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127:色んな騎士がいます。
しおりを挟む「本日は、ようこそおいで下さいました。皆さま、グラスはお持ちになられましたか? では、只今より『王城スイーツナイトパーティー』を開催いたします」
「「乾杯」」
四人で話し合い、色々と計画したパーティーがとうとう始まりました。
招待客である四十人ほどのご令嬢の前で、メインホストの私が乾杯の挨拶をすることになりました。
ちょっと声が震えてしまいます。
「皆さま、招待状に書いてあった、注意事項は守られていますか? 読み間違えてしまった方々の為に、貸衣装もご用意しておりますので、王城のメイドたちにお申し付け下さいね」
あの文言は、『誰かから謀られている』と深読みをしてしまう方が多いという指摘を受け、着替え室と貸衣装を用意することになりました。
貸衣装は、若手のドレスデザイナー数人に『自作のアピールの場』として提供してみました。デザイナーたちもかなり乗り気で貸衣装を用意して下さったので、とても助かりました。
「さて、本日は少し特殊な試みと楽しみもご用意しております」
会場の壁にはズラリと若手の騎士たち。それから、王都には十人ほどしかいない女性騎士たち。
彼らの半数以上の胸には赤いバラが挿してあります。
「そのバラは、スイーツ大好き独り身同盟の証です――――」
会場がザワッとしましたが、得意技になりつつあるスルーを披露して、説明を続けました。
――――彼らはあくまでも警備です。
でも、スイーツ大好きなのです。
「なので! 職務とお腹に支障をきたさない程度に、『あーん』してあげてください!」
因みに緑の葉っぱを挿している騎士は、塩っぱいもの派です。
一応、多少の軽食もあるので、そちらもお好きに。とお伝えしました。
意中の彼を見つけるのもよし、騎士服の麗人に『あーん』するのもよし、なのです。
何故、今回このようなことをするのかというと、招待客が全員未婚女性だからです。
そして、お三人の謎めいた恐ろしい情報収集能力で、騎士団に意中の人がいるらしいご令嬢を招待しました。
騎士団の方は、テオ様とコーディ様に任せましたら、コーディ様とその部下たちが頑張ってくれたようです。
テオ様については、何していたのか知りませんが、取り敢えず、私の斜め後ろに甲冑騎士がいるので…………何かしらしていたのでしょう。
「では、美味しく、楽しく、食べましょう!」
「「はい!」」
ご令嬢方が頬を染めて返事をしてくださったので、私は既に大満足です。
るんるんと会場を歩いて、ちょこちょこスイーツを摘んでは、ご令嬢たちとお話し、ちょこっと後押ししつつ、後ろの甲冑のヤツの口にマカロンをぶち込んでみたりして楽しみました。
「ミラベル様――――」
呼ばれて振り向くと、そこにはオレンジ色に近いツンツンした髪の毛の騎士服の麗人がいました。
オレンジ色の睫毛に縁取られた瞳は、吸い込まれそうなほどの深い青色で、夕焼けから夜に変わる空を彷彿させるような女性でした。
「来週よりミラベル様の護衛に加わりますモーガンと申します」
「まぁ、そうなのね! よろしくね」
女性騎士は初めてです。
私よりも十センチ以上背が高く、スラッとしていて、控えめに言っても格好良いです。
「私、生チョコがとても好きです」
モーガンが私のお皿をちらりと見てそう言うと、カパリと薄い唇を開き、少し前傾姿勢になりました。
――――あら、いいの?
生チョコをピックに刺し、モーガンの口にそっと運ぶと、彼女が破顔して口を閉じました。
ドッキンコです。心臓が爆発寸前です。
後ろの甲冑騎士が「ちぃぃぃっ!」と激しく舌打ちしていましたが、それ以上は何も言ってはきませんでしたので、まぁ、大丈夫でしょう。
「あっ! モーガンずるいぞ! ミラベル様、私もお願いします!」
モーガンに二つ目の生チョコを『あーん』していましたら、何故か女性騎士たちに『あーん』をしてくれと群がられました。
ヤバいです! 私、モテモテです!
――――モテ期の到来かしら⁉
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