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110:ちょこっとチート。
しおりを挟む王城のキッチンの片隅を借りて、テオ様に手料理を用意しました。
とろふわ玉子のオムライス。
ロールキャベツ入りトマトスープ。
ササミとチーズとバジルをロールして焼いた、ササミチーズ巻き。
ブロッコリーのパリパリチーズ焼き。
「ふぅぅぅ、よし。出来上がり!」
「では、お部屋に運びますね」
「ありがとう。リジー達の分も用意しているからね!」
「ミラベル様、それはセオドリック殿下には、絶対に言ってはいけませんよ? 絶対に、です」
よく解らないですが、リジーの妙な剣幕に頷いておきました。因みにザラは、匂いでダウンしかけていたので、自分の部屋で休憩をしておくように言い付けました。
部屋に戻りましたら、テオ様が何故かちょっと不機嫌だったのですが、運ばれた料理を見て驚き、食べ始めるととても喜ばれました。
「……美味しい。ミラベルがこの料理を⁉ 料理人だったとは聞いていないが?」
「前世では普通に知られているレシピですよ。料理人ではありません。多少のアレンジはしていますが、完全に私の考え、というわけでもありませんし」
レシピサイトで見たものを、何となくで再現しているだけですしね。
「……異世界には、こんなに美味しい料理があるのか。そして、ミラベルはそんな知識を大量に持っている、と」
テオ様が、私の護衛を増やさねばと呟かれたので、慌てて止めました。
護衛の人数を増やされては、身動きがどんどんと取りづらくなってしまう気がしたので。
取り敢えず、現状維持でお願いしました。
テオ様が、しきりに「美味しい、美味しい」と言い、顔を綻ばせてくださるので、私も自然と笑顔になり、とても楽しく食事が出来ました。
婚約式の準備をしつつも、アシュリー様たちと何度かお茶会を繰り返しました。
そして、婚約式の一週間前に、私主催のお茶会を王城のサロンで開催することになりました。
異世界チート、というほどのチートは出来ませんでしたが、多少異彩を放つデザート類と、かき氷を準備しました。
かき氷はふわふわのが食べたかったのでシェフに相談すると、シェフと金物商で何やら白熱して開発をしてくださり、かき氷機を作り上げて下さいました。
こちらの世界でも、夏の風物詩として受け入れてもらえるか、楽しみです。
「はぁぁ、ドキドキします。お茶会のホスト、ちゃんとこなせるでしょうか?」
「む? ならば、緊張を解してやろう」
「……なんですか、この手は」
お茶会を翌日に控え、ベッドでテオ様と話していましたら、何故か、胸を鷲掴みにされました。物理的に。
「揉んで、解してやろうかと」
「胸を?」
「緊張を、かな?」
「では、胸を揉む必要はありませんね」
「…………」
「……テオ様」
「…………ちぃぃぃっ!」
テオ様が、とても大きな舌打ちをしたあと、私に背を向けて不貞寝をし始めました。
ちょっと可愛らしかったので、テオ様の背中にペタッとくっ付いて、眠ろうとしていましたら、テオ様がモゾモゾと動いたあと、向かい合わせに戻り、抱きしめて来ました。
「当たっていますが……」
「…………そのうち収まる。抱きしめて寝たいだけだ。……いちいち言うな」
プチプチといじけていらっしゃって、更に可愛らしかっので、くすくすと笑いながら、テオ様の胸に頬を寄せて眠りに就きました。
「ミラベル? もう寝た? 早すぎやしないか?」
――――聞こえません!
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