厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

１０７：つい素が。

　アシュリー様に案内され、妙に緊張した面持ちのドゥルイット侯爵様にご挨拶をしたあとは、夏の花が咲き乱れるお庭に通されました。

「旦那様、とてもお優しそうな方ですね」
「うーん。優しいのはそうなんですが……あ！　お二人をご紹介しますね」

　なんだか、お悩みでもあるのかしら？　といった雰囲気でしたが、四阿でアシュリー様のお友達二人が、立ち上がってこちらを向かれていたので、話が途中で終わってしまいました。

　お一人は、アンダーソン伯爵夫人、ベリンダ様。
　もう一人の方は、サザランド侯爵夫人、ヘレナ様。

　お二人とも、アシュリー様の昔からのご友人とのことでした。

「お初にお目にかかります、アップルビー伯爵家のミラベルと申します」

　それぞれが挨拶をし、私はアシュリー様の正面に座りました。

「それにしても、警備が厳重ですわね。甲冑を着られた方までいらっしゃいますのね」
「物々しくて申し訳ございません。セオドリック殿下が、どうしても、と言われまして」
「まぁ！　お噂通り、とても愛されていますのね！」

　噂とはなんぞや？　と首を傾げていましたら、アシュリー様から懇切丁寧に、テオ様の暴挙を教えていただけました。

　まず、例の将軍の爪を剥がしたこと。

　――――うえっ、痛そう。

　アンジェリカ様の髪の毛を鷲掴みにして引き摺り回したこと。

　――――あら、酷いわね。

　全軍引き連れてエゾノイを落としに行く、などの脅しを国王陛下にしまくったこと。

　――――なにそれ、大丈夫なの⁉

　いきなり普通に、誰もが理解できる言葉を話し出し、私を護るためだけに全てを曝け出したこと。

　――――あ、それは、ちょっと嬉しかったです。

「っていうか、物凄く情報通ですわね⁉」

　びっくりしすぎて、テオ様とお話する時のように突っ込んでしまいました。
　ドゥルイット公爵様はブラッドフォード王太子殿下の側近らしく、アシュリー様にも情報がダダ漏れのようでした。
　そういえば、何となく見覚えがあるような……ないような？

「大丈夫ですわ。あの方って、凄く影が薄いと言いますか、人に覚えられにくいんですのよ。いつものふわっと現れて、ふわっと消えてますのよ」
「もう、そんなこと言って、ラブラブなくせに！」

　ヘレナ様がニヤリと笑いながら、アシュリー様の二の腕を肘でツンツンと突いていらっしゃいました。
　アシュリー様はツンとそっぽを向いてお茶を飲んでありましたが、頬が少し赤くなっていたのを私は見逃しませんでした。

「ヘレナ様！」
「は、はい！」
「そこのところ、もっと詳しく！」

　ヘレナ様は一瞬キョトンとしたあと、それはそれは良い笑顔で頷くと、アシュリー様とドゥルイット公爵ユージン様の、目眩めくるめくラブなロマンスの物語を話してくださいました。



「はぁぁぁぁん、素敵です。まさかアシュリー様が猛アタックされたなんて！」
「もうっ！　ヘレナったら、妙に盛って話すのは止めなさいって、何度も――――」
「ということは、割と事実だとお認めになるのですね⁉」

　すずいっと前のめりになってアシュリー様に詰め寄ると、頬を染めながら「まぁ、そうですが……」と言われました。

　――――やだ可愛い！