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「あむ! んぐんぐんぐんぐ…………ぷはぁ~!」
目の前に用意された食事をどんどん胃の中へと入れていく。そんなイオの豪快さに、呆気に取られたようにアミッツは見ており、呆れたように見ているのはリリーシュだ。
近くの公園に行き、近くにある店から懐かしいいいニオイがしたからリリーシュにお願いして、食べ物をテイクアウトしてきてもらったのだ。
店に入ろうとしたら、
『そんな格好で入るのは迷惑よ!』
と怒鳴られたので仕方なく外で食べている。まあ、イオにとっては腹に入れば何でもいいので満足しているが。
今は公園に設置されているテーブルを三人で囲んで、温かな陽射しを受けながら食事を満喫中なのだ。
「んん~っ、あそこの肉まん、やっぱ昔と変わってねえよな! 美味い美味い!」
「はぁ、あんたね。何でそんなに汚いのよ」
「んあ? ほへははは(それはだな)」
「呑み込んでからにしなさいよね」
「んぐんぐ……んっぐ! それはだな、冒険してたからだ」
「冒険? 仕事じゃなかったの?」
「違う違う。〝組合〟の奴ら、最近は諦めたのか、もうオレには何も頼んでこねえしな。こっちとしては楽なんだけどね~」
そう言ってリリーシュに勝手きてもらった大量の肉まんをすべて腹の中に収めると、
「ふぅぅぅぅ~っ、満足満足、余は満足じゃ~」
「ったく、本当にあんたは昔から変わらないわね」
「お前だってそうじゃねえか。昔っから真面目過ぎ」
「あら、こう見えても適度に息抜きしてるわよ」
「けど男はいねえ?」
「うぐ……痛いとこをつきおって……っ」
リリーシュの見た目をフル活用すれば落とせる男など大量にゲットできるだろう。その気になれば、だが。
「お前まだ自分よりも強え男がいいとか思ってんのか?」
「そ、そうよ、悪い?」
「別に悪かねえけどよぉ。お前よりも強え男ってそうはいねえんじゃね? あ、でも聞いたぞ。またジャックの告白、断ったんだって?」
「だ、だから何よ?」
「ジャックは一応お前よりは強えと思うんだけど?」
「…………私にも容姿の好みってのがあるわよ」
「まあ、そりゃ普通か。あ~美味かった。あんがとな。あとで金は振り込んどくからな」
「別にいいわよ、これくらい。ところでそろそろこの子について話したいんだけど?」
そう言ってリリーシュが、彼女の隣に座っている月色の髪の少女を紹介し始める。
「この子は今、私が受け持ってる生徒の一人なの。ほら、自己紹介」
「あ、うん! え、えと、ボクはアミッツ・キャロディルーナって言います!」
「……は? キャロディルーナ?」
「は、はい」
「……キャロディルーナって、北地区にある孤児院の……か?」
「し、知ってるんですか?」
「まあ、オレが学院に通ってた時にもあったしな。なるほど、あのマザーの……」
ジッとアミッツを見ていると、彼女は居心地の悪さを感じるかのように目を泳がせ始める。
エメラルドグリーンの大きな瞳に少し丸みを帯びた輪郭。まだ子供っぽい風格だが、美少女と提唱しても誰も文句は言わないだろう。どこかサバサバとした印象を受けるのも、彼女の魅力の一つに違いない。
イオはそのまま視線をサッとリリーシュへと移す。
「頼みてえことってのは、この子のことか?」
「そうよ」
イオは「ふぅん」と言いながら、懐から一枚の折り畳まれた紙を取り出して、テーブルの上に広げる。
“久しぶりね、イオ。どうせあんたのことだから碌に勇者業なんてしてないんでしょ? 冒険ばっかりしてる時間があるんだったら、その時間、ちょっとだけでもいいからある子に分けてほしいのよ。その子はとても頑張り屋で一途な子。けれど悔しくも、いつもそれが結果に繋がらないの。まるで昔のあんたみたいにね。できればその子の力になってほしいの。だから三日後の真昼――あの招き猫の店で待ってるから。もし来なかったり遅れたりしたら、あんたが昔、合宿のコテージで私にしたこと、ジャックにバラすからね。だからお願い。 リリーシュ”
「……これ、一種の脅迫ですよね?」
「あら、そう? 可愛らしい女の子のお願いじゃない」
「二十歳超えたくせに、自分を女の子って……ひっ!?」
「……何? 何か文句でもあんの?」
「い……いいえ」
対面するリリーシュから魔王の殺意に似たオーラを感じてしまった。やはり女に歳に関してツッコむのは止めた方がいいようだ。
目の前に用意された食事をどんどん胃の中へと入れていく。そんなイオの豪快さに、呆気に取られたようにアミッツは見ており、呆れたように見ているのはリリーシュだ。
近くの公園に行き、近くにある店から懐かしいいいニオイがしたからリリーシュにお願いして、食べ物をテイクアウトしてきてもらったのだ。
店に入ろうとしたら、
『そんな格好で入るのは迷惑よ!』
と怒鳴られたので仕方なく外で食べている。まあ、イオにとっては腹に入れば何でもいいので満足しているが。
今は公園に設置されているテーブルを三人で囲んで、温かな陽射しを受けながら食事を満喫中なのだ。
「んん~っ、あそこの肉まん、やっぱ昔と変わってねえよな! 美味い美味い!」
「はぁ、あんたね。何でそんなに汚いのよ」
「んあ? ほへははは(それはだな)」
「呑み込んでからにしなさいよね」
「んぐんぐ……んっぐ! それはだな、冒険してたからだ」
「冒険? 仕事じゃなかったの?」
「違う違う。〝組合〟の奴ら、最近は諦めたのか、もうオレには何も頼んでこねえしな。こっちとしては楽なんだけどね~」
そう言ってリリーシュに勝手きてもらった大量の肉まんをすべて腹の中に収めると、
「ふぅぅぅぅ~っ、満足満足、余は満足じゃ~」
「ったく、本当にあんたは昔から変わらないわね」
「お前だってそうじゃねえか。昔っから真面目過ぎ」
「あら、こう見えても適度に息抜きしてるわよ」
「けど男はいねえ?」
「うぐ……痛いとこをつきおって……っ」
リリーシュの見た目をフル活用すれば落とせる男など大量にゲットできるだろう。その気になれば、だが。
「お前まだ自分よりも強え男がいいとか思ってんのか?」
「そ、そうよ、悪い?」
「別に悪かねえけどよぉ。お前よりも強え男ってそうはいねえんじゃね? あ、でも聞いたぞ。またジャックの告白、断ったんだって?」
「だ、だから何よ?」
「ジャックは一応お前よりは強えと思うんだけど?」
「…………私にも容姿の好みってのがあるわよ」
「まあ、そりゃ普通か。あ~美味かった。あんがとな。あとで金は振り込んどくからな」
「別にいいわよ、これくらい。ところでそろそろこの子について話したいんだけど?」
そう言ってリリーシュが、彼女の隣に座っている月色の髪の少女を紹介し始める。
「この子は今、私が受け持ってる生徒の一人なの。ほら、自己紹介」
「あ、うん! え、えと、ボクはアミッツ・キャロディルーナって言います!」
「……は? キャロディルーナ?」
「は、はい」
「……キャロディルーナって、北地区にある孤児院の……か?」
「し、知ってるんですか?」
「まあ、オレが学院に通ってた時にもあったしな。なるほど、あのマザーの……」
ジッとアミッツを見ていると、彼女は居心地の悪さを感じるかのように目を泳がせ始める。
エメラルドグリーンの大きな瞳に少し丸みを帯びた輪郭。まだ子供っぽい風格だが、美少女と提唱しても誰も文句は言わないだろう。どこかサバサバとした印象を受けるのも、彼女の魅力の一つに違いない。
イオはそのまま視線をサッとリリーシュへと移す。
「頼みてえことってのは、この子のことか?」
「そうよ」
イオは「ふぅん」と言いながら、懐から一枚の折り畳まれた紙を取り出して、テーブルの上に広げる。
“久しぶりね、イオ。どうせあんたのことだから碌に勇者業なんてしてないんでしょ? 冒険ばっかりしてる時間があるんだったら、その時間、ちょっとだけでもいいからある子に分けてほしいのよ。その子はとても頑張り屋で一途な子。けれど悔しくも、いつもそれが結果に繋がらないの。まるで昔のあんたみたいにね。できればその子の力になってほしいの。だから三日後の真昼――あの招き猫の店で待ってるから。もし来なかったり遅れたりしたら、あんたが昔、合宿のコテージで私にしたこと、ジャックにバラすからね。だからお願い。 リリーシュ”
「……これ、一種の脅迫ですよね?」
「あら、そう? 可愛らしい女の子のお願いじゃない」
「二十歳超えたくせに、自分を女の子って……ひっ!?」
「……何? 何か文句でもあんの?」
「い……いいえ」
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