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閑話:妻を裏切って娼館に通う。(後編)
しおりを挟む夜、ベリンダにボコボコに殴られる日々。
朝起きると、大股開きで下着を見せ付けられていて、たまらずに何度襲いかけたことか。
「ベリンダ…………下着……がっ、見えているよ」
「っ⁉ もっ、申し訳ございません」
あぁ、頬を赤らめないで。
恥ずかしそうに、顔を隠さないで。
どんなにベリンダと愛を深めたいと思っても、週に二度は必ず娼館に通わざるを得なかった。
宰相閣下の頼みと、調査。
誰にも話すわけにはいかないという重しが、精神を蝕んだ。
何度かベリンダを抱こうとしたが、気持ちは逸るるのに下半身がうんともすんとも言わない。
ベリンダが巷で流行っているという、途轍もなくエロい夜着を着た日には、爆発した。が、徐々に慣れてきて、また物言わぬモノへと成り下がる。
「ベリンダ、そんな格好では、風邪を引くよ」
肩から厚いガウンを掛け、腰紐でしっかりと結び。隣に寝かせる。
股間はピクリともしないくせに、鼻血が出そうなほどに興奮はしている。
…………知られたくはない。
不能だと知られたら…………別れられるかもしれない。
何度か口論したりもした。
そのたびに『話せない理由がある。私を信じてくれ。絶対に君を裏切ったりはしない』なんてセリフで誤魔化してきた。
ある日、ベリンダがまたもやエロい夜着を見せ付けてきた。
いつものように肩からガウンを掛けていると、まさかの言葉が飛び出してきた。
「スペンサー様は……男色家なのですか?」
じっと真っ直ぐにこちらを見据えてそんなことを言う。
こんなに愛しているのに、そんな疑いを持つのか! と頭に血が上った。自分のことは棚に上げて。
「そう……思うのなら、確かめて、みようか?」
ベッドに押し倒し、薄い衣をゆっくりと剥き、生まれたままの姿にする。
まろやかな膨らみに付いている、ツンと尖った果実を口に含み転がすと、もっとというように背を反らし、差し出してきた。
固く閉じた隘路を丁寧に解し、固く立ち上がったモノで貫いた。
ゆるゆると腰を動かすと、なんとも可愛らしい鳴き声を出してくれる。
あぁ、ベリンダを喜ばせることができている。
私のモノを咥え込んで、震えている。
この日、数ヶ月ぶりにベリンダを抱けた。
何時間も掛けて愛して、蕩けさせて、鳴かせた。
一睡もせずの仕事は辛かったが、満たされていた。
ある日、ベリンダの踵が見事なほどに私の目にヒットした。
「ぐあぁっ!」
寝入りばなだったせいもあり、思ったよりも大きな声が出てしまった。
流石に目は痛い。いつの間に逆さまになっていたんだ……。
「んんっ…………すぺんさーさま?」
ベリンダが目をコシコシと擦りながら起き上がって、私を見て顔を真っ青にした。
「どっ、どうされたのですかそのお顔! 目がっ、目があぁぁっ」
たぶん、腫れているのだろう。視界が少し狭い。
どうしたもこうしたも、君の見事な踵落としだよ。とは言えず、微笑んで誤魔化そうとしていたが、私達の大きな声のせいで、不審に思った侍女が寝室に入ってきてしまった。
「ベリンダ様……おそらくベリンダ様の寝相のせいかと」
ベリンダが実家から連れてきていた侍女だった為、睨み付けたが口止めに失敗した。
ベリンダは気の毒になるほどに泣いて謝り、その日から、体のラインが露わになるタイトな夜着を着るようになった。
足を開かない為、らしい。
隠されたほうが欲情させられると知った。が、股間は相変わらず静かだった。
第二王子殿下の婚約者殿と仲良くなったらしく、いつも楽しそうに報告してくれる。
昨日は『パジャマパーティー』というお泊り会をするのだと、とても興奮した顔で出掛けて行った。
寝相の心配をしたが、流石にベッドは別々だろうから少し恥ずかしい姿を見られるくらいだろうし、同性なんだから……まぁ、大丈夫だろうと思っていた。
沈んだ顔で帰って来たので、どうしたのかと聞くと、二つのベッドをくっ付けて、四人で寝たのだという。
「お三人に怪我は⁉」
「っ、やっぱり……そんなに酷いのですね…………」
お三人に怪我はなかったらしいのだが、私が一番にそれを心配したものだから、自身の寝相の悪さを再認識したらしい。
「あ、いや……私のせいだから」
私がベリンダにストレスを溜め込ませているから。きっと深層心理が寝ている間に表に……。
「え? いえ、私、昔っから寝相が悪くて」
「…………っ、本当に?」
訳が分からないという顔でベリンダが頷いた。
どうやら、共に寝るようになって、寝相の悪さは治ったが、大股開きだけは治らなかったのだと思っていたらしい。
だからあのタイトな夜着なのか……。
言えない。
いつもずり上がってお腹丸出しで寝ているから、朝に脚を閉じさせて、スカートを下ろしてあげているなんて……言えない。
「やはり、夜着はタイトなものにすれば良かったです」
「……いや、君が好きなのを着なさい。君がよく眠れる、それが一番なんだから」
「でも、そうしたらまたスペンサー様を蹴ってしまうかも」
「ん、いいよ」
「…………スペンサー様はドM? もしかして……娼館でそういうプレイを……背中や腕に時々出来ているアザは、もしかして!」
もう、この子はまた斜めな発想をして。
そのアザは君の攻撃だよ……とは言えないけども。
「何でもかんでも性癖にして娼館に繋げないでくれよ!」
「…………なるほど、庇いたくなるほどに贔屓にしている娼婦がいるのですね」
「なっ…………」
何故そういう話になるんだ。
愛しているのに。
信じてもらえない。
もう辞めてしまいたい。
もう嫌だ。
全て捨てて…………いいはずがない。
捨てれるはずがない。
国を揺るがす事態になっている事件を、私の感情だけで投げ出していいはずがない。
「…………離縁、したくなった?」
目頭が熱い。
心臓が痛い。
「何故……スペンサー様がそんなに辛そうな顔をするのですか」
「君を、失いたくないから」
「ならば、二度と! 娼館へ行かないで!」
「っ…………あ……」
――――終わった。
感情を抑えられそうもないので、ベリンダに背を向ける。
何かが頬を伝い落ちた。
それはパタリパタリと足元の床に小さな染みを作った。
「君の、好きにするといい。私は執務室に……籠もる」
ベリンダとの未来は、閉ざされる前に、自分で閉じよう。
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