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118:ドンと来いです!
しおりを挟むちょっといじけて、テオ様を私室に追いやり。夫婦の寝室で私一人、ゆっくりと眠りました。
明日に備えなければなりませんのでっ!
朝目覚めると、昨日ほどの気怠さはなく、本当にホッとしました。
軽めの朝食を取り、ザラとリジーと二人のメイドの計四人に全身をもみくちゃにされ、ピカピカに磨かれ、お昼過ぎには、ギチッと締められました。
昨日と一昨日をほぼ寝て過ごしたおかげなのか、テオ様との激しい運動のおかげなのか、コルセットをあまり締めなくても大丈夫なのはちょっとラッキーでした。
テオ様がデザインからアレコレと口を出し続けた、テオ様の瞳の色のドレスは、大きめのV字カットで胸が零れそうになっています。
胸元のデザインのせいでなのか、おかげでなのか、コルセットは胸下からウエストまでのタイプだったので、胸が苦しくないのも有り難いのは有り難いのですが……何かエロすぎるなとは思いました。
全体的なデザインは、エンパイアラインに近いAラインのドレスで、スカート部分は水色系のチュール生地を何重にも重ね、光や見る角度で色が変わるようになっています。
胸元から腰辺りまでは白いレースの飾りが垂らされ、風になびくような作りになっており、全体的に小さなダイヤモンドが縫い付けられていました。
「ふあぁぁ……ミラベル様、綺麗です」
リジーがうっとりしながらそう言ってくれたのでホッとしました。
「良かった……。胸元のせいで『エロい』としか感想が出ないんじゃないかとヒヤヒヤしてたわ」
「「……」」
――――何故に、二人共黙るのかしら?
ザラ達に髪を結ってもらいつつ、お化粧も同時進行でしていきました。
お化粧はいつも通りのナチュラルで、少しだけアイシャドウを濃いめに。
髪は、緩い三編みを何本か作り、毛束を自然に見えるように引き出してからお団子に。
後れ毛を何本かぴょろっと出して完成です。
準備が完了して直ぐにテオ様が部屋に乱入してきました。
「っ…………綺麗だ!」
バタバタとこちらに走り寄って来たので、掌をズイッとテオ様に向けて突き出し、ステイ! と怒りました。
テオ様は……唇を尖らせてイジけてしまいました。
ちょっと可愛いです。
「全て、滞りなく、終わるまで!」
「…………はい。けち」
――――おい。
最後に余計な一言がありましたが、まぁ、概ね素直なので許してあげました。
「ところで――――」
誓約書へのサインはどうするおつもりなのでしょうか。
あと、書籍になっているとのことですが、テオ様は読んだのに、私は読んでいませんが、そこらへんもどうなっているのでしょうか。
もともと、証書のような状態だと思っていたので、事前に読んでおくなどの考えが浮かばなかったし、誰も読んでおくようにとは言われませんでしたし……。
「…………式で読み上げられるのを聞いて、サインするんだ」
あら、そうなのですねー。と軽く返事をしようとしていましたが、テオ様の明らかに後ろめたそうにグリングリンと動く瞳が、どうやっても不審です。
「っ……先走って、こっそり読んだ」
――――なるほど?
本当は、式の時に開示される内容なのですね。
それはそれでどうかと思いますが、取り敢えずは、そこよりも、です。
「で、サインは?」
「…………する」
「はい。ありがとうございます!」
「――――るからな」
渋々ではありますが、テオ様がサインすると言って下さったので、嬉しくてお礼の声がちょっと大きくなりました。
そのタイミングでテオ様が何か言われたのですが、よく聞こえませんでした。
「へ?」
「いいな? だから、サインするんだ。約束だぞ⁉」
良く分かりませんでしたが、サインして下さるのなら、なんでも約束しましょう。
ドンと来いです!
「はい、勿論です! さ、聖堂へ向かいましょう?」
「ん!」
「煩いですわ」
「ん!」
取り敢えず、テオ様は鼻歌を歌いそうなくらいにご機嫌でした。
テオ様がご機嫌なら、私もご機嫌です。
二人でルンルンと聖堂へと向かいました。
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