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学院から自分の家に瞬間移動してきたイオとアミッツ。
初めて経験するのか、アミッツは突然景色が変わったことに、しばらくポカンとしていたが、
「おい、いつまで呆けてるつもりだ?」
「……へ? あ……先生?」
「そろそろ戻ってこいや」
「あ……あの、今のは?」
「《空間移動呪文》だな」
「ああ、なるほど。だから一瞬でここへ……ってええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「っ……うっせえな。何だよいきなり」
「な、なななな何だよじゃないし! いきなりさらっと《古代呪文》の名前が出てきたんだけどぉ!?」
「まあ、使えるからな」
「う、嘘……!」
「かなりの魔力を使うから多用はできねえけど、今のはほれ、スッて消えた方がカッコ良かっただろ?」
「…………先生って一体何者なの、本当に」
「オレはオレだぞ。ちょっと《古代呪文》も使える家庭教師だ」
「そんな人……多分先生だけだから」
何だか酷く疲れている様子に見えるが、そんなことよりも、だ。
「んなことより、足見せてみな」
「え……あ」
イオは腫れているアミッツの左足首に向けて右手をかざす。
「――《治癒の明光》」
「わっ、先生ってば《治癒呪文》も使えるんだ……!」
「……うし、これで大丈夫だ。どうだ、痛みは引いたか?」
「あ、うん。ありがと、先生」
イオは他に直すべき怪我がないか、一応彼女の身体を一通り見回してから、
「なあアミッツ」
「ん、何?」
「お前、覚悟はあるか?」
「……へ?」
「勢いであの赤髪に宣言しちまったけど、お前はオレを信じる覚悟はあるか?」
「覚悟って……ああ、そうだった。確か次の試験でスリーランクアップするとか。……本気なの?」
「やってやれねえことはねえんじゃねえか?」
「……でもいまだに魔力を引っ張り出すことでさえ時間かかるのに……」
「そんなもん慣れちまえばどうとでもなる。お前はその魔力を扱う訓練すら未熟なんだ。けど試験は待っちゃくれねえ。荒療治になるけどよ、自分を追い詰めるのも一つの手だ」
「だからあんなことを?」
イオは頷いて肯定を示す。
普通に考えれば次の試験まで二カ月半。それでスリーランクアップするなんて夢みたいな話だろう。しかしもし、アミッツが自分の魔力を扱えるようになれば、面白い結果になるはず。
しかしそれには文字通り、死にもの狂いの修業が必要になるのだ。
「オレは嘘は言わねえ。お前が本当にやる気なら、ぜってースリーランクアップはできる。けど泣き言言って足を止めるようじゃ、結局お前の目標は夢のままで終わっちまう」
「それは……ヤだ」
「なら、ついてこられるか?」
「もちろん!」
「ハッキリいってキツイぞ」
「……先生も昔、耐えたんだよね?」
「ああ、血反吐を吐くくらいな」
「う……こ、怖いけど。強くなれるんなら!」
「良い覚悟だ。んじゃさっそく行くか」
「い、行く? どこに?」
イオは彼女の問いに対しニカッと笑みを浮かべて言う。
「オレはお前の家庭教師。だからお前の家庭に行くんだよ」
初めて経験するのか、アミッツは突然景色が変わったことに、しばらくポカンとしていたが、
「おい、いつまで呆けてるつもりだ?」
「……へ? あ……先生?」
「そろそろ戻ってこいや」
「あ……あの、今のは?」
「《空間移動呪文》だな」
「ああ、なるほど。だから一瞬でここへ……ってええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
「っ……うっせえな。何だよいきなり」
「な、なななな何だよじゃないし! いきなりさらっと《古代呪文》の名前が出てきたんだけどぉ!?」
「まあ、使えるからな」
「う、嘘……!」
「かなりの魔力を使うから多用はできねえけど、今のはほれ、スッて消えた方がカッコ良かっただろ?」
「…………先生って一体何者なの、本当に」
「オレはオレだぞ。ちょっと《古代呪文》も使える家庭教師だ」
「そんな人……多分先生だけだから」
何だか酷く疲れている様子に見えるが、そんなことよりも、だ。
「んなことより、足見せてみな」
「え……あ」
イオは腫れているアミッツの左足首に向けて右手をかざす。
「――《治癒の明光》」
「わっ、先生ってば《治癒呪文》も使えるんだ……!」
「……うし、これで大丈夫だ。どうだ、痛みは引いたか?」
「あ、うん。ありがと、先生」
イオは他に直すべき怪我がないか、一応彼女の身体を一通り見回してから、
「なあアミッツ」
「ん、何?」
「お前、覚悟はあるか?」
「……へ?」
「勢いであの赤髪に宣言しちまったけど、お前はオレを信じる覚悟はあるか?」
「覚悟って……ああ、そうだった。確か次の試験でスリーランクアップするとか。……本気なの?」
「やってやれねえことはねえんじゃねえか?」
「……でもいまだに魔力を引っ張り出すことでさえ時間かかるのに……」
「そんなもん慣れちまえばどうとでもなる。お前はその魔力を扱う訓練すら未熟なんだ。けど試験は待っちゃくれねえ。荒療治になるけどよ、自分を追い詰めるのも一つの手だ」
「だからあんなことを?」
イオは頷いて肯定を示す。
普通に考えれば次の試験まで二カ月半。それでスリーランクアップするなんて夢みたいな話だろう。しかしもし、アミッツが自分の魔力を扱えるようになれば、面白い結果になるはず。
しかしそれには文字通り、死にもの狂いの修業が必要になるのだ。
「オレは嘘は言わねえ。お前が本当にやる気なら、ぜってースリーランクアップはできる。けど泣き言言って足を止めるようじゃ、結局お前の目標は夢のままで終わっちまう」
「それは……ヤだ」
「なら、ついてこられるか?」
「もちろん!」
「ハッキリいってキツイぞ」
「……先生も昔、耐えたんだよね?」
「ああ、血反吐を吐くくらいな」
「う……こ、怖いけど。強くなれるんなら!」
「良い覚悟だ。んじゃさっそく行くか」
「い、行く? どこに?」
イオは彼女の問いに対しニカッと笑みを浮かべて言う。
「オレはお前の家庭教師。だからお前の家庭に行くんだよ」
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