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試験が終わると、数日は授業が休みになる。
次に学院に行く時は、二次試験の通知表を受け取る日だ。
そして今日がまさにその日なのである。
(うぅ……ドキドキするよぉ)
教室の自分の席で待っている時間が非常に苦痛である。
その時、一人の少女が近づいて来た。
「―――キャロディルーナさん」
「へ? あ……クランさん?」
そこにいたのはミラである。
「えと……その……さ」
何か言い辛いことでもあるのか、視線を泳がして口ごもっている。すると突如、バッと頭を下げたかと思うと、
「今までごめんっ! それとあの時は助けてくれてありがとうっ! それだけっ!」
とこちらが返事をする間もなくそそくさと真っ赤な顔をして自分の席へ戻ってしまった。その奇行にも見える行為に、アミッツだけでなく、周りの生徒たちもポカンとしたままだ。
「ふふふ、彼女もあなたを認めたということでしょうね」
「……イグニースさん」
今度はアレリアだ。相変わらずいつもと変わらない涼しげで気品のある立ち姿である。
「しかし私も謝罪しなければいけませんね」
「……何で?」
「あなたに勇者を目指す才能がないと言ったことですわ」
「あ……別にいいって。気にしてないし」
「いいえ。間違っていたことはしっかり間違いだと認識し、反省することが次の成長に繋がると私は考えております」
「う、うん」
何だか熱い持論だなと思いつつ、目をパチパチとしばたかせてアレリアを見つめる。
「私もまだまだ見る目というものが欠けておりました。本当に申し訳ございませんでした」
「い、いやその……う、うん」
物凄く居心地が悪い。確かにこれが人として当然の態度なのかもしれないが、本人はまったくもって気にしていないので悪いような気がするのだ。
「許してくださいますか?」
「も、もちろん! 全然いいよ、そんなの!」
すると彼女は顔を上げて女性でも綺麗だと思えるような微笑を浮かべた。
「それともう一つ」
「へ?」
「是非、私のことをアレリアと呼んでくださいませ」
「…………いいの?」
「ええ。さん付けも結構です」
これは……認めてくれたってことでいいのかもしれない。何だかそういうつもりではなかったが、何となく嬉しさが込み上げてくる。
「わ、分かった! だったらボクもアミッツでいいから。あ、さん付けなしで!」
「はい。これからもともに腕を磨いていきましょう、アミッツ」
「うん、アレリア!」
そこへ教室の扉が開き、一気にまた緊張が高まった。
リリーシュが大きな封筒を持って現れたのだ。思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
一次試験の時と同じように、一人ずつ名前を呼ばれていく。
「―――アミッツ・キャロディルーナ」
「ひゃ、ひゃいっ!」
変な声を出してしまった。教卓の前へ行き、リリーシュの顔を見る。
何故かリリーシュは真剣な眼差しでジッと目を見返してきていた。
(こ、これってどういう感情なんだろ……! もしかしてランクまったく上がってなくて怒ってるのかな)
もしそうだとすると、イオにも応援をしてくれたリリーシュにも申し訳ない。
差し出された通知表はまだ裏側。怖くて表にして確認することができない。
リリーシュは黙ったまま。しかしいつまでも動かないアミッツにやきもきしたのか、次の瞬間、リリーシュが――。
「アミッツ、自分の今の立場をしっかり勇気を出して確認なさい。恐れずに。それが勇者としてあるべき姿よ」
厳しめの言葉。それが胸に突き刺さった。
そうだ。こんなところで怖がっている場合ではないのだ。
全力で試験に臨んだ。途中イレギュラーなことも起きたが、それでもやるべきことはやった、と思う。
アミッツは大きく深呼吸をすると、ゆっくり通知表を表にした――。
次に学院に行く時は、二次試験の通知表を受け取る日だ。
そして今日がまさにその日なのである。
(うぅ……ドキドキするよぉ)
教室の自分の席で待っている時間が非常に苦痛である。
その時、一人の少女が近づいて来た。
「―――キャロディルーナさん」
「へ? あ……クランさん?」
そこにいたのはミラである。
「えと……その……さ」
何か言い辛いことでもあるのか、視線を泳がして口ごもっている。すると突如、バッと頭を下げたかと思うと、
「今までごめんっ! それとあの時は助けてくれてありがとうっ! それだけっ!」
とこちらが返事をする間もなくそそくさと真っ赤な顔をして自分の席へ戻ってしまった。その奇行にも見える行為に、アミッツだけでなく、周りの生徒たちもポカンとしたままだ。
「ふふふ、彼女もあなたを認めたということでしょうね」
「……イグニースさん」
今度はアレリアだ。相変わらずいつもと変わらない涼しげで気品のある立ち姿である。
「しかし私も謝罪しなければいけませんね」
「……何で?」
「あなたに勇者を目指す才能がないと言ったことですわ」
「あ……別にいいって。気にしてないし」
「いいえ。間違っていたことはしっかり間違いだと認識し、反省することが次の成長に繋がると私は考えております」
「う、うん」
何だか熱い持論だなと思いつつ、目をパチパチとしばたかせてアレリアを見つめる。
「私もまだまだ見る目というものが欠けておりました。本当に申し訳ございませんでした」
「い、いやその……う、うん」
物凄く居心地が悪い。確かにこれが人として当然の態度なのかもしれないが、本人はまったくもって気にしていないので悪いような気がするのだ。
「許してくださいますか?」
「も、もちろん! 全然いいよ、そんなの!」
すると彼女は顔を上げて女性でも綺麗だと思えるような微笑を浮かべた。
「それともう一つ」
「へ?」
「是非、私のことをアレリアと呼んでくださいませ」
「…………いいの?」
「ええ。さん付けも結構です」
これは……認めてくれたってことでいいのかもしれない。何だかそういうつもりではなかったが、何となく嬉しさが込み上げてくる。
「わ、分かった! だったらボクもアミッツでいいから。あ、さん付けなしで!」
「はい。これからもともに腕を磨いていきましょう、アミッツ」
「うん、アレリア!」
そこへ教室の扉が開き、一気にまた緊張が高まった。
リリーシュが大きな封筒を持って現れたのだ。思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
一次試験の時と同じように、一人ずつ名前を呼ばれていく。
「―――アミッツ・キャロディルーナ」
「ひゃ、ひゃいっ!」
変な声を出してしまった。教卓の前へ行き、リリーシュの顔を見る。
何故かリリーシュは真剣な眼差しでジッと目を見返してきていた。
(こ、これってどういう感情なんだろ……! もしかしてランクまったく上がってなくて怒ってるのかな)
もしそうだとすると、イオにも応援をしてくれたリリーシュにも申し訳ない。
差し出された通知表はまだ裏側。怖くて表にして確認することができない。
リリーシュは黙ったまま。しかしいつまでも動かないアミッツにやきもきしたのか、次の瞬間、リリーシュが――。
「アミッツ、自分の今の立場をしっかり勇気を出して確認なさい。恐れずに。それが勇者としてあるべき姿よ」
厳しめの言葉。それが胸に突き刺さった。
そうだ。こんなところで怖がっている場合ではないのだ。
全力で試験に臨んだ。途中イレギュラーなことも起きたが、それでもやるべきことはやった、と思う。
アミッツは大きく深呼吸をすると、ゆっくり通知表を表にした――。
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