150 / 196
閑話:妻を裏切って娼館に通う。(前編)
しおりを挟む宰相補佐になり、伯爵の地位を父から継ぎ、仕事に明け暮れていた……というよりは、押し潰されかけていた。
そんな折に、親友のユージン・ドゥルイットから、彼の恋人――後に妻になるアシュリー嬢の友人を紹介された。
クリーム色に近いブロンドヘアーとアンバー色の瞳を持ったご令嬢は、ベリンダと名乗った。
ベリンダ嬢と何度かデートを重ねる内に、背が少し高めでスラッとしているのに、顔はぽんやりとした柔らかさのあるアンバランスさ、思ったことをすぐに言ってしまう迂闊さ、何でも美味しそうに食べる姿に癒やされるようになった。
半年もしない内に本気でベリンダ嬢に惚れた。
形式に則り、彼女の父上に求婚の申込みをし、彼女に求婚し、一年の婚約期間を設けることになった――――。
「は? 娼館に、私がですか?」
「結婚を控えている大切な時期にすまない。…………頼む。全てを曝け出し、頼れるのはお前しかいないんだ」
「……かしこまりました」
元々は宰相閣下の私的な問題ではあったものの、国を揺るがしかねない犯罪の可能性もあった為、知る者は最小限にし、現地で調査をすることになった。
「スペンサー、娼館通いしてるという噂が立っているぞ。何があった?」
「……別に何も?」
「妻には伝えていないが……裏切るなよ?」
裏切るつもりなんて毛頭ない。そう言いたいが、言えない。
「おや? 貴殿は先日婚約されたばかりでは?」
「まぁ、そうですが……ね」
「身持ちが硬いのはいいことですが、発散させないと辛い、と女性は理解してくれませんからなぁ」
お前と一緒にするな。そう言いたいが、言えない。
「あの…………っ、いえ、何でもないです」
ベリンダが、潤んだアンバーの瞳をそっと伏せ、薄桃色の唇をキュッと噛んだ。
彼女も知ってしまったのだろう。
逃げ出しそうな彼女の腕に手を伸ばし、引き寄せて、抱きしめて、口付けをした。
「あと半年で結婚式だね。待ち遠しいね?」
「…………っ、はい」
違うんだ。
信じてくれ。
仕事なんだ。
君を裏切ってなんていない。
愛している。
そう、伝えられたらどんなにいいだろう。
そう、伝えたとしても、ただの言い訳にしか聞こえない気がして、何も言えなかった。
いつからか、ベリンダは私といても外向きの顔をするようになってしまった。
結婚式の今日でさえも…………。
「では、失礼いたします」
全て滞りなく終わり、夫婦の寝室のベッドに二人並んで座った。
後ろから腰にそっと手を回すと、ビクリと震えられた。
初めは緊張からだと思っていた。
抱きしめて暖かさを堪能した。
膝に乗せて、唇を重ねた所でベリンダの顔が真っ青になっていることに気が付いた。
「……ベリンダ?」
「スペンサー様、今日は…………娼婦に会いに行かれないのですか?」
初夜のこのタイミングでのこのセリフ、彼女なりの最大の抵抗だったのだろう。
小刻みに震えて。勇気を振り絞って。
もう一度、甘く甘く、どこまでも甘いキスをした。
口では言えない想いを、唇に乗せて。
「君を、心から愛しているんだ」
一瞬、花が綻ぶように笑ってくれた。が、すぐに偽物の笑顔に変わってしまった。
「ありがとう存じます」
そんな顔をしないで――――。
「んっ……あっ、んあぁぁ!」
何度も手で絶頂へと導き、痛みなんて感じる隙も無いほどに蕩けさせた。
娼館通いするようになって、唯一自分の為になった情報は、『処女でも、きちんと解して、慣れさせれば痛みは少ない』という事くらいな気がする。
「いやぁ! も、ダメッ!」
「どう駄目なのかな? ベリンダ?」
「い、イクッ……いっちゃう」
「うん。イッていいよ」
「やっ、もぅ、やぁぁぁぁぁん!」
ビシャビシャと飛沫を飛ばして果てた。
呆然とするベリンダの頭を撫でて、軽く口付けをした。
「あぅん……」
少し触れるだけでも刺激に感じるようだった。
これなら大丈夫だろう。
「ベリンダ、ひとつになろう?」
「スペンサーさまと……ひとつ?」
「あぁ、そうだよ。ほら、私のモノが君の中に入りたいと言っている」
昂ったソレにベリンダの手を添えると、彼女が真っ赤になってギュッと目を閉じた。
「ひとつに…………なりたいです」
「っ!」
あぁ、なんて可愛いんだろうか。
彼女の顔色を伺いつつ、ゆっくりと自身を埋めた。
やはり痛かったようだが、娼婦たちが言っていたような、『引き裂かれ、叫ぶほどの痛さ』ではなかったようでホッとした。
「痛いのに頑張ったね。ありがとう」
「はいっ。ひとつに、なれましたね」
嬉しそうに、心から微笑むベリンダが愛おしい。
暫くの間、彼女の中に留まり、なるべく動かないようにしていた。
「これからは、スペンサー様の腕の中は、私だけの場所ですよね?」
「…………」
幸せそうに微笑む彼女を見て、全身が凍りつきそうだった。
言えない。
まだ娼館に通い続けなければならない、なんて言えない。
彼女の中で萎えてしまったモノを取り出し、用意されていた布で彼女と自身を拭き清めた。
初めてのことばかりで疲れただろうから、そう誤魔化して、ベリンダを抱きしめて眠りについた。
起きたら、彼女はベッドから消えていた。
慌てて屋敷中探してみれば、自分の寝室でぐっすりと眠っているベリンダを発見した。
両手両足をダイナミックに開いて、とても安心しきっている雰囲気だった。
ベリンダの手足を閉じ、横に滑り込むと、彼女が寝返りを打ってこちらを向いた――――。
「――――ヴグッ⁉」
股間に激痛。
飛びかける意識。
かすむ目で視線を下半身にやると、彼女の膝がクリーンヒットしていた。
「べ……リンダ…………」
起きているのか?
怒っているのか?
嫌われてしまったのか?
元々、嫌われていたのだろうか?
「ベリンダ?」
何度声を掛けても、スヤスヤと安心しきった寝顔のベリンダ。……に、ボコボコに殴られた。
きっと、夢の中でストレスを発散させているのだろう。
きっと、いや、絶対に私が原因のストレスだろう。
全て私が受け止めてみせる!
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる