厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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156:プレゼント

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 ザラとロブに休暇を出して、アップルビー領に里帰りさせたり、ドレスの仮縫いや小物を決めたりとしていましたら、十二月の半ばになっていました。
 朝の冷え込みが、とても強まりました。

 起きるにはなんとなく早いからと、テオ様とベッドの中でお喋り中です。

「来月はもう結婚式なのですね」
「ん、楽しみだな」
「はい。ですが……ドレス大丈夫でしょうか」

 お腹が徐々に迫り出してきて、結構目立ち始めています。
 ザラはお腹が重たいし、赤ちゃんがグイングインと動いて、痛いくらいだとか言っていました。
 私はまだポコッや、クニョッとした可愛らしい胎動ではありますが、自分以外が動くので結構びっくりします。
 あと、生きているんだなぁと、感慨深くもなります。

「ん? 動いたか?」

 テオ様は私を後ろ抱きにしてお腹を擦るのが好きなようで、ベッドの中でもずっと手をあてたり、撫でたりしています。

「いえ、腸が動いただけです」
「む、またか!」

 外からではまだ分かりづらいらしく、テオ様はしょっちゅう私の内蔵の動きの方に反応してしまいます。
 ハズレるたびにちょっと悔しそうなので、ついつい笑ってしまいます。

「あ、ほら、ここ、動いてます」

 お腹に添えられていたテオ様の手を、胎動しているところに動かしました。

「ん! あぁ、可愛いなぁ! バウデヴェインは」
「まだそのお名前諦めてなかったのですか⁉」
「カッコイイ」
「却下です」
「けち」

 スキあらば、変なお名前を提案してくるテオ様ですが、私の書き出した『普通のお名前リスト』から撰んで下さるようではあります。……たぶん。

「顔を見て決めるのもいいなぁ」
「そうですねぇ。ある程度は決めておいて、テオ様がお顔を見て決めるのもいいですね」
「なぁ、ミラベルは決めたくないのか?」

 決めたくないというわけではありませんが、私はお腹で育み、産んで、この子に新しい世界をプレゼントします。
 だから、テオ様は産まれ出てきた我が子に、名前をプレゼントして欲しいなと思うのです。
 両親からの初めてのプレゼントです。

「っ! ん! 私たちからの、初めてのプレゼントだなっ!」
「テオ様、耳元で煩いです」
「おまっ、このタイミングで……」
「んふふふっ」
「まったく……ふははははっ」

 ベッドの中でお喋りしつつ、他愛もないことで笑い合って、時にはちょっと言い合いもしたりして。
 なんだかんだと楽しい日々を過ごしました。



 新年になるちょっと前にザラとロブが王城に戻りました。
 アップルビー領にあるザラの実家で出産してもいいのよ、と伝えていました。ロブの家はちょっと狭いので、ザラの実家一択です。
 ですが、ザラは絶対に王都で産むと言い張りました。

「なんでよぉ。ご両親のそばの方が安心でしょ?」
「こちらで産んで、ミラベル様のお子様の乳母は私がいたします」
「ええ? 乳母ぁ?」

 この世界、特に王侯貴族では、乳母が当たり前ですが、私はなるべく自分で育てたいなぁと思うのです。
 でも、やはり手助けはありがたいです。

「乳母より、ママ友がいいわ」

 気持ち的に。
 ザラが先輩ママさんになるのは決まっているのだし。
 出産後の準備も着々と進んではいるものの、何もかも初めてで、ドキドキの連続です。

「そういえば、出産前には引っ越してロブと一緒に住むんでしょ? 屋敷は決まったの?」
「えぇ。……立派なお屋敷に住まわせていただくことになりました」
「あら、そうなの! どこ⁉」
「…………秘密です」

 何故か、引越し先を教えてもらえませんでした。
 ロブに聞いても『秘密』。
 テオ様に聞いても「あぁ、はははは」とドヤ顔で笑って逃げられます。

 ――――気になるっ!


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