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181:男前なレジナルド。

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 セシルを獣医に預けて一週間が経ちました。
 レジナルドとミーシャを誘って、セシルに会いに行くと、セシルは獣医の執務室内をポテッポテッと走りながら、いろんなものの匂いを嗅いだり、アムアムと咬んでみたりと、かなり好奇心旺盛のようでした。

「わざわざ御御足を運んで頂き――――」

 形式的な挨拶をサクッと終わらせ、セシルの現状を聞きました。
 見た限りでは元気いっぱいのようですが。

「おおよそではありますが、生後二ヶ月は過ぎているようでしたので、ワクチン類は投与してます。虫も駆逐済みです。性別はまだわかりませんが、顔の感じからですと、メスの可能性が大きいと思います」
 
 エサは、先王陛下の犬番さんが用意して下さるそうなのですが、幾分老齢なので、毎日こちらから受け取りに行く事になりました。

「申し訳ございません。大変なお手数をおかけします」
「謝らないでちょうだい。用意してもらえるだけで有り難いわ」
「わたしが、とりにいきます!」

 レジナルドがキラキラとした顔で、そう宣言するとミーシャも自分も行くと追随するように言い、キラッキラとした目でこちらを見てきます。
 眩しいです。眩いです。ピュアッピュアです。

「……はぁ。わかりました。私が付き添います」

 ザラが大きな溜め息を吐きましたが、顔は少しだけ笑っているので、まぁ、大丈夫でしょう。



「わたしのへやでおせわするの!」
「…………わたしも、おせわしたいです」

 セシルを移動用の籠に入れてもらい、王弟宮に戻る途中で、レジナルドとミーシャの言い合いが始まりました。
 ミーシャは自分の部屋で世話をすると言い張っています。
 レジナルドはお世話をしたいけれど、勉強があるので、部屋から中々抜け出せないので、自分の部屋でお世話をして欲しいと言っています。

「レジナルド、貴方の部屋でミーシャとセシルが遊んでいたら、気になって集中出来なくなあい?」
「っ……」

 どうやら、集中できなさそうなのは気付いているようです。こういった話がレジナルドには通じるので、三歳にしては賢すぎるのでは? と思ってしまいます。
 
「テオ様は、お勉強は五歳からでもいいと仰られていたんだけど、どうする? 暫くお勉強はお休みする?」

 普通、子供にこう聞くと、大概の子が『休む』という選択肢を選ぶのだと思います。
 ですが――――。

「おやすみ、しません。おべんきょうはしたいです」

 レジナルドは、絶対に勉強は続けると言うのです。
 テオ様に聞いてみても「解らん」の一言でした。

「そう。そうしたら、ザラとミーシャに日中のお世話はお願いするのね?」
「っ……はい」

 レジナルドは少しだけ目を潤ませながらも、コクンと大きく頷いて返事をしました。

「ごごからは、セシルのところに、いってもいいですか?」
「もちろんよ。午後は貴方が自由にしていい時間よ」
「はい!」

 レジナルドが嬉しそうに笑い、ミーシャと何かモショモショと内緒話を始めました。

「ミーシャもレジナルド様くらいに自制心が芽生えると良いのですが。一緒に勉強――――」
「いーやー!」

 ミーシャは勉強は断固拒否のようです。

「だいじょうぶ、ミーシャがおべんきょ、したくなったら、わたしがおしえる」
「えー? いー」

 まさかのレジナルドの男前発言です!
 ですが、完全に打ち捨てられました。
 全く、響いていません。

 周囲にいた大人たちには大打撃を与えたレジナルドのこの言葉は、いつになっても萌えネタとして、皆の間で語り継がれていきました。


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