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172:娼館に入り浸る。
しおりを挟むレジナルドの離乳食を始めて一週間が経った頃、部屋から人払いをしたテオ様に、暫く王子宮に戻れない日が続くかもと言われました。
「数日中に、城下町の娼館に入り浸っているという噂が流れると思うが…………気にするな。あと、口外せず、何も知らない振りをしてくれ」
入り浸る。
気に、するな。
知らない振りをしろ。
「…………私と出来ないから?」
「違うっ!」
耳が痛むほどの声で怒鳴られました。
レジナルドがびっくりして泣き出してしまい、あやしていると、テオ様が苦々しい表情になりました。
「っ……違う。出入りするだけだ」
「そう、ですか。わかりました」
「信じられない?」
何故テオ様が傷付いたような顔をするのでしょうか。
「いえ…………あの、娼婦の方とされるのですか?」
「するわけないだろう⁉」
だって、娼館に行って何もしないとか、ないのでは?
娼館とは娼婦と性的事をする場所ですし。
あれ? 何だか聞き覚えのあるような…………。
「あ! もしかしてベリンダ様の旦那様と何か関係があります?」
テオ様がまたもや苦々しいお顔になりました。
何か知っているのか、と低い声で聞かれたので、もしかしたら話題にすることさえも駄目な部類の情報だったのかと、少しだけ背筋が寒くなりました。
ただ通っていることしか知らない、ベリンダ様は心を痛めてあった、とだけ説明しました。
「…………ベリンダ夫人と同じように静観していてほしい」
「はい、かしこまりました」
内容を話せはしないけれど、何かしらのトラブルがあり、娼館に出入りする必要が出てきた、ということのようです。
言われた瞬間は、頭に血が上ってしまいましたが、深呼吸し、よくよく考えれば、テオ様がわざわざ出向く必要があるということは、本当に大変な事態なのでしょう。
この宮が疲れて帰ってきたテオ様の安らぎの場になるように、ドンと構えておかねば! と思いました。
「レジナルドとこの宮は、私がしっかりと護ります」
「ん、ありがとう」
ゆっくりと唇を重ねたあと、テオ様が為政者の顔をして、「行ってくる」という言葉を残して立ち去られました。
テオ様が娼館に出入りするようになって、一週間が経ちました。
宣言された翌日には、王城で『第二王子は娼婦に入れ込んでいる』という噂が立っていると、メイドたちが話しているのを聞くようになりました。
「お嬢様、一体どういうことですか! ロブに聞いても『知らない』としか言わないのですが!」
ザラが珍しく語気を強めて詰め寄ってきました。
斜め後ろで、リジーもうんうんと頷いています。
きっと、ロブは知っているけれど、テオ様と同じく話せないのでしょう。
ロブと女性騎士のモーガンは、困り顔でドアの前を警備してくれています。
任務中なので、ザラに話しかけて注意しにくいのでしょう。仕事とプライベートはきっちりと分けます、とザラが言っていたので。
「ザラ、いいの。きっとテオ様のお考えがあるのよ。私はレジナルドとここを護りながら、戻られるのを待つと決めたの」
「っ……納得、出来ません。意味がわかりません。お嬢様をさらうようにして、王城に閉じ込めてまで求めていたのにっ!」
「そうですよー! 夜の生活が出来ないからって!」
「リジー⁉」
リジー、まさかの爆弾発言です。
いや、侍女なのでそこら辺は勘付いていたでしょうけど。
「ハッキリ言わないでくれる⁉」
「やはり、それが原因なのですか!」
「ザッ、ザラ、落ち着いて? 違うのよ。いや、違わない……いえ、違うのっ!」
――――テオ様ぁぁぁ! 早く解決してぇぇぇ!
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