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137:回収したくない派。
しおりを挟むお昼が過ぎてしばらく経った頃に、テオ様が戻って来られました。
陛下とお話をされたあと、執務に向かわれていたそうです。
「ミラベル、昼食はもう取った?」
「はい、王妃殿下とマリー様と頂きました」
テオ様がリジーに軽食でいいから部屋に用意してくれと伝えていました。
どうやらテオは食べれていなかったようです。
「いや、父上に色々と言い付けられてな。こればっかりは仕方がないので早急に終わらせる」
内容は教えていただけませんでしたが、どうやら重要なお仕事を任されたようです。
「ミラベルは何してた?」
打ち上げパーティーを決行すること、どういったことをするか、などをテオ様にお話ししました。
すると、テオ様が顎に手をあてて何かを考える素振りをされたあと、不思議そうな顔をされました。
「ミラベルは、あのエロエロしい夜着で人前に出て、恥ずかしくはないのか? 同性だとわりとあることなのか? まぁ、ザラやリジーに着せられてるから、平気か」
「…………」
何故に常時エロ衣を着る前提なのですか。
そして、聞いてきたくせに何故に自己完結で、私の返答を聞く気がないのですか。
私がとても胡乱な顔をしていたのでしょう、テオ様が慌てて左手で鼻を隠していました。
「何をされているのです?」
「いや、別に?」
「へぇ」
何故か室内に妙な緊張感が漂っています。
テオ様がこちらをチラチラと見ながら、お茶を飲まれているのを眺めていましたら、リジーが小さめのサンドイッチとスープを持ってきました。
左手でサンドイッチを掴み、ポイッと口の中に放り込んでは咀嚼していく姿は、良くも悪くも貴族らしからぬ行為で、何となく急がれているようにも感じました。
「もしかして、私が今朝お時間をとお願いしたせいで執務が滞って……」
「ん? いや。父上の命令の方でだ。気にするな」
「そう、ですか。夜は一緒にいただけそうですか?」
首を傾げてそう聞きましたら、テオ様が口を押えて尊いとか何とか呟きながら肩を震わせていらっしゃいました。
テオ様が午後の執務に向かわれるのをお見送りしたあと、アシュリー様、ヘレナ様、ベリンダ様に打ち上げパーティーのお手紙を用意しました。
「ふぅ…………んぅー、ちょっとお腹がムカムカするわ。ザラも初めはこんな感じだったの?」
「はい。あと半月ほどすると、色々な匂いが駄目になってくるかと思いますが、何が駄目かは人それぞれのようです」
「そうなのねぇ」
前世では身近に妊婦がいなかったので、マリー様やザラからリアルな声、というものを聞いては勉強をしています。
マリー様は先々月に、ザラは先月に悪阻が治まったらしく、人によって重さや期間が違うようで、私はどうなるのかしら? と少し戦々恐々としています。
「ザラはそこまで重くなくて短期間で、マリー様はかなり軽いけど長期間だったのよね?」
「はい、私的にはかなりきつかったのですが、人によっては何日も固形物を食べられないなどがあるようです」
「ひぃぃぃ……」
慄いていると、リジーがクスクスと笑いながらお茶を出してくれました。
妊婦向けのリラックス効果のあるお茶だそうです。
「ふぅ、美味しい。それにしても、来週が楽しみね!」
「「はい!」」
夜通しでおしゃべりしたりするつもりなので、貴賓室の一つを借りて、軽く改装してもらいました。
侍女たちには隣の部屋で待機してもらうので、彼女たちもパジャマパーティーをする予定なのです。
「……後日のセオドリック殿下が怖いですね」
「…………」
リジーが不穏なフラグを立ててくれました。
私としては、全力でメギッと手折りたいと思っています。
フラグは回収しない、したくない派なのですっ!
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