厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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144:最高傑作

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 ベリンダ様の顔に施す妖精メイクを考えていましたら、アシュリー様がふと考え込まれて、おずおずと話し始められました。

「このお題、ミラベル様が考えられたのですよね? ……ミラベル様が有利なのでは?」

 はい、確かに私が考えました。ですが、お題は二十個用意していたので予想や事前準備など出来ないこと。それから、認めたくはないのですが…………どちらかといえば、私のほうが不利なのです。

「ご安心下さい。ミラベル様は画伯なので、あまり相手にはならないかと思います」
「「まぁ……」」

 ザラが深々と皆様に頭を下げていました。毒を吐きながら。
 もうちょっとオブラートに包んでも良くないかしら? あと、可哀想な子を見る目をしないでいただけると……。
 辛い現実に目頭が熱くなりましたが、無情にもリジーがスタートの合図を出してしまいました。



 ベリンダ様のお顔はどちらかというと可愛い系統です。
 何故かセクシー系の黒い夜着を愛用されているようですが。
 ここはお顔の愛らしさを充分に引き立てれるように、ナチュラルメイクで。
 口紅はごく薄いピンク。
 アイラインとアイシャドウは内側がオレンジ、目尻にかけては明るめの黄緑を使いました。
 右の目尻に白い蝶が止まっているような絵を、蟀谷から頬にかけて描きました。まるで緑の葉で羽を休めているような。
 左の目尻からはオレンジ色の小花が舞っているような絵を。

 稀に見る傑作です。
 この楽しい空気感のおかげなのでしょうか、私が描いたとは思えない程に素晴らしいです。

「ふぅ…………完璧だわ」
「なんだかとてもくすぐったかったですわ」
「耐えていただいた甲斐あって、とても素敵な出来栄えですわ!」
「まぁ! 鏡を見るのが楽しみですわ!」

 そんな微笑ましい会話をしていると、先程と同じように相手チームとの間の布が除幕されました。

「「…………」」

 ふふふ、どうやら、素晴らしい出来栄えに皆さん絶句しているようですわ。

「アシュリー様、凄く可愛いですわ! ヘレナ様、藤の花の精ですか⁉」

 おでこから眉間に垂らすように藤の花のネックレスを掛けているような絵が描かれており、目尻辺りには薄紫色のラメが貼り付けてありました。
 アイシャドウやチークは紫系で統一されており、口紅はナチュラルピンクでとても可愛らしい妖精さんになっていました。
 これは、私のととても良い勝負です。

「あ、ありがとう存じます……ミラベル様のは…………」

 ヘレナ様が、ベリンダ様のお顔をじっと見つめながら、何故か眉をへにょんと歪ませました。
 もしや、負けを認め――――。

「鈴虫の精、でしょうか?」
「いえ、たぶん……蜻蛉よ」
「僭越ながら、蝶だと思います。たぶん」
「「蝶⁉」」

 ヘレナ様とアシュリー様は驚愕され、ザラが何故か「申し訳ございません」と謝り、ベリンダ様はぽかんとした表情で固まっていた侍女に「鏡を!」と慌てて言い付けていました。

「蝶? では、こちら側の虫は何でしょうか?」
「…………小花です」
「花……?」
「私、蝿かと思っていました」
「紛うことなき画伯ですわね」

 ベリンダ様、何故に疑問形なのですか? 花ですわよ。
 ヘレナ様、何を考えたら蝿に行き着くのですか。
 アシュリー様、本人の前で腕組みまでして納得しないで下さいませ。

「ヘレナ様の勝利です」

 ――――投票なしで⁉

 ザラがサクッと勝者の発表をしてしまいました。
 納得がいきません。
 今までで一番の最高傑作ですのに……。


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