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第57話 可愛い幼女に遭遇した件について
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――翌日。
起床したら午前八時前だった。昨日早く就寝したから、こんな時間に起きたのだろう。
いつもなら十時前くらいまでは寝ているのに。下手すれば昼を回る。
俺は朝食に缶詰を食いながら、自身のステータスを再度確認していた。
その流れでヒーロのも確認したが、いつの間にか12レベルになっていて、スキルポイントも貯まっていたのだ。
「う~ん、《収納》をランクアップしたいけどまだポイントが足りねえな。……貯めとくか」
俺は腹ごなしをしたあと、今度はその足で電化製品があるフロアへと向かう。
何か役に立てられそうなものを、幾つかヒーロに収納してもらっておく。
その足でデパートの外へ出ると、朝にもかかわらず強い日差しが俺たちを照らす。
「さてと……やっぱネットはダメか」
一日経ったらあるいは、と期待はしていたが。
「今日はどうっすかなぁ……」
例のダンジョンに挑むのはまだ無理なのは確定だ。ただ大規模ダンジョンの情報収集という面においてはクリアできたので、もうこのまま家に戻ってもいいが。
ただ電話やネットが使えなくなった以上、四奈川たちが俺の家に直接来る可能性が非常に高い。もしかしたらもう入り浸っている危険性だってある。
そこにもしヒオナさんまで来て、さらにはあの一ノ鍵が来たら……。
そう思うだけで身震いしてくる。
「どうしたもんかねぇ。……しばらく旅を楽しむか?」
こうやってのんびり旅行するのも良いかもしれないしな。何だかんだいって自給自足も問題なく行えてるし。まあ商品を盗んでるだけだけど。
もし逮捕でもされたら余罪がどんどん増えていくなこりゃ。
ダンジョンに立ち入った犯罪者だし、金も払わずに商品を頂いてる窃盗犯だしな。
しかし生き抜くためには仕方ない。神様だって許してくれるはず。……多分。
「ヒーロ、どっか行きたいとこあるか?」
聞いてはみたものの、器用に身体を使って頭上にハテナを浮かび上がらせる仕草は可愛らしい。
まあこの子に地理の知識があるわけないけど。
「じゃあ観光名所にでも行ってみるか? せっかく群馬まで来たんだしな」
帰るにしても有意義な時間を過ごしてからでも遅くない。
俺はそう判断して、群馬旅行を満喫することにした…………のだが。
「……ん?」
少し目の先の路肩で子猫がトボトボと歩いている姿を見た。
「親と逸れたのか?」
ニャーニャーとか細い声を出しながら歩いている。
親はどこにいるんだよと思いながら見ていると、どこからかカラスが飛んできて子猫を襲い始めたのだ。
体格差もあるし、腹を空かせているのか動きが鈍い子猫は、カラスの嘴に突かれて何度も地面を転がる。
「ったく、見てらんねえな!」
俺はサバイバルナイフを手に持って「おらぁぁぁっ!」と声を上げて振り回しながら接近する。
カラスはさすがに俺と戦うことはせずに、そのまま飛び去っていく。
しかし子猫は度重なる攻撃のせいか、ぐったりと横たわっていた。
「マズイなこりゃ。えっと……」
俺はヒーロから包帯と傷薬を出してもらうと、子猫の傷を手当し始めた。
一通り治療し終わると、俺の手をペロペロと舐めてきたので……。
「やっぱ腹減ってんのか?」
こんな小さいんだから無理もないかと思い、缶詰のツナを与えてやった。
美味そうに食べている様子を見ていると、何だかほっこりする。
元々動物は好きな方だし、特に猫は気まぐれで孤高な感じがしてどこか俺と似ているから大好きだ。
しばらくそうしていると、どこからかニャーという鳴き声が聞こえた。
見るとまたも猫が立ってこちらを見ていたので、俺はもしかしたらと思い、少し子猫から距離を取る。
すると大きな猫がゆっくりと子猫の方へ行き、子猫もまた甘えるような声で鳴く。
二匹でツナ缶を食べ終わると、そのまま猫が子猫の首根っこを噛んで去って行った。
「親が見つけてくれて良かったな、あの子猫」
さすがに連れ帰るわけにはいかないしホッとした。
するとその時である。
「――そこの兄ちゃん、こんなとこで何してるん?」
不意に背後から聞こえてきた声に、思わず「おわぁっ!?」と声を上げて飛び退いてしまった。
そこに立っていたのは、紙袋を抱えた一人の少女だった。年の頃は七歳くらい、だろうか?
「わっ、そんな大声出さんでよ! ビックリすっから!」
「あ、悪い!」
だったら気配を消して近づいて来ないで欲しい。
まあヒーロが警戒していないということは、悪意を持って近づいてきているわけじゃないと思うが。
「まだこんな場所をウロウロしてる人がいるんか。危ないよ?」
「あー忠告ありがとうございます?」
「あはは、何で疑問形なん!」
朗らかに笑う少女。そんな無垢な笑顔を見ると、俺の強張った表情も少し緩む。
サバサバした雰囲気の、ショートカットの女の子。華奢な体型ではあるが、健康的な肌に人懐っこそうな大きい瞳を持つ美少女なのは間違いない。少女というより幼女ではあるが。
「もしかしてよそから来た人なん?」
「え~っと……まあ」
「へぇ~、どっから来たん?」
この子、ずいぶんと警戒が緩いな。初めて会う男子だぞ俺。しかも年上。こんな世の中なのに。
美少女なんて性欲に飢えた男どもにとっちゃ極上の餌でしかない。
そんなアホどもの犠牲者になった女性も少なくはないだろう。この子のようなロリっ子を狙う変態だっているんだから。危機的意識が低いようで、逆に心配になるほどだ。
「俺は東京から。君は? 地元の子?」
「うん、そだよ! けどこんな状況なのによりも寄って何で群馬に?」
「あー知り合いがいてな。連絡が取れなくなったから直接会いにきたってわけ」
そんな知り合いなんていませんけどね。
「そうなん、それは心配だよね……」
マジで心配してくれているようで、ちょっと罪悪感が……。
「……あ、そうだ! もし良かったらウチんとこに来ん?」
「へ?」
「今ちょっとバタバタしてるけど、もしかしたら兄ちゃんの知り合いのことを聞けるかもしれんし!」
「い、いや……」
「ほらほら! 君、悪い人じゃなさそうだし、案内してあげるから!」
そう言ってガシッと俺の手を握ってくる。
あ、柔らかい……じゃなくて、どうするんだ俺!?
まあこの子も悪人には見えないし、可愛いしついて行ってもいいかもしれない。可愛いは関係ないかもだけど。
ヒーロは咄嗟に俺の背中に飛び乗って、そのまま服の中に入っていく。指示も無しに見つからないように動けるとは、さすがは俺の使い魔!
そうして俺は手を引っ張られてこの子について行くことにしたのだが……。
「あ、そういや自己紹介がまだだったね! ウチはね、八凪莱夢っていうんよ! 気軽に莱夢でいいから!」
「あ、ああ、俺は有野六門。好きに呼んでくれ」
「じゃあろっくんだ! よろしくね!」
ライムかぁ。俺と同じで変わった名前だなぁ。
それに苗字はヤナギ…………どっかで聞いた気がするが、まあありふれた名前だし、別に気にすることも無かった。
こうして俺は突然遭遇した美少女ならぬ美幼女のライムちゃんに連れられて、彼女の居場所まで向かっていく。
起床したら午前八時前だった。昨日早く就寝したから、こんな時間に起きたのだろう。
いつもなら十時前くらいまでは寝ているのに。下手すれば昼を回る。
俺は朝食に缶詰を食いながら、自身のステータスを再度確認していた。
その流れでヒーロのも確認したが、いつの間にか12レベルになっていて、スキルポイントも貯まっていたのだ。
「う~ん、《収納》をランクアップしたいけどまだポイントが足りねえな。……貯めとくか」
俺は腹ごなしをしたあと、今度はその足で電化製品があるフロアへと向かう。
何か役に立てられそうなものを、幾つかヒーロに収納してもらっておく。
その足でデパートの外へ出ると、朝にもかかわらず強い日差しが俺たちを照らす。
「さてと……やっぱネットはダメか」
一日経ったらあるいは、と期待はしていたが。
「今日はどうっすかなぁ……」
例のダンジョンに挑むのはまだ無理なのは確定だ。ただ大規模ダンジョンの情報収集という面においてはクリアできたので、もうこのまま家に戻ってもいいが。
ただ電話やネットが使えなくなった以上、四奈川たちが俺の家に直接来る可能性が非常に高い。もしかしたらもう入り浸っている危険性だってある。
そこにもしヒオナさんまで来て、さらにはあの一ノ鍵が来たら……。
そう思うだけで身震いしてくる。
「どうしたもんかねぇ。……しばらく旅を楽しむか?」
こうやってのんびり旅行するのも良いかもしれないしな。何だかんだいって自給自足も問題なく行えてるし。まあ商品を盗んでるだけだけど。
もし逮捕でもされたら余罪がどんどん増えていくなこりゃ。
ダンジョンに立ち入った犯罪者だし、金も払わずに商品を頂いてる窃盗犯だしな。
しかし生き抜くためには仕方ない。神様だって許してくれるはず。……多分。
「ヒーロ、どっか行きたいとこあるか?」
聞いてはみたものの、器用に身体を使って頭上にハテナを浮かび上がらせる仕草は可愛らしい。
まあこの子に地理の知識があるわけないけど。
「じゃあ観光名所にでも行ってみるか? せっかく群馬まで来たんだしな」
帰るにしても有意義な時間を過ごしてからでも遅くない。
俺はそう判断して、群馬旅行を満喫することにした…………のだが。
「……ん?」
少し目の先の路肩で子猫がトボトボと歩いている姿を見た。
「親と逸れたのか?」
ニャーニャーとか細い声を出しながら歩いている。
親はどこにいるんだよと思いながら見ていると、どこからかカラスが飛んできて子猫を襲い始めたのだ。
体格差もあるし、腹を空かせているのか動きが鈍い子猫は、カラスの嘴に突かれて何度も地面を転がる。
「ったく、見てらんねえな!」
俺はサバイバルナイフを手に持って「おらぁぁぁっ!」と声を上げて振り回しながら接近する。
カラスはさすがに俺と戦うことはせずに、そのまま飛び去っていく。
しかし子猫は度重なる攻撃のせいか、ぐったりと横たわっていた。
「マズイなこりゃ。えっと……」
俺はヒーロから包帯と傷薬を出してもらうと、子猫の傷を手当し始めた。
一通り治療し終わると、俺の手をペロペロと舐めてきたので……。
「やっぱ腹減ってんのか?」
こんな小さいんだから無理もないかと思い、缶詰のツナを与えてやった。
美味そうに食べている様子を見ていると、何だかほっこりする。
元々動物は好きな方だし、特に猫は気まぐれで孤高な感じがしてどこか俺と似ているから大好きだ。
しばらくそうしていると、どこからかニャーという鳴き声が聞こえた。
見るとまたも猫が立ってこちらを見ていたので、俺はもしかしたらと思い、少し子猫から距離を取る。
すると大きな猫がゆっくりと子猫の方へ行き、子猫もまた甘えるような声で鳴く。
二匹でツナ缶を食べ終わると、そのまま猫が子猫の首根っこを噛んで去って行った。
「親が見つけてくれて良かったな、あの子猫」
さすがに連れ帰るわけにはいかないしホッとした。
するとその時である。
「――そこの兄ちゃん、こんなとこで何してるん?」
不意に背後から聞こえてきた声に、思わず「おわぁっ!?」と声を上げて飛び退いてしまった。
そこに立っていたのは、紙袋を抱えた一人の少女だった。年の頃は七歳くらい、だろうか?
「わっ、そんな大声出さんでよ! ビックリすっから!」
「あ、悪い!」
だったら気配を消して近づいて来ないで欲しい。
まあヒーロが警戒していないということは、悪意を持って近づいてきているわけじゃないと思うが。
「まだこんな場所をウロウロしてる人がいるんか。危ないよ?」
「あー忠告ありがとうございます?」
「あはは、何で疑問形なん!」
朗らかに笑う少女。そんな無垢な笑顔を見ると、俺の強張った表情も少し緩む。
サバサバした雰囲気の、ショートカットの女の子。華奢な体型ではあるが、健康的な肌に人懐っこそうな大きい瞳を持つ美少女なのは間違いない。少女というより幼女ではあるが。
「もしかしてよそから来た人なん?」
「え~っと……まあ」
「へぇ~、どっから来たん?」
この子、ずいぶんと警戒が緩いな。初めて会う男子だぞ俺。しかも年上。こんな世の中なのに。
美少女なんて性欲に飢えた男どもにとっちゃ極上の餌でしかない。
そんなアホどもの犠牲者になった女性も少なくはないだろう。この子のようなロリっ子を狙う変態だっているんだから。危機的意識が低いようで、逆に心配になるほどだ。
「俺は東京から。君は? 地元の子?」
「うん、そだよ! けどこんな状況なのによりも寄って何で群馬に?」
「あー知り合いがいてな。連絡が取れなくなったから直接会いにきたってわけ」
そんな知り合いなんていませんけどね。
「そうなん、それは心配だよね……」
マジで心配してくれているようで、ちょっと罪悪感が……。
「……あ、そうだ! もし良かったらウチんとこに来ん?」
「へ?」
「今ちょっとバタバタしてるけど、もしかしたら兄ちゃんの知り合いのことを聞けるかもしれんし!」
「い、いや……」
「ほらほら! 君、悪い人じゃなさそうだし、案内してあげるから!」
そう言ってガシッと俺の手を握ってくる。
あ、柔らかい……じゃなくて、どうするんだ俺!?
まあこの子も悪人には見えないし、可愛いしついて行ってもいいかもしれない。可愛いは関係ないかもだけど。
ヒーロは咄嗟に俺の背中に飛び乗って、そのまま服の中に入っていく。指示も無しに見つからないように動けるとは、さすがは俺の使い魔!
そうして俺は手を引っ張られてこの子について行くことにしたのだが……。
「あ、そういや自己紹介がまだだったね! ウチはね、八凪莱夢っていうんよ! 気軽に莱夢でいいから!」
「あ、ああ、俺は有野六門。好きに呼んでくれ」
「じゃあろっくんだ! よろしくね!」
ライムかぁ。俺と同じで変わった名前だなぁ。
それに苗字はヤナギ…………どっかで聞いた気がするが、まあありふれた名前だし、別に気にすることも無かった。
こうして俺は突然遭遇した美少女ならぬ美幼女のライムちゃんに連れられて、彼女の居場所まで向かっていく。
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