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150:ワインとマリアージュ☆
しおりを挟むキモオドリック殿下の謎休憩を挟んで、返礼品決めの会合に向かいました。
「お久しぶりです、ミラベルお嬢様」
「わざわざ出向いてくださり、ありがとう存じます。お待たせしてごめんなさいね」
「滅相もございません」
まぁ、待たせたのはテオ様ですけどっ。
張本人は知らぬ顔というのがなんともモヤッとします。
結婚式の返礼品ですが、王族御用達のワインとアップルビー領のチーズを抱き合わせで贈ることになりました。
今日はそのチーズ決めの日で、チーズ職人や卸業の方々にわざわざ王都まで出向いてもらっていたのです。
「んっ、これは思ったより酸味が強いのね」
「うむ……これは違うな」
王族御用達のコク深めのワインにあうチーズを二十種類ほどテイスティングしました。
私はチーズだけですが、テオ様は目を瞑ってチーズとワインの相性を確認されていました。
「んむ…………これが一番合うな」
「やはり、そうでございますよね。ですがこちらは……」
御用達ワインに一番合ったのが、まさかの『テーブルハズバンド』と呼ばれる、所謂一番庶民的で日常使いするハード系のチーズだったのです。
「グラナチーズですかぁ」
「これが一番だ」
幼い頃から洗練された物を食べ慣れているテオ様が言われるのだから、間違いないとは思うのですが、テーブルハズバンド……。
「チープ過ぎません?」
「ミラベルの見た目を推すならば赤玉もいいのだが、グラナのほうが素晴らしいマリアージュを魅せてくれた」
赤玉とは、赤いワックスでコーティングしたセミハードチーズなのですが…………何でもかんでも赤色と私を結び付けないで欲しいです。
「我が領は日常使いできるチーズをメインで作っていますし、イチオシの美味しさではあるんですよねぇ……。そうですね、グラナチーズにしましょうか」
「うむ。グラナチーズは何種類か持ってきているのか?」
「はい――――」
グラナチーズは四種類持って来ていたので、今度はそれらの味比べをしました。
「ふむ。希少種よりも一般用の方が断然いいな。ワインのコクがじわりと華やぎ鼻から抜ける」
「ではこちらに決定で――――」
数量を決め、チーズはワインの卸業に一度送り、ワインと同梱して、相手先に発送するように、などと決定していきました。
「ん――――」
チーズ職人とチーズに施す焼き印の話をしていると、急にテオ様が頬にキスして来られました。
「――――毎日食べても飽きない、色々と調理したくなる……まるでミラベルのようなチーズだな」
ボソボソと耳元で恐ろしいことを囁き、そっと耳朶を甘噛みしてきます。
悔しくもドキリとしてしまいましたが、慌ててテオ様のお顔を押し退けました。
なんだか変です、目が据わられています。
「何だこの手は? 我が赤き果実よ、何故に我を拒否する」
「テオ様⁉」
「んっ……塩っぱい」
「ひぎゃっ⁉」
掌をぬろーんと舐められました。
明らかに変です!
――――まさか?
「我が赤き果実は、何処もかしこも美味いな。一番はスィヌス……いや秘めたる場所のネクタルも捨て難い……」
「てっ、テオ様がすすすすこし、酔われてしまわれましたので、これにて終了とさせていただだだきますっ! 不明なことはごっ、後日!」
――――やっぱり!
全員がザッと頭を下げたので、テオ様の腕を掴み、足早に退室しました。
「ひぇっきょくてきなミラベル……とーといっ!」
――――ひぃぃぃぃっ、酔ってる!
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