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閑話:2.22 あの日のザラとロブ。
しおりを挟むお嬢様の衣装部屋には、イベント用の棚があります。
二月二十二日用の棚には、猫の日の夜着が用意されていました。
お風呂上がりのお嬢様に、説明書の手順に従い、装着していきますが、解らないことがありました。
『尻尾はゆっくりと装着する。首輪同様、飼い主自らが装着することもある』と書いてあるのですが、尻尾の金具を装着する場所が解らないのです。
取りそこねたフックか何かがあるのかと探しましたが、見付からないので、セオドリック殿下に委ねることとしました。
何故か特別報酬をいただける事になりました。
尻尾は、セオドリック殿下自らが装着する方向で大丈夫なようでした。
部屋に戻ると、もうすぐ一歳になる娘はしっかりと寝ている、一緒に見に行くか? とロブに聞かれたので、こくりと頷きました。
お嬢様のお世話があり、部屋に戻るのが遅くなる日は、ロブと二人で娘の寝姿を見る事にしているのです。
「大きくなったわね」
「あぁ」
お風呂から上がり、髪を乾かしながら寝室に戻ると、ロブがタオルを受け取って、乾かしてくれます。
いつの間にか始まった、二人の習慣。
「ありがとう」
「ん。今日は、どうだった?」
いつもならここで、今日の出来事を話したり、明日の連絡事項などを済ませてしまうのですが、気になっていたことがあったので、ついつい聞いてしまいました。
「……その…………尻尾の金属は、肛門に挿すやつだ」
「…………はい?」
何度、頭の中で反芻しても、理解が及びません。
あの金属を、後ろの所に……挿し込む。
「で、ラッピングしたお嬢を、殿下の目の前に置いてきた、と」
あら、何だかトゲのある言い方に感じます。
髪の毛を乾かしてくれている手を振り払い、ロブをじっと見つめ、つい言ってしました。
「なに? お姿を想像でもしたの?」
「……」
少し泣きそうな顔のロブに、ベッドにドフリと押し倒されてしまいました。
きっちりと着込んでいた夜着を、やや乱暴に取り払われ、裸にされました。
「何度でも疑うといい。そのたびに俺は、ザラを抱くだけだから。貴女を愛し、貴女からの愛を乞うだけだから」
ぐずぐずに溶かされ、ゆっくりと挿入されました。
ロブは中に入って来たのに、一切動かずただ覆いかぶさり、私の顔中に啄むようなキスを繰り返していました。
「んっ……」
「ザラ、愛してる」
「んぁ、あっ、も、動いて」
「……仰せのままに」
何度も何度も、「愛してる」と囁き続けてくれるロブ。
何度も何度も、嫌な言い方をして、ロブに愛されていると確認してしまう私。
素直に「本当は信じているわ。私も愛しています」と伝えられたら、彼は心から幸せそうに笑ってくれるでしょうか?
******
凛とした妻と、ほにゃほにゃ笑顔が可愛らしい娘、愛しい俺の家族。
二人との時間が何よりも愛おしい。
ザラは、あまり感情を出してくれない。
時々、頬を染めて微笑んでくれる。
怒った時は少し、強い口調になる。
ただ、明日の護衛の任務時間の事を考えていただけだった。
セオドリック殿下が張り切っているなら、お嬢は昼までは起きて来られないだろうな、と。
ザラが怒っている。静かに、炎を燃やしている。
「何度でも疑うといい。そのたびに俺は、ザラを抱くだけだから。貴女を愛し、貴女からの愛を乞うだけだから」
――――もう、俺の中はザラだけなのに。
抱いている時は、俺に縋り付いてくれるから。
愛してると囁くと、頬を染めてくれるから。
「ザラ、愛してる」
「んぁ、あっ、も、動いて」
「……仰せのままに」
――――グズグズに融けて、混ざり合おう?
「ひあぁんっ!」
「ザラ、鳴き方が違う」
「っ⁉」
「ちゃんと鳴いて。手伝うから」
グリッと奥を突きながら、熟れた果実を押しつぶせば、ザラは美しく乱れる。
「にきゃぁぁぁ!」
「っ! 可愛いな。もっと!」
「にゃっ、やっ、今はにゃだぁぁぁ」
「ザラ――――!」
そうして、翌朝、自分本位のセックスと、短絡さに対する嫌悪感に押し潰され、ベッドに座り頭を抱える。
大体ここまでがいつのも流れだ。
「ん、ロブ…………もう起きたの?」
「あぁ、少し早い。まだ寝ていて大丈夫だよ」
気怠そうなザラの頬を撫で、眠るよう促すと、ザラが目を細め微笑んだ。
「ロブ、本当はね、ちゃんと信じているわ。貴方を心から愛しているの」
「――――っ!」
久しぶりにザラが言ってくれた『愛してる』は、ささくれ立った俺の心の奥深くまで染み入った。
もういい大人なのに、ザラに抱きついてボロボロと泣いてしまった。
「ぼれもっ、ばいじでる」
「あはは! 何を言ってるから解らないわよ!」
晴れ渡るような笑顔のザラが愛おしくて、何度も唇を重ねた。
涙で塩っぱかったのと、鼻水が付いてしまったのは、物凄く申し訳無かった。
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