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113:翳り

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 お茶会は無事に終了し、お三人は侍女たちにお土産を大量に持たせて、ほくほく笑顔で帰って行かれました。



「無事に、終わったようだな」

 部屋でソファに座り一息吐いていると、執務が終わったテオ様が戻って来られました。
 そっと私の横に座り、頬に触れるだけのキスを何度もしてこられます。

「どうかされましたか?」
「いや……何となく」

 何となく。そうは言うけれど、テオ様のお顔は少し曇っていて。何かしらに悩んでいそうだなぁ、とは思うのですが、あまりしつこく聞いても嫌がられそうなので、テオ様が自ら話して下さるまで待とうと思いました。



 ぬぷり、と緩やかに熱杭が最奥まで入ってきました。

「ぅ、あぁっ」

 いつもなら、素股でクリを擦ったり、浅いところを突いたりしながら進み、私をグチャグチャにした後に、最奥にズドンと押し込んで『鳴いて鳴いて』と煩いのに。

「んっ、ておさま?」
「…………」

 テオ様は私に体重を掛けて覆い被さり、奥に留まり続けていました。
 時々ゆるりと動きはするものの、直ぐにビタリと止まります。

「あっ、んぅ」 

 それは快楽というほどの気持ち良さはなく、ただ股に何かが挟まっていて、少し擽ったい、という程度でした。
 何度かテオ様を呼びますが、「あぁ」とか「うん」とかしか返事を下さいませんでした。

 そうして十数分が経った時、テオ様が私の中からズルリと出て行かれました。

「え⁉」
「……すまない」

 ――――すまない?

 テオ様がベッドからふらりと降り、側に置いてあったタオルを掴んで腰に巻くと、そそくさと自分の部屋へと消えて行ってしまいました。

「――――えっ?」

 ベッドの上に放置されました。
 申し訳程度に毛布をバサリと掛けられただけです。
 訳が解らなくて、呆然としてしまいました。

 悲しいのか、悔しいのか、腹立たしいのか、全部なのか、解りませんが、お腹の中がモヤモヤとします。
 
 毛布を身体に巻き付け、テオ様のお部屋へと続く扉をノックしました。
 くぐもった声で、一人にしてくれ、と言われてしまいました。
 女性は、たくさん話して、共感して、ストレスを発散する人が多いのですが、男性はそうではないらしいのです。
 『一人で考える時間』というものが欲しいし、話したいときは、話したい範囲だけ話す。
 共感やアドバイスは欲しくない。

 ちょっと面倒な人に感じるのですが、男性とはそういうものですよ、と対人関係の教育で習いました。

「分かりました。こちら側の鍵は開けておきますね。……おやすみなさい、テオ様」
「……」

 返事はもらえませんでした。
 少し、モヤモヤとしましたが、ぐっと堪えて私室の方のベッドへと戻りました。



 翌朝、目が覚めると、妙な息苦しさと窮屈さを覚え、布団を捲りました。
 そこには、私の胸に顔を埋め、胴体にぎっちりと抱きついたテオ様がいました。
 どうやら夜中の内に侵入してきたようです。

 テオ様のサラサラの髪の毛を指ですき、頭をゆっくりと撫で、優しく名前を呼びました。

「テオ様」
「……」
「テオ、さま」
「……ん」
「嫌なことでも、あったのですか?」
「……ぅん」

 うん、とは返事をしてくださるものの、何かを思い詰めたようなお顔で、視線を彷徨わせては、口を少し開き、またキュッと噤むを繰り返されるばかりでした。

 一体、何を思い詰められているのでしょうか……。


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