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「――――昨日の夜にそんなことしてたんだ」

 昨夜、カユキと模擬戦を繰り広げたことと、カユキからの申し出の話を、宿で一緒に朝食をとった後、部屋でルフナとチョコに星馬は説明した。
 彼女は申し出のことよりも、カユキとの模擬戦を見てみたかったと残念がっている。強くなりたい彼女にとっては、少しでも強者の戦いを学んでおきたいのだろう。

「まあそういうことなんだけどさ、ルフナとチョコはどうする? 一応ついてくるって条件は呑んでもらったけど」
「ボクは……邪魔にならないかな?」
「わたしも……お兄ちゃんたちの邪魔にならない?」

 二人が可愛らしく目を潤ませて尋ねてくる。

「そうだね。邪魔になるだろうね」
「「っ!?」」

 ここで嘘でもそんなことないよとは言える。しかしそれでは二人の成長にも繋がらないし、仲間としても悪い接し方だろう。だから星馬は正直に言うことにしたのだ。

「特にチョコは戦えないし、必ずルフナかオレが気を配らなければならない。それにルフナだって、まだまだチョコを守って戦い続けられるほど強くないしね」
「う……そ、そうだよね」
「ごめんね、お姉ちゃん。わたしのせいで……」
「ううん。チョコのせいなんかじゃないよ。ボクがチョコと離れたくないだけなんだし」
「お姉ちゃん……」
「……ねえセイバ、やっぱりボクたちは一緒に行かない方が良い……よね?」
「その方が安全ではあるよね」

 ルフナは「だよね……」と言って意気消沈気味。

「けどさ、やっぱり一番大切なのは、ルフナとチョコがどうしたいかってことだと思うよ」
「ボクとチョコが?」

 星馬は「そう」と言って首肯した。

「ルフナはどうしたい?」
「ボクは……」
「わたしは、お兄ちゃんともいっしょにいたい!」
「チョコ……!」

 ルフナが悩んでいる中、チョコは素直に自分の気持ちを言葉にした。

「もっともっとね、三人いっしょがいい! ダメ……かな、お姉ちゃん?」
「チョコ…………そうだよね。ボクだってまだまだセイバに教えてほしいことだってあるし、一緒に旅をしたい」

 どうやら二人の答えは纏まったようだ。

「ん……じゃあ、一緒に行くってことでOK?」
「う、うん。でもほんとにいいのかな?」
「いいって。ルフナがそう決めたんでしょ? 自分で出した答えなんだから、オレはそれを尊重するよ。結果的にどうなるかは分かんないけどね」

 アルたちとの危険な旅で命を落とすかもしれないし、チョコを死なせてしまうかもしれない。しかし――。

「できる限りオレもルフナとチョコを守るからさ」
「セイバ……!」
「お兄ちゃん、大好きぃ!」

 そう言いながら抱きついてくるチョコ。少しビックリしたが、役得と思ってそのまま彼女の頭を撫でる。

「にへへへ~」

 気持ち良さそうにチョコが蕩けたような表情で笑っている。

(ああ~ケモミミ最高ぉぉぉ~~~っ)

 撫でるだけでなく、獣耳をモミモミしてしまう。

「んっ……お兄ちゃん……くすぐったいよぉ」

 恥ずかしげに少し赤くなった頬。これはもう、やめられないとまれない状態に入ってしまうかもしれない。ニヤけてしまう顔を必死にこらえていると、

「セイバ、ありがとね」

 ルフナもまた嬉しそうに尻尾を揺らしながらそう言ってきた。さすがに十五歳の少女の頭を撫でる勇気はないので、

「うん、気にしない気にしない。それにルフナだって絶対そのうちオレの助けが必要にならないくらいに強くなると思うから」

 グーサインと向けて言った。
 これはシンセークンからのお墨付きでもある。ルフナの格闘センスは結構な高レベルに達しているようで、鍛錬を続ければ一角の武人に成長できるとのこと。

「んじゃ、結果が出たところで、アルたちに報告しに行くか」

 三人で相談して、結果報告するから部屋で待っておいてほしいとカユキには言っておいたのだ。昨日の出来事に関しては、カユキがアルに説明していることだろう。
 話し合いをしていた星馬が泊まっている部屋を出て、アルが泊まっている部屋の前でノックをする。

 中から厳しい声で「誰だ?」と聞こえてくる。カユキの声だ。ここでもやはり警戒を怠らないのはさすがである。

「オレだよ、カユキさん」
「そうか、入れ」

 承諾を得てから中に入ることに。
 入って扉を閉めた直後、いきなり驚く光景が目に飛び込んできた。
 何故なら、カユキが床に正座をさせられていたのだから。



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