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108:護衛の数。

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 しばらくアシュリー様と旦那様のお話で盛り上がったあと、急にベリンダ様が私の方に体を寄せて来られました。

「ミラベル様、少し不躾な質問をしてもよろしいでしょうか?」
「え、はい。答えられるかは解りませんが」
「私の夫は宰相補佐をしているのですが、王城庭園でセオドリック殿下がプロボーズされているのを目撃したと言っていたんですが、内容を教えて下さいませんでしたの! ずっと、ミラベル様にお聞きしたくて。どのようなプロボーズでしたの⁉」

 ズガーンと、雷に撃たれたような気分です。
 恋に落ちたとか、微笑ましいものではなく、衝撃のやつです。
 すっかり忘れていましたが、アレを見ていた方は割といましたものね。

「あっ、もしかして、とても大切な二人だけの……」
「いえいえ! アレはかなりの方に見られていましたから大丈夫ですわよ」

 ベリンダ様のお顔がホッとなり、直ぐに不思議そうなものに変わりました。

「では、なぜ箝口令に近い指示が出ていたのでしょうか? 主人はミラベル様にお伺いしなさい、ばかりですし」
「あー……」

 ちらりと他の二人を見ると、わくわくとしたお顔で、こちらを見ていました。
 これは話さざるを得ないやつですわね。



「「…………まぁ」」

 分かっていました、そうなると予想は付いていました。
 絶句のち、『まぁ』と同情にも近い溜息を絞り出す。しか選択肢はありませんもの!

「頭でっかちヘタレが……」

 あ、アシュリー様は違いました……っていうか、キャラが違いません⁉
 キラキラでお淑やかなアシュリー様はいったいいずこ⁉ この数年の間で、テオ様とそこまで仲が悪くなられてますの⁉

「あ、でもちゃんとしたプロポーズもしていただきましたよ」

 そこからは、それぞれのプロポーズの思い出話や、私が痩せた理由などで大いに盛り上がりました。
 時々、甲冑の騎士がガチャガチャガチャガチャと煩かったですが、皆様大人なので、スルーして下さいました。



「で。なんですか、その格好は」

 私は今、ソファに深く座り足を組み、目の前で正座した甲冑の騎士を睥睨しています。

「……」
「だいたい、モロでバレバレなのですよ」
「何故だ」
「身長と体格と、右籠手と、ヘルメットの後ろから出ているキラキラしい髪の毛!」
「……」

 何故か甲冑の騎士がモゾッと動きました。

「何を喜んでいらっしゃいますの?」
「べ、別に」
「そもそも、執務はどうされたのですか!」
「昨日までに終わらせて、今日休みにした」
「……」

 甲冑の騎士の隣に正座しているコーディ様をチラリと見ると、ヘッドバンギング並みに頭を縦に振っていました。

「コーディ様」
「はひっ!」
「貴方は、コレを止める役割もあったかと思うのですが?」
「そのぉ……本日はお休み、ということなので、ある程度の自由を……」
「ある程度の、自由ね。で、侯爵家に乗り込むのを、甲冑を着せて手伝ったと」
「…………そ、ういう、事に、なります、か、ね?」

 ――――全く。
 
 今日はアシュリー様の嫁ぎ先だったことと、侯爵様がお優しい方だったから良かったものの、本来ならとても失礼かつ、かなりの騒動になる可能性がありました。

「もしテオ様を狙った襲撃があったら、どうされる気ですか」
「私が一番強い」
「あ?」
「ごめんなさい!」

 テオ様がどうのじゃないのです。
 それに巻き込まれた場合に、護衛の少なさのせいで他の非戦闘員の人達が……となるのが嫌なのです。
 私には基本、二から三人の護衛が付きます。
 今日はテオ様含め、五人でした。
 
 ですが、テオ様が同行される場合は十人に増えます。
 明らかに、護衛の数が不足しているのです。

「別働隊はいた」
「あら、そうですの? って言うと思いましたか!」

 コーディ様がぼそりと、火に油を注がないでくださいよぉ……と嘆いていて、少し可哀想になりました。が、それとこれとは別です!


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