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プロローグ
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「――――――――――――――――思い出した」
不意に自分の口から出た言葉である。
別に珍しい言葉ではないし、この世界に生を受けてからも、何度か口にしたこともある。故に普通なら取り立てて説明するような事象ではないだろう。
だが今回ばかりは、状況があまりにも異端過ぎていた。
そう、思い出したのだ。大切なことを。そしてそれを自分こと――万堂悟円《ばんどうごえん》が望んでいたことを。
現在、悟円は五歳。両親と十歳の姉がいる四人家族。十階建ての団地に住む一般家庭である。裕福でもないが、幸い貧乏という暮らしではなく不自由なく過ごせていた。
両親も優しく立派な人格者であり、姉も弟思いということもあって、悟円としては幸せな人生を送れていると言える。
もし〝この記憶〟を思い出しさえしなければ、これからも何事もなく平々凡々と暮らせていただろう。
現在時刻は深夜零時。ここはベッドの上。隣を見ればリズムよく寝息を立てている人物がいる。しかも悟円の手をギュッと握っていて、そこから落ち着くような温もりが伝わってきていた。
愛らしい寝顔を浮かべるその人物こそ、十歳の姉――琴乃である。悟円はいつも〝琴姉ちゃん〟と呼んでいる。
悟円はゆっくりと握られている手を離すと、解放された自分の手をジッと見つめた。
(……小さい)
五歳なのだから当然と言えば当然だが、今の悟円にとっては改めて新鮮でしかなかった。
ベッドから降りて、近くにあるベランダに通じる窓を開けて外に出る。
そして、こちらを見下ろすように浮かんでいる金色の月を見上げた。そのまま、ふぅと軽く息を吐くと若干白い。同時に身体がブルルッと震える。
「お~寒。そういやまだ冬だったっけか」
先ほど日が変わり、本日は十二月二十五日。そう、クリスマスである。さらに言うならば、万堂悟円の五歳の誕生日でもあった。
(確か五歳の誕生日に全部思い出すって話だっけ。……マジだったんだなぁ)
悟円の脳裏に浮かび上がっているのは、悟円としての記憶ではなく、別の人物……いや、正確にいうなら悟円が生まれる前の記憶だった。
そう、俗に言えば、悟円は――――転生者なのである。
不意に自分の口から出た言葉である。
別に珍しい言葉ではないし、この世界に生を受けてからも、何度か口にしたこともある。故に普通なら取り立てて説明するような事象ではないだろう。
だが今回ばかりは、状況があまりにも異端過ぎていた。
そう、思い出したのだ。大切なことを。そしてそれを自分こと――万堂悟円《ばんどうごえん》が望んでいたことを。
現在、悟円は五歳。両親と十歳の姉がいる四人家族。十階建ての団地に住む一般家庭である。裕福でもないが、幸い貧乏という暮らしではなく不自由なく過ごせていた。
両親も優しく立派な人格者であり、姉も弟思いということもあって、悟円としては幸せな人生を送れていると言える。
もし〝この記憶〟を思い出しさえしなければ、これからも何事もなく平々凡々と暮らせていただろう。
現在時刻は深夜零時。ここはベッドの上。隣を見ればリズムよく寝息を立てている人物がいる。しかも悟円の手をギュッと握っていて、そこから落ち着くような温もりが伝わってきていた。
愛らしい寝顔を浮かべるその人物こそ、十歳の姉――琴乃である。悟円はいつも〝琴姉ちゃん〟と呼んでいる。
悟円はゆっくりと握られている手を離すと、解放された自分の手をジッと見つめた。
(……小さい)
五歳なのだから当然と言えば当然だが、今の悟円にとっては改めて新鮮でしかなかった。
ベッドから降りて、近くにあるベランダに通じる窓を開けて外に出る。
そして、こちらを見下ろすように浮かんでいる金色の月を見上げた。そのまま、ふぅと軽く息を吐くと若干白い。同時に身体がブルルッと震える。
「お~寒。そういやまだ冬だったっけか」
先ほど日が変わり、本日は十二月二十五日。そう、クリスマスである。さらに言うならば、万堂悟円の五歳の誕生日でもあった。
(確か五歳の誕生日に全部思い出すって話だっけ。……マジだったんだなぁ)
悟円の脳裏に浮かび上がっているのは、悟円としての記憶ではなく、別の人物……いや、正確にいうなら悟円が生まれる前の記憶だった。
そう、俗に言えば、悟円は――――転生者なのである。
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