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176:だめ?
しおりを挟む寝酒を少しだけ嗜まれたテオ様が、ベッドに行こう? と、私の腰に腕を回してこられました。
お酒を飲まれている間、ずっと私にペッタリとひっつき、時々ボソリと「…………柔らかい」や「いい匂いだ」などと呟かれていましたが、それ以上は特に何もなかったので、ただ眠くなられたのだと思っていました。
「おやすみなさい、テオ様」
「ん…………おやすみ」
横向きに眠るテオ様の胸に寄り添うようにして眠ろうとしましたら、後ろ抱きにしたいと言われました。
「……だめか?」
「いえ、構いませんよ」
不思議な事を言うなぁと思いつつも、テオ様に背を向けると、すぐさま上側の左手で抱きしめてこられました。
初めはお腹あたりを抱きしめるようにしていたのに、いつの間にかスルスルと手を動かし、太股や脇腹を撫でてきました。
手の動きが徐々に艶めかしくなってきて、そっと胸の下を揉み始めました。
お尻にはテオ様の昂ったモノが押し当てられています。
テオ様の手を止めるように、上から手を重ねました。
「っ! ……ミラベル、まだ…………だめ、か?」
掠れた声で、苦しそうに聞かれました。
耳に、熱い吐息が掛かっています。
「ミラベル……いや? 無理? だめなのか? なぁ、ミラベル……ミラベル、答えてくれよ」
まだ何も言っていないのに、寂しそうな声になり、どんどんと言葉を重ねて、最後には少し怒ったように言われました。
身体を動かし、テオ様と向い合せになろうとしましたら、逃げると思われたのでしょうか?
ベッドに仰向けで組み敷かれてしまいました。
「テ、テオ様⁉」
「…………娼館でシタって疑ってる? だから、嫌?」
それは、状況的にどうしょうもなくなれば、そういうことにもなるかも、と頭の片隅で覚悟はしていました。
「いえ、嫌ではありませんが……」
「……でも、したくない?」
「あ、いえ……そのぉ…………生理中でして」
主寝室が見事に無音です。
夜って、こんなに静かなのねぇ、なんて思考を明後日に飛ばせるほどに、無音です。
「…………っ、はぁぁぁぁ。ん、ごめん」
テオ様が重た長い溜息を吐き出して謝り、ベッドから出ていかれました。
「テオ様⁉」
慌てて引き留めようとしましたら、頬を染めて「ヌいてくる」と言われました。が、何故にそこで頬を染められるのですか。何故にちょっと照れているのですか。
「先に寝てていい」
そう言われても。
なんとも言えない、いたたまれないような気持ちと、先程から撫でられまくったせいで、妙に昂った気持ちとで、眠気は宇宙の果てくらいまですっ飛んで行ってしまっています。
二十分ほどして、スッキリ笑顔のテオ様が戻って来られましたが、何となくもやっとして、目を見れませんでした。
――――自分だけスッキリしてっ!
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