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112:映えるやつ。
しおりを挟む婚約式後の晩餐会の情報を仕入れつつのお喋り、そろそろかき氷を出すタイミングでしょう。
三人にまだお腹の余裕はあるかの確認をしました。
何故か軽く黄色い声が上がりました。
「今後、夏の風物詩として流行らないかなぁ、と考えている商品があるのですが、食べてみませんか?」
三人ともぜひ食べてみたいと、割と前のめりで仰られたので、メニュー表をお見せしました。
「まぁ! 絵が描かれているメニュー表というものは初めて目にしましたわ」
「「私もですわ!」」
・イチゴ
・イチゴ練乳
・マンゴー
・マンゴー練乳
・宇治金時(風)
・レモン
・メロン
・コーヒー練乳
それぞれ、見た目が『映える』ように、フルーツを盛り盛りに盛っています。
コーヒー練乳だけは、トッピングはコーヒーゼリーにしてみました。
そして、メニューの絵ですが…………まさかの王族専属の画家の作品です。
王妃殿下に、絵が上手な方をどなたかご存知でしょうか? とテロッとお話ししてしまいました。
理由を話すと、王妃殿下が引くほどに乗り気になられまして、ご紹介を頂いたのが、画家のハイネン様でした。
違うんです、『イラスト』を、という意味だったんです。いえ、画家で間違ってはいないのですが……。
多少の攻防戦はあったものの、まさかの画家ハイネン様がかき氷をいたく気に入ってしまい、物凄いスピードで描き上げてくださいました。
「んーっ! んーっ! んんー!」
王道のイチゴ練乳を食べたベリンダ様がまたもや語彙力の消失。
「っ、なんですの⁉ フワトロッとしていて、サラッと溶けてしまいましたわ」
メロンを選ばれたヘレナ様は、メロンコンポートソース特有のトロみに頬を緩ませていらっしゃいます。
「マッチャのほのかな苦さと、アズキの優しい甘さが素晴らしいハーモニーですわ」
アシュリー様は、渋めの宇治金時を食レポしながら堪能してくださっています。
宇治金時……風ですが、とても再現率が高く、満足しています。
私は甘酸っぱいレモンを食べて、夏のじっとりした暑さを撃退中です。
「かき氷は、ジェラートやシャーベットとも違いますのね。食感や味がとても面白いですわね。パーティで出せば、大注目になりそうだわ」
「私、夏場は毎日食べたい」
「見ている限りでは、あの機械さえあれば、簡単に作れそうね?」
ベリンダ様は私と同じくいしんぼうさんのようです。
ヘレナ様とアシュリー様に関しては、話題性と製造方法が気になられるようでした。
王妃様も同じお考えがあったようで、私の名前でブランド展開していくようにと言われました。……かき氷を。
かき氷機も量産する計画です。
「どのご家庭でも食べられるように、機械は販売する予定なんです。今はまだ製造中ですが――――」
三人ともに、「買うわ!」と前のめりな返事をいただきました。
「ミラベル様、どうして急にこういった開発などをするようになったんです?」
ベリンダ様が頭を抱えつつ聞いて来られました。たぶん、勢い良く食べすぎたのでしょう。そこはそっとしておくことにして、経緯を話しました。
「確かに、地位確立は急務よね……くっ」
「何で、何回も勢い良く食べるのよ。学習しなさいよ」
ベリンダ様がまた頭を抱えているなーと思っていましたら、ヘレナ様がツッコミを入れてしまいました。
「よし、私達でミラベル様のお菓子を広めましょうか!」
「あら、いいわね! 先ず、派閥に入っていない――――」
ベリンダ様とヘレナ様が何やら白熱し始めました。
「ミラベル様は、婚約式に集中してて大丈夫よ」
「へ、はい」
「暗躍は、安心してこちらにお任せになって。婚約式の後に、少し大規模なお茶会をしましょうね」
「ふぇ? へ、へい」
アシュリー様が煌めく黄緑色の瞳を細め、割とあくどい顔で微笑まれました。
少し、大規模、ってどのくらいなのですか?
大規模なのに、少しって、何の部分が少しなんですか?
色々と聞きたかったのですが、アシュリー様の笑顔が、テオ様が暴走する直前のソレとそっくり過ぎて、何も言えなくなりました。深追いすると、何か危なさそうだったので。
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