の負荷は耐えられなかったのだ。
「無茶をし過ぎですよ、井狩さん……!」
「はは……悪いね、及川くん。けれど……こうでもしなければ、きっと奴は倒せなかった」
及川に肩を貸してもらって立ち上がる井狩は苦笑交じりだ。
確かに《倍力》程度では、さすがに岩熊を倒すまでは至らなかったかもしれない。
「鈴村さん……はあはあ……申し訳ないが、このあとの指揮は……任せてもいいかい?」
「任せな! 井狩さんのお蔭で大分休めたし、それに……死んだ奴らも弔ってやらないといけないしね」
いろいろギリギリな場面はあったものの、どうにか最小限の犠牲で仲間を救えたようだ。海東も命には別条はないようだし、綿本も無事に取り戻せて十束もホッとしていた。
だが、皆が安堵したその時だ。
まるでその場の重力が増したかのような負のプレッシャーが全員を襲った。
十束の嫌な予感が爆発的に膨らみ、それは現実と化す。
近場の空間が歪み、そこから巨大な存在が姿を現した。
そして、十束はソイツの名を思わず口にする。
「…………………………オーガ」
0
お気に入りに追加
241
あなたにおすすめの小説
虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~
すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》
猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。
不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。
何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。
ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。
人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。
そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。
男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。
そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。
(
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~
十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる