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「その足ではもうまともに走ることもできないでしょう。今から治療しますから、少し待って――」
「……まだ」
「え?」
「まだ……諦めない」
「…………その状態でまだ諦めないと言うのですか?」
「うん!」
「…………その挫けぬ心は尊敬に値します。ですが根性だけでは越えられない壁は確かに存在するのです。それが何故理解できないのですか?」
「……落ちこぼれ……だから」
「っ!?」
アミッツは歯を食いしばって立ち上がる。
「……落ちこぼれには、落ちこぼれなりの意地があるからだっ!」
「ちょ、もういい加減にしなさいよ、キャロディルーナさん!」
「そうよそうよ! アレリア様がどれだけ手加減してると思っているのよ!」
「口を慎みなさい、お二人とも。今は私と彼女が仕合っているのです」
アレリアに注意され、押し黙ってしまう取り巻きの二人。やはり力関係がハッキリしている。しかしそんな彼女たちでも、アレリアは勇者を目指せるだけの能力があると思い、自分の傍に置いているのだろう。
それがアミッツにとって何だかやり切れない思いになってしまう。
「……落ちこぼれの意地、ですか。それがあれば勇者になれると? 何の才能もなく、致死率が一番高い職種に就けると、本気でお思いですか?」
「それは……」
確かに今のままでは、絶対に勇者になどなれるわけがないだろう。だけど……。
「でもそれは……諦める理由になんかなんない!」
「……!」
「才能だって……まだ無いって決まったわけでも、落ちこぼれの意地がムダだってことも、まだ決まってない」
「あなたは……」
「まだ全部試してないのに、諦めるなんてもったいないじゃないか」
アミッツの心からの言葉に、アレリア含め三人が呆気に取られている中、
「―――――――ハッハッハ、よく言ったぜアミッツ!」
パチパチと拍手をしながら、アレリアたちのすぐ後ろに一人の人物が立っていた。
「なっ、い、いつの間に!?」
「だ、誰?」
「制服着てないし!? ふ、不審者ぁ!?」
アレリアと、その取り巻きが、突然現れた人物に各々の感想を口にしているが、その人物は彼女たちを無視して、アミッツに近づいていく。
そのままキョトンとしているアミッツの頭に手を置く。
「いい啖呵だった。それでこそ教え甲斐があるってもんだ」
「せ、先生……! ど、どうしてここに?」
そう、ここに現れたのはイオ・カミツキだった。
「いやぁ、久しぶりにここがあれからどう変わったのか見てみたくなってよぉ。そんで学院の中をうろついてたら、お前がアイツらとここに入ってくのが見えてな。そんでちょいと観戦させてもらったんだよ」
「勝手過ぎるよ……先生」
本当に大胆不敵な家庭教師である。不審者がいれば、警備担当の者が即座に取り押さえるはずなのに、騒ぎすらなっていないとは、隠密まで高等レベルだとは恐れいってしまう。
「あ、あなた……何者ですの?」
「あ? 何者って、コイツの――これ?」
あろうことか、小指を立てるイオ。
「「「「っ!?」」」」
当然アミッツすらそんな答えをするとは思っていなかったので、
「ちょっ、にゃ、にゃに言ってるんだよぉ、先生っ!」
「にししししし! 冗談冗談! 勇者ジョークってやつだな」
「! ……勇者ですって?」
アレリアが疑わしい目つきでイオを見つめてくる。無骨そうで気品の一つも感じさせないイオを見て、眉をひそめていた。
「キャロディルーナさん、あなた、本当にその方とお付き合いを?」
「ほらぁ、信じちゃってるじゃないかぁ!」
「ハハハハハハ!」
「笑いごとじゃないからぁ!」
「悪い悪い。えっと、コイツとおんなじクラスメイトなんだっけ、お前」
「お、お前!? あのね、この方はね!」
そうイオに向かって憤慨めいた声を発した取り巻きの前に手を上げて言葉を止めたのは、アレリアだった。
「……まだ」
「え?」
「まだ……諦めない」
「…………その状態でまだ諦めないと言うのですか?」
「うん!」
「…………その挫けぬ心は尊敬に値します。ですが根性だけでは越えられない壁は確かに存在するのです。それが何故理解できないのですか?」
「……落ちこぼれ……だから」
「っ!?」
アミッツは歯を食いしばって立ち上がる。
「……落ちこぼれには、落ちこぼれなりの意地があるからだっ!」
「ちょ、もういい加減にしなさいよ、キャロディルーナさん!」
「そうよそうよ! アレリア様がどれだけ手加減してると思っているのよ!」
「口を慎みなさい、お二人とも。今は私と彼女が仕合っているのです」
アレリアに注意され、押し黙ってしまう取り巻きの二人。やはり力関係がハッキリしている。しかしそんな彼女たちでも、アレリアは勇者を目指せるだけの能力があると思い、自分の傍に置いているのだろう。
それがアミッツにとって何だかやり切れない思いになってしまう。
「……落ちこぼれの意地、ですか。それがあれば勇者になれると? 何の才能もなく、致死率が一番高い職種に就けると、本気でお思いですか?」
「それは……」
確かに今のままでは、絶対に勇者になどなれるわけがないだろう。だけど……。
「でもそれは……諦める理由になんかなんない!」
「……!」
「才能だって……まだ無いって決まったわけでも、落ちこぼれの意地がムダだってことも、まだ決まってない」
「あなたは……」
「まだ全部試してないのに、諦めるなんてもったいないじゃないか」
アミッツの心からの言葉に、アレリア含め三人が呆気に取られている中、
「―――――――ハッハッハ、よく言ったぜアミッツ!」
パチパチと拍手をしながら、アレリアたちのすぐ後ろに一人の人物が立っていた。
「なっ、い、いつの間に!?」
「だ、誰?」
「制服着てないし!? ふ、不審者ぁ!?」
アレリアと、その取り巻きが、突然現れた人物に各々の感想を口にしているが、その人物は彼女たちを無視して、アミッツに近づいていく。
そのままキョトンとしているアミッツの頭に手を置く。
「いい啖呵だった。それでこそ教え甲斐があるってもんだ」
「せ、先生……! ど、どうしてここに?」
そう、ここに現れたのはイオ・カミツキだった。
「いやぁ、久しぶりにここがあれからどう変わったのか見てみたくなってよぉ。そんで学院の中をうろついてたら、お前がアイツらとここに入ってくのが見えてな。そんでちょいと観戦させてもらったんだよ」
「勝手過ぎるよ……先生」
本当に大胆不敵な家庭教師である。不審者がいれば、警備担当の者が即座に取り押さえるはずなのに、騒ぎすらなっていないとは、隠密まで高等レベルだとは恐れいってしまう。
「あ、あなた……何者ですの?」
「あ? 何者って、コイツの――これ?」
あろうことか、小指を立てるイオ。
「「「「っ!?」」」」
当然アミッツすらそんな答えをするとは思っていなかったので、
「ちょっ、にゃ、にゃに言ってるんだよぉ、先生っ!」
「にししししし! 冗談冗談! 勇者ジョークってやつだな」
「! ……勇者ですって?」
アレリアが疑わしい目つきでイオを見つめてくる。無骨そうで気品の一つも感じさせないイオを見て、眉をひそめていた。
「キャロディルーナさん、あなた、本当にその方とお付き合いを?」
「ほらぁ、信じちゃってるじゃないかぁ!」
「ハハハハハハ!」
「笑いごとじゃないからぁ!」
「悪い悪い。えっと、コイツとおんなじクラスメイトなんだっけ、お前」
「お、お前!? あのね、この方はね!」
そうイオに向かって憤慨めいた声を発した取り巻きの前に手を上げて言葉を止めたのは、アレリアだった。
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