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152:飲酒の量。

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 プイッと不機嫌なふりをした酔っぱらいテオ様の頭を撫でて、寝かしつけをしました。
 割と早めに眠られたので、そっと夫婦の寝室を出て、侍女やメイドの控えの間をノックしました。

「あら? ミラベル様、どうされました?」

 リジーにお風呂に入ることを伝えると、テオ様としっぽりするんじゃなかったんですか? とか、謎な事を言われました。

「しっぽりって……あ、それよりも!」

 テオ様ってお酒に弱かったのでしょうか?
 食事の席では嗜まれる程度でしたし、婚約式の時はなんだか忙しくて良くは見ていませんでしたが、多少は飲まれていたように思います。

 今日は、試食しつつ飲まれていたのでボトル一本を空けられていました。
 私でしたら、完全にダウンすると思いますが。

「そうですねぇ、今日は少量で酔いが回られたのかな、とは思いました」
「いつもは?」
「陛下や王太子殿下と飲まれるときは、二本で止められるそうなので、多分そのくらいで酔い始められるのでは、という噂があります」

 噂、なのね。
 ちなみに、陛下と王太子殿下は『うわばみ』で、王妃殿下は『下戸』、王太子妃殿下は普通だそうです。
 流石侍女です。
 彼女たちの情報網はどこまで巡らされているのやら。

「ミラベル様も普通ですね。お酒を飲まれるより、おつまみを食べる方に熱中されているので、酔われる心配はありませんが」
「うるさいわよっ」

 いいじゃないの。
 おつまみ、美味しいんだもの。


 
 ぷりぷりとリジーに文句を言いつつお風呂に入り、甚平を着て夫婦の寝室に戻りましたら、テオ様が大の字で寝ていらっしゃいました。
 いつも寝相は良いので、ちょっと意外です。
 というか、今日は意外な姿ばかり見ているような気がします。良くも悪くも。

 そうっとベッドに寝そべり、あどけない寝顔をしたテオ様の頬をなでました。
 頬が少しジョリジョリとしています。
 薄い毛色なのであまり目立ちませんが、お髭が伸びてきているようです。

「んふふ」

 伸びたお髭がなんだか特別なもののように感じてしまい、愛しくなりました。
 ちゅ、とキスをすると、チクチクとするのです。

「んふっ」

 一人でクスクスと笑いながら目を瞑って、穏やかな眠りに就きました。



「うぐぐぐ……」

 妙な呻き声で目が覚めて、声のする方に顔を向けると、真横でテオ様がベッドの上で正座をして、上半身を前に折り畳むようにし、腕は前方に真っ直ぐに投げ出していました。
 どこかの国の太陽神に祈りを捧げるかのような格好です。

「テオ様?」
「んぐぅぅ」
「どうされました?」

 テオ様が祈りを捧げるかのような格好のまま、真っ白な顔だけをこちらに向けました。

「ぎぼぢわるい……あだまいだい」

 ――――でしょうね!


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