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173:どうやら只事ではないようです。
しおりを挟む憤慨するザラとリジーを慰めつつ、レジナルドのお世話をしつつ、宮の諸々の采配をしつつで、更に更に一週間が経ちました。
その間の朝方に二回ほど、色々な香水を混ぜたような臭いをさせたテオ様が主寝室に顔を出し、レジナルドと私の頬を撫でて、直ぐに出ていく、という事がありました。
「ちゃんと睡眠は取られているのかしら?」
「娼婦のベッドでしっかりと寝られていますよ。心配するほうが無駄です」
最近のザラはトゲトゲです。
今までは薄らっと感じていた、テオ様への好意というか敬意というかがゼロになっていそうです。
「ザラ! いい加減にしろ!」
ザラのトゲトゲな言葉に、とうとうロブが怒ってしまいました。というか、ロブって怒るのね。
二人の言い合いをぽへーっと眺めていましたら、調子っぱずれの鼻歌を歌いながら部屋に戻ってきたリジーが、二次被害を受けていましたが、これは仕方ない気がします。
「リジー嬢! こんな時に何をのんきに鼻歌など!」
「リジー! 音が外れていて、イライラするのよ!」
「ひえっ⁉ ごめんなさい?」
リジー……どんまいっ!
「ミラベル様ぁ、アレなんですか?」
やんやと言い合う二人から逃げてきたリジーがミーシャを抱きかかえました。
そして、ママとパパは怖いですねぇ、とかミーシャに吹き込んでいました。
「「リジー!」嬢!」
「わぁ! 仲良し!」
その感想、どうなの? リジー……とか思っていましたら、今度はこちらに飛び火です。
テオ様にはテオ様のお考えやお仕事があるのだから、と言ってもザラは中々納得してくれません。
そんなこんなな言い合いをした翌日、宰相閣下が退任するという知らせが、王妃殿下から舞い込みました。
「ここのところバタバタさせてごめんねぇ。セオドリック、全然帰って来ないでしょう?」
「……はい。時々朝方に顔を見に来たりはありました」
「事が事だけにねぇ――――」
どうやら、宰相閣下には認知していなかった婚外子がいたらしく、その子供が娼婦になっていたそうです。
そして、その子供が娼館で死亡したとの知らせが入り、内々での調査をしていたところ、娼婦が異様な早さと多さで入れ替わっている事に気が付いたとのことでした。
「先月いた子が、いつの間にか辞めていて、新しい子が入る。なのに、また翌月には……って続いていたらしいの」
娼婦にはいろんなタイプがあるけれど、そこは貴族専用で、いわゆる高級娼婦の館なのだそうです。
普通、そういった娼館では入れ替わりは少なく、数年に一度で、身請け代も目が飛び出るほどだと。
「でしたら、なぜ?」
「そう思って調査させてたのよ」
どうやら他所の国の諜報員が経営している、というところまでは掴んでいたけれど、どの娼婦が黒でどの娼婦が白なのか、何の情報を持っているか、などが分からず調査が行き詰まり出した事で、テオ様が投入されたとの事でした。
――――テオ様、大丈夫かしら?
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