厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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135:バレた⁉

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 温かい何かに包まれているような、バスタブの中を揺蕩っているような、心地の良い世界が不意に打ち消されました。
 重たい目蓋を押し上げると、小鼻を限界まで広げて目をギラギラに輝かせたテオ様が、私を覗き込んでいました。

 何故にそんなにギラついて、と思った瞬間、妙に硬質な物が自分の口に当たっている事に気が付きました。

 ――――ガントレット。

 テオ様、ガントレット、テオ様、興奮。

 ――――ひっ。

「ぎゃぁぁぁ!」

 この顔はあれです、嗅いでいた事がバレたやつです。

 あまりの羞恥心に、叫びながらガントレットを力いっぱい遠くに投げてしまいました。
 取り敢えず布団に潜りました。
 何もなかったことにしましょう!

 あぁぁ、鮮明に思い出しました。
 ヤヴァイです! 思い出してしまいました!
 テオ様の匂いを嗅いで、安心して、うっつらうっつらしてーの、爆睡です。
 完全にやっちまった感が拭えません。

 人が布団の中で精神統一をしているというのに、テオ様ときたら、出てこいとか、何してたのかとか、かなりウザめに聞いてきます。
 布団から顔を半分出して、引かないかと確認すると、ヘッドバンキングするような勢いで頷きつつ、床に膝を付かれました。
 
 ズーハーズーハー、ムフーフムーと、荒い鼻息が顔に掛かりますが、いつもの如く無視です。
 
「テオ様がお部屋にガントレットを忘れられていたので――――」

 少し遊びつつ、こちらの部屋に持ってきました。
 何となく、匂いを嗅いでみたら、とても安心してしまったのです。
 テオ様に包まれているような、そんな気持ちになって来て――――。

「ふ、ふう、うんっ、でっ⁉」
「えらく前傾姿勢ですが……」
「気にするなっ!」
「はぁ…………。えっと、それで、そのままベッドに入り――――」
「っ、クッ!」

 テオ様が何故かとても苦しそうです。
 布団をギュッと握りしめ、俯いて震えています。
 一瞬、笑いを堪えているのかと思いましたか、深呼吸をしつつ、脂汗を垂らされているので、どうやら本当に苦しいようです。

「テオ様っ? 体調が悪いのですか⁉ どこか痛いのですか⁉」
「いやっ! 話の……話の続きを頼む。教えて……お願い」
「え……は、はい。続きと言っても、そのまま寝てしまった、で終わりなのですが……」

 シーンとしています。
 水を打ったように、ブラックホールの中にいるように? いえ、どんな状況か知りませんけど。
 とにかく、途轍もなく静かです。

「………………それ、だけ?」
「え?」

 絞り出すような震える声で聞かれました。
 テオ様のお顔が、きょとーん、となっています。
 眉が下がりに下がって、お口が三角形にポヘーっと開いています。

「匂いを嗅いで、寝た、だけ?」
「はい」
「……自慰は?」
「は?」

 ――――じい?

「手淫、してたんじゃないの⁉」

 ――――しゅいん。

「私の匂いで昂って、クチクチ、つぷつぷ、触ってたんじゃないのか⁉」

 ――――をい。

 テオ様がザッと立ち上がって、ガントレットを掴み、ガチャガチャと揺らして、声を荒らげていらっしゃます。

「これ! 私の手に見立てて、蜜壺に突っ込んでみたりとか!」
「するかぁぁぁぁ!」
「フゴッ…………ウグッ」

 取り敢えず、ベッドの上に立ち、軽く腰を落として、右手で拳を作り、少し後ろに引いて、勢い良く前方へと繰り出しました。テオ様の顔面目掛けて。

 この男、脳内でいったいどんな妄想を繰り広げていたのよ!

 ――――最低!


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