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――魔力。それはアニメやゲームなどではありふれた存在だ。そしてその不可思議なエネルギーを利用して、ある特別な力を発揮することができる。
それが――魔法。
前の世界でも、誰一人使えはしないものではあっただろうが、人類のほぼ全員がその言葉くらいは認識していたであろう有名ワード。
そしてその存在を知った誰もが、一度は使ってみたいと思ったことだろう。
かくいう悟円だってその内の一人だ。
実際中学生の時には、頑張ればいつか使えるのではと内心思っていたこともあった。思い返せば恥ずかしい過去である。
しかし今生では、その過去を現実と化すことが可能となっていた。
何故急にこのようなことを考えたのか。それは目の前のテレビで、ちょうど魔法少女アニメが流れていたからだ。
今日も何事もなく幼稚園から帰ってきたのだが、何故か自分は愛原家のリビングに座っている。
隣にはチョコンと居座り、コップに入ったイチゴジュースを飲みながら、テレビを凝視している空絵がいた。
少し脇見をすれば、キッチンのところで夕食の準備をしている佳菜絵もいる。
さて、この状況はどういうことか。別に引っ張るようなことではないので、簡単に説明する。
団地まで四人一緒に帰ってきたのはいいが、不意に母が買い出しをしなければならないことを思い出したのだ。悟円は面倒臭かったので、家で待っていると言ったが、それは心配だからと愛原家に預けられたのである。
そうして母が戻ってくるまでここにお世話になっているのだが、いつもこの時間にやっている魔法少女アニメを一緒に観ようと空絵に頼まれ、現在に至っているというわけだ。
だから魔法を認識し、自分の前世の一つであった〝魔法使い〟のことを思い出していた。
(けど魔法っていっても、あまり優秀じゃなかったみたいだけど)
前世では達人級の能力者もいたが、その逆に微妙な練度しか持たない能力者もいた。
特に才能に比例するような能力では、努力だけではどうしようもなかったりするので、うだつが上がらないまま亡くなっている人生もあったのだ。
そしてその一つが魔法使いともいえるかもしれない。
少なくとも前世の世界では、優秀な魔法使いというのは、突出した火力を有する魔法を扱える者のことを言った。
魔法には下級、中級、上級、最上級とあり、上級以上を扱える者は少なく、だからこそ扱える者は世界において優遇され誰からも認められていた。
そんな中、悟円の前世は下級しか扱えず、どれだけ修行しても中級以上を習得することはできなかった。当然落ちこぼれ呼ばわりされ、イジメにもあったりしていたのである。
(使える属性はいっぱいあったんだけどなぁ)
魔法には、火、風、水、土、雷、氷、闇、光の八属性が存在し、生まれつき扱える属性の種類は決まっている。一般魔法使いは一~二属性で下級から中級までを扱え、一流は二~三属性で上級まで扱え、超一流ともなれば三~四属性で最上級まで扱える。
悟円の前世は、下級までしか扱えなかったが、すべての属性に適性があったのだ。とはいっても下級というのは戦闘でも初期レベルでしか通じず、少しレベルの高いダンジョン攻略などでは、囮くらいしか役に立つことはなかった。
さらに攻略のレベルが上がると、もうただの足手纏いだ。下級の魔法など通じるモンスターなどいない。だからそれまで所属していたパーティも追放され、最後には騙されて難関ダンジョンでモンスターの餌にされそのまま……という非業の死を遂げた。
(どうでもいいけど、僕の前世って騙されたり裏切られたりされるの多くない?)
こうして俯瞰的に見ると、何故そんな簡単に騙されるのか不思議で仕方ないが、もし自分ならと考えると、やはり相手を信じて裏切られる可能性が高いのだと思ってしまう。
何故なら前世のどれも、一度は信じた存在に裏切られている場合が多いのだ。友達、仲間、同志など、呼び方は違えど信頼をしていた相手なのだ。
今の悟円は、そういう多くの騙され方を知ることができているから対処などを思いつくが、当時の自分は完全に相手を信じ切っているのだ。少しも疑いすらせずに。そのことからも人が良いというか、元々騙されやすい質なのだろう。
自分で自分を分析しているみたいで恥ずかしい気持ちしかないが。同時に情けない。
(今度の人生はもう少し人を見る目を養わないとなぁ)
あと疑うということをするべきだろうと自己を改めることを決めた。
それはそうとして、今は魔法のことだ。
テレビの中では、普通にしか見えない少女が煌びやかな魔法装束を纏った変身をして、手に持ったステッキで敵に向けて魔法を放っている。
(いつも思うけど、何で敵って変身シーンを黙って見てるんだろうなぁ)
きっとそう思っているのは自分だけではないはずだと悟円は思う。
ただそれは魔法少女に限らず、特撮系とかロボットものも変形や合体時とかの度にそう思うが。
(アニメとかだとタブーなんだろうけど、現実だったら絶対にそこは狙い目だよなぁ)
何せ隙だらけなのだ。命がかかっている戦いで、わざわざ相手が強くなるのを待つなんて馬鹿らしいとしか思えない。
(ま、そんなことを考えてアニメを観るなんて、それこそ馬鹿らしいのかもしれないけど)
チラリと横を見ると、若干キラキラした眼差しで魔法少女を見つめている空絵が目に映る。
それが――魔法。
前の世界でも、誰一人使えはしないものではあっただろうが、人類のほぼ全員がその言葉くらいは認識していたであろう有名ワード。
そしてその存在を知った誰もが、一度は使ってみたいと思ったことだろう。
かくいう悟円だってその内の一人だ。
実際中学生の時には、頑張ればいつか使えるのではと内心思っていたこともあった。思い返せば恥ずかしい過去である。
しかし今生では、その過去を現実と化すことが可能となっていた。
何故急にこのようなことを考えたのか。それは目の前のテレビで、ちょうど魔法少女アニメが流れていたからだ。
今日も何事もなく幼稚園から帰ってきたのだが、何故か自分は愛原家のリビングに座っている。
隣にはチョコンと居座り、コップに入ったイチゴジュースを飲みながら、テレビを凝視している空絵がいた。
少し脇見をすれば、キッチンのところで夕食の準備をしている佳菜絵もいる。
さて、この状況はどういうことか。別に引っ張るようなことではないので、簡単に説明する。
団地まで四人一緒に帰ってきたのはいいが、不意に母が買い出しをしなければならないことを思い出したのだ。悟円は面倒臭かったので、家で待っていると言ったが、それは心配だからと愛原家に預けられたのである。
そうして母が戻ってくるまでここにお世話になっているのだが、いつもこの時間にやっている魔法少女アニメを一緒に観ようと空絵に頼まれ、現在に至っているというわけだ。
だから魔法を認識し、自分の前世の一つであった〝魔法使い〟のことを思い出していた。
(けど魔法っていっても、あまり優秀じゃなかったみたいだけど)
前世では達人級の能力者もいたが、その逆に微妙な練度しか持たない能力者もいた。
特に才能に比例するような能力では、努力だけではどうしようもなかったりするので、うだつが上がらないまま亡くなっている人生もあったのだ。
そしてその一つが魔法使いともいえるかもしれない。
少なくとも前世の世界では、優秀な魔法使いというのは、突出した火力を有する魔法を扱える者のことを言った。
魔法には下級、中級、上級、最上級とあり、上級以上を扱える者は少なく、だからこそ扱える者は世界において優遇され誰からも認められていた。
そんな中、悟円の前世は下級しか扱えず、どれだけ修行しても中級以上を習得することはできなかった。当然落ちこぼれ呼ばわりされ、イジメにもあったりしていたのである。
(使える属性はいっぱいあったんだけどなぁ)
魔法には、火、風、水、土、雷、氷、闇、光の八属性が存在し、生まれつき扱える属性の種類は決まっている。一般魔法使いは一~二属性で下級から中級までを扱え、一流は二~三属性で上級まで扱え、超一流ともなれば三~四属性で最上級まで扱える。
悟円の前世は、下級までしか扱えなかったが、すべての属性に適性があったのだ。とはいっても下級というのは戦闘でも初期レベルでしか通じず、少しレベルの高いダンジョン攻略などでは、囮くらいしか役に立つことはなかった。
さらに攻略のレベルが上がると、もうただの足手纏いだ。下級の魔法など通じるモンスターなどいない。だからそれまで所属していたパーティも追放され、最後には騙されて難関ダンジョンでモンスターの餌にされそのまま……という非業の死を遂げた。
(どうでもいいけど、僕の前世って騙されたり裏切られたりされるの多くない?)
こうして俯瞰的に見ると、何故そんな簡単に騙されるのか不思議で仕方ないが、もし自分ならと考えると、やはり相手を信じて裏切られる可能性が高いのだと思ってしまう。
何故なら前世のどれも、一度は信じた存在に裏切られている場合が多いのだ。友達、仲間、同志など、呼び方は違えど信頼をしていた相手なのだ。
今の悟円は、そういう多くの騙され方を知ることができているから対処などを思いつくが、当時の自分は完全に相手を信じ切っているのだ。少しも疑いすらせずに。そのことからも人が良いというか、元々騙されやすい質なのだろう。
自分で自分を分析しているみたいで恥ずかしい気持ちしかないが。同時に情けない。
(今度の人生はもう少し人を見る目を養わないとなぁ)
あと疑うということをするべきだろうと自己を改めることを決めた。
それはそうとして、今は魔法のことだ。
テレビの中では、普通にしか見えない少女が煌びやかな魔法装束を纏った変身をして、手に持ったステッキで敵に向けて魔法を放っている。
(いつも思うけど、何で敵って変身シーンを黙って見てるんだろうなぁ)
きっとそう思っているのは自分だけではないはずだと悟円は思う。
ただそれは魔法少女に限らず、特撮系とかロボットものも変形や合体時とかの度にそう思うが。
(アニメとかだとタブーなんだろうけど、現実だったら絶対にそこは狙い目だよなぁ)
何せ隙だらけなのだ。命がかかっている戦いで、わざわざ相手が強くなるのを待つなんて馬鹿らしいとしか思えない。
(ま、そんなことを考えてアニメを観るなんて、それこそ馬鹿らしいのかもしれないけど)
チラリと横を見ると、若干キラキラした眼差しで魔法少女を見つめている空絵が目に映る。
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