15 / 28
14
しおりを挟む
――魔力。それはアニメやゲームなどではありふれた存在だ。そしてその不可思議なエネルギーを利用して、ある特別な力を発揮することができる。
それが――魔法。
前の世界でも、誰一人使えはしないものではあっただろうが、人類のほぼ全員がその言葉くらいは認識していたであろう有名ワード。
そしてその存在を知った誰もが、一度は使ってみたいと思ったことだろう。
かくいう悟円だってその内の一人だ。
実際中学生の時には、頑張ればいつか使えるのではと内心思っていたこともあった。思い返せば恥ずかしい過去である。
しかし今生では、その過去を現実と化すことが可能となっていた。
何故急にこのようなことを考えたのか。それは目の前のテレビで、ちょうど魔法少女アニメが流れていたからだ。
今日も何事もなく幼稚園から帰ってきたのだが、何故か自分は愛原家のリビングに座っている。
隣にはチョコンと居座り、コップに入ったイチゴジュースを飲みながら、テレビを凝視している空絵がいた。
少し脇見をすれば、キッチンのところで夕食の準備をしている佳菜絵もいる。
さて、この状況はどういうことか。別に引っ張るようなことではないので、簡単に説明する。
団地まで四人一緒に帰ってきたのはいいが、不意に母が買い出しをしなければならないことを思い出したのだ。悟円は面倒臭かったので、家で待っていると言ったが、それは心配だからと愛原家に預けられたのである。
そうして母が戻ってくるまでここにお世話になっているのだが、いつもこの時間にやっている魔法少女アニメを一緒に観ようと空絵に頼まれ、現在に至っているというわけだ。
だから魔法を認識し、自分の前世の一つであった〝魔法使い〟のことを思い出していた。
(けど魔法っていっても、あまり優秀じゃなかったみたいだけど)
前世では達人級の能力者もいたが、その逆に微妙な練度しか持たない能力者もいた。
特に才能に比例するような能力では、努力だけではどうしようもなかったりするので、うだつが上がらないまま亡くなっている人生もあったのだ。
そしてその一つが魔法使いともいえるかもしれない。
少なくとも前世の世界では、優秀な魔法使いというのは、突出した火力を有する魔法を扱える者のことを言った。
魔法には下級、中級、上級、最上級とあり、上級以上を扱える者は少なく、だからこそ扱える者は世界において優遇され誰からも認められていた。
そんな中、悟円の前世は下級しか扱えず、どれだけ修行しても中級以上を習得することはできなかった。当然落ちこぼれ呼ばわりされ、イジメにもあったりしていたのである。
(使える属性はいっぱいあったんだけどなぁ)
魔法には、火、風、水、土、雷、氷、闇、光の八属性が存在し、生まれつき扱える属性の種類は決まっている。一般魔法使いは一~二属性で下級から中級までを扱え、一流は二~三属性で上級まで扱え、超一流ともなれば三~四属性で最上級まで扱える。
悟円の前世は、下級までしか扱えなかったが、すべての属性に適性があったのだ。とはいっても下級というのは戦闘でも初期レベルでしか通じず、少しレベルの高いダンジョン攻略などでは、囮くらいしか役に立つことはなかった。
さらに攻略のレベルが上がると、もうただの足手纏いだ。下級の魔法など通じるモンスターなどいない。だからそれまで所属していたパーティも追放され、最後には騙されて難関ダンジョンでモンスターの餌にされそのまま……という非業の死を遂げた。
(どうでもいいけど、僕の前世って騙されたり裏切られたりされるの多くない?)
こうして俯瞰的に見ると、何故そんな簡単に騙されるのか不思議で仕方ないが、もし自分ならと考えると、やはり相手を信じて裏切られる可能性が高いのだと思ってしまう。
何故なら前世のどれも、一度は信じた存在に裏切られている場合が多いのだ。友達、仲間、同志など、呼び方は違えど信頼をしていた相手なのだ。
今の悟円は、そういう多くの騙され方を知ることができているから対処などを思いつくが、当時の自分は完全に相手を信じ切っているのだ。少しも疑いすらせずに。そのことからも人が良いというか、元々騙されやすい質なのだろう。
自分で自分を分析しているみたいで恥ずかしい気持ちしかないが。同時に情けない。
(今度の人生はもう少し人を見る目を養わないとなぁ)
あと疑うということをするべきだろうと自己を改めることを決めた。
それはそうとして、今は魔法のことだ。
テレビの中では、普通にしか見えない少女が煌びやかな魔法装束を纏った変身をして、手に持ったステッキで敵に向けて魔法を放っている。
(いつも思うけど、何で敵って変身シーンを黙って見てるんだろうなぁ)
きっとそう思っているのは自分だけではないはずだと悟円は思う。
ただそれは魔法少女に限らず、特撮系とかロボットものも変形や合体時とかの度にそう思うが。
(アニメとかだとタブーなんだろうけど、現実だったら絶対にそこは狙い目だよなぁ)
何せ隙だらけなのだ。命がかかっている戦いで、わざわざ相手が強くなるのを待つなんて馬鹿らしいとしか思えない。
(ま、そんなことを考えてアニメを観るなんて、それこそ馬鹿らしいのかもしれないけど)
チラリと横を見ると、若干キラキラした眼差しで魔法少女を見つめている空絵が目に映る。
それが――魔法。
前の世界でも、誰一人使えはしないものではあっただろうが、人類のほぼ全員がその言葉くらいは認識していたであろう有名ワード。
そしてその存在を知った誰もが、一度は使ってみたいと思ったことだろう。
かくいう悟円だってその内の一人だ。
実際中学生の時には、頑張ればいつか使えるのではと内心思っていたこともあった。思い返せば恥ずかしい過去である。
しかし今生では、その過去を現実と化すことが可能となっていた。
何故急にこのようなことを考えたのか。それは目の前のテレビで、ちょうど魔法少女アニメが流れていたからだ。
今日も何事もなく幼稚園から帰ってきたのだが、何故か自分は愛原家のリビングに座っている。
隣にはチョコンと居座り、コップに入ったイチゴジュースを飲みながら、テレビを凝視している空絵がいた。
少し脇見をすれば、キッチンのところで夕食の準備をしている佳菜絵もいる。
さて、この状況はどういうことか。別に引っ張るようなことではないので、簡単に説明する。
団地まで四人一緒に帰ってきたのはいいが、不意に母が買い出しをしなければならないことを思い出したのだ。悟円は面倒臭かったので、家で待っていると言ったが、それは心配だからと愛原家に預けられたのである。
そうして母が戻ってくるまでここにお世話になっているのだが、いつもこの時間にやっている魔法少女アニメを一緒に観ようと空絵に頼まれ、現在に至っているというわけだ。
だから魔法を認識し、自分の前世の一つであった〝魔法使い〟のことを思い出していた。
(けど魔法っていっても、あまり優秀じゃなかったみたいだけど)
前世では達人級の能力者もいたが、その逆に微妙な練度しか持たない能力者もいた。
特に才能に比例するような能力では、努力だけではどうしようもなかったりするので、うだつが上がらないまま亡くなっている人生もあったのだ。
そしてその一つが魔法使いともいえるかもしれない。
少なくとも前世の世界では、優秀な魔法使いというのは、突出した火力を有する魔法を扱える者のことを言った。
魔法には下級、中級、上級、最上級とあり、上級以上を扱える者は少なく、だからこそ扱える者は世界において優遇され誰からも認められていた。
そんな中、悟円の前世は下級しか扱えず、どれだけ修行しても中級以上を習得することはできなかった。当然落ちこぼれ呼ばわりされ、イジメにもあったりしていたのである。
(使える属性はいっぱいあったんだけどなぁ)
魔法には、火、風、水、土、雷、氷、闇、光の八属性が存在し、生まれつき扱える属性の種類は決まっている。一般魔法使いは一~二属性で下級から中級までを扱え、一流は二~三属性で上級まで扱え、超一流ともなれば三~四属性で最上級まで扱える。
悟円の前世は、下級までしか扱えなかったが、すべての属性に適性があったのだ。とはいっても下級というのは戦闘でも初期レベルでしか通じず、少しレベルの高いダンジョン攻略などでは、囮くらいしか役に立つことはなかった。
さらに攻略のレベルが上がると、もうただの足手纏いだ。下級の魔法など通じるモンスターなどいない。だからそれまで所属していたパーティも追放され、最後には騙されて難関ダンジョンでモンスターの餌にされそのまま……という非業の死を遂げた。
(どうでもいいけど、僕の前世って騙されたり裏切られたりされるの多くない?)
こうして俯瞰的に見ると、何故そんな簡単に騙されるのか不思議で仕方ないが、もし自分ならと考えると、やはり相手を信じて裏切られる可能性が高いのだと思ってしまう。
何故なら前世のどれも、一度は信じた存在に裏切られている場合が多いのだ。友達、仲間、同志など、呼び方は違えど信頼をしていた相手なのだ。
今の悟円は、そういう多くの騙され方を知ることができているから対処などを思いつくが、当時の自分は完全に相手を信じ切っているのだ。少しも疑いすらせずに。そのことからも人が良いというか、元々騙されやすい質なのだろう。
自分で自分を分析しているみたいで恥ずかしい気持ちしかないが。同時に情けない。
(今度の人生はもう少し人を見る目を養わないとなぁ)
あと疑うということをするべきだろうと自己を改めることを決めた。
それはそうとして、今は魔法のことだ。
テレビの中では、普通にしか見えない少女が煌びやかな魔法装束を纏った変身をして、手に持ったステッキで敵に向けて魔法を放っている。
(いつも思うけど、何で敵って変身シーンを黙って見てるんだろうなぁ)
きっとそう思っているのは自分だけではないはずだと悟円は思う。
ただそれは魔法少女に限らず、特撮系とかロボットものも変形や合体時とかの度にそう思うが。
(アニメとかだとタブーなんだろうけど、現実だったら絶対にそこは狙い目だよなぁ)
何せ隙だらけなのだ。命がかかっている戦いで、わざわざ相手が強くなるのを待つなんて馬鹿らしいとしか思えない。
(ま、そんなことを考えてアニメを観るなんて、それこそ馬鹿らしいのかもしれないけど)
チラリと横を見ると、若干キラキラした眼差しで魔法少女を見つめている空絵が目に映る。
10
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ほぼ不滅、『残機10億』のスキル無双 ~このダンジョン都市でゾンビって呼ばれてます。~
十本スイ
ファンタジー
地球にダンジョンが誕生して二十数年が経った。宇宙開発に心血を注いでいた各国だったが、この大事件が勃発してからというものの、こぞってダンジョン攻略に乗り出すことになったのである。何故なら人間の中には、魔法に目覚める者が現れ、ダンジョンの中には、人類が欲して止まない未知のエネルギー物質なども存在したからだ。故にダンジョンを攻略する者――冒険者の誕生を国は歓迎した。その中で、地村十利(ちむらじゅうり)もまた冒険者になるべく、ダンジョン都市へと足を踏み入れることになった。だがその理由は、地位や名誉ではない。ただ一つ――借金を返すためである。しかもその金額は何と――〝十億〟。加えて、そのすべてはダメ親父から背負わされたものだった。冒険者になれば稼げる。夢の職業だ。その一縷の望みをかけて冒険者登録に向かうも、自分には一切の魔力がなく魔法が使えない事実が判明してしまう。十利は絶望する。だがそんな十利にも、まだ残された希望があった。ステータス表記を見ると、稀にしか持たないとされるスキルが存在したのだ。しかもそのさらに稀少度の高い〝ユニークスキル〟。ただこのスキルの名前は『残機十億』というよく分からないものだった。借金と被っているし、嫌なシンクロだと思っていた十利だったが、このスキルがまた無敵過ぎる能力を持っていたのである。そしてそのスキルのせいで、十利は〝ゾンビ〟と呼ばれることになっていく。これは一人の不運過ぎる少年が、父親の借金を返済するために稼ぎまくりながら、将来の嫁さんを見つける物語である。

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww
刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。
さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。
という感じの話です。
草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。
小説の書き方あんまり分かってません。
表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる