厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
上 下
117 / 196

114:ごめん。

しおりを挟む



 テオ様の様子がおかしくなってから、三日が経ちました。
 あの日から、何を話しかけても気もそぞろなお返事ばかり。
 待つのがいい女だ、とかの名言があるとかないとか、迷言だとか、じゃないとか……。

 ――――もうっ! あと四日で婚約式なのに!

「…………ミラベル」

 今日も何も話してくださらないテオ様に、少しがっかりしつつ、眠ろうとしていました。
 テオ様が、私の身体にそうっと手を伸ばして来ました。
 ゆっくりと唇を重ねられたところで、テオ様の胸を押し返しましたら、目を見開いて怯えたような表情をされてしまいました。

「あ……その…………」
「っ、いや、すまない」

 また。またです。
 ベッドから抜け出そうとするテオ様の夜着の袖をギュッと握り、逃げないで欲しいという思いを乗せて、テオ様を見つめました。

「なぜ、そんな目で見る」
「そんな、目?」
「…………責めるように見るな」

 ――――え?

 そんな思いは……ないとは言い切れませんが。でも、そんな思いを乗せたつもりはありませんでした。
 そして、テオ様がそう思われるということは、何かが後ろめたい、ということなのでしょう。

 ゆっくりと、柔らかく聞こえるように。でもしっかりと本心は伝えたい。そう思いながら言葉を紡ぎました。

「テオ様、責めていません。ただ、私ではテオ様の支えにはなれないのかなと…………少し寂しくは思っています」
「っ、ん。ごめん」

 テオ様が泣きそうな顔で、私に両手を伸ばして来られました。

「ミラベル、抱きしめたい。抱きしめて欲しい。…………頼む」

 テオ様が寂しがる子供のように抱きついて来られました。
 私の胸に顔を埋め、息を詰まらせながら、『ごめん』と何度も何度も絞り出すような声で言われました。

「テオ様? 何故、そんなに謝られるのですか?」
「……」
「言いたくないのですね?」

 こくんと弱々しく頷かれました。
 どうやら、本当に言いたくないようなので、テオ様をギュッと抱きしめて、ゆっくりと頭を撫でました。



 翌日のお昼、王妃殿下と食事をした後、先日のお茶会で用意したマカロンを持って、テオ様の執務室を訪ねました。
 今朝もとても沈んでいらっしゃったので、甘いものを食べて、少しでも気を休めて欲しいと思ったのです。

 扉の前に立ち、ノックをしようとしたところで、テオ様の低く不機嫌そうな声が漏れ聞こえてきました。

「――――か! そんなものにサインなどしません!」
「落ち着きなさい。ただの慣例だと言っているだろう」
「慣例ならば、そんな条項は撤廃すればいいではないですか」
「それには時間が足りない」
「っ! 私は、絶対に、婚約の誓約書にも、結婚の誓約書にも、サインなどしません!」

 ――――サインなど?

 テオ様は、私との婚約も、結婚も、したく無かった……?



「ミラベル様! お待ち下さい! きっと、何か、理由が…………きっと!」
「わか…………って、いるわ」

 リジーが後ろから、呼び止めて来ますが、今は止まりたくありません。淑女らしからぬとしても、今は、何も考えず、走りたいのです。
 走って走って走って、部屋に逃げ込みたいのです。
 部屋に逃げ込んで、鍵を掛けて、布団に潜り込んで、眠って、何も、考えたくないのです。
 そして、目覚めたら、きっと、きっと――――。

 ――――きっと悪い夢なのよ!


しおりを挟む
script?guid=on
感想 6

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

我が家の会話を全て厨二病全開にしてみた結果

海林檎
恋愛
父親の一言で負けじと厨二病全開で会話してみた。 内容は本編で ジャンルが謎なので目がついたものにしてます

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...