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106:お会いしたかった。
しおりを挟む今日は待ちに待ったアシュリー様とのお茶会の日です。久し振りにコルセットでぎゅむむむされ、デイドレスに着替えました。
「お茶菓子が入らなかったらどうするのよ」
「お呼ばれの席でガッツリ食べるのはミラベル様くらいです」
パーティとかのお菓子って、普段よりキラキラしててついね? つい、なのよ。決して食いしん坊じゃないのよ。
「食いしん坊だろ」
テオ様が煩いです。さっさとお仕事に戻りなさい。
「……行ってくる」
朝一で執務に向かわれたかと思いきや、数時間で戻ってこられて、なんで水色のドレスじゃないんだ水色のドレスを着ろぉぉぉなんで水色じゃないんだぁぁぁぁ、とポルターガイスト現象を起こしていらっしゃいました。
非常に煩かったのですが、思ったよりも素直に執務に戻られました。
馬車に乗り、リジーとロブとその他数名の護衛の騎士を連れて出発です。
ザラは、大切な時期なので馬車には乗せない! と私とロブで押し止めました。
「で、よ。何でこんなに護衛が多いの?」
「……普通ですよ」
「何よ、今の間は」
向かい側に座るロブが妙にソワッとしています。なーんか、怪しいです。
「セオドリック殿下は、お嬢を一人で外出させるのが…………怖いんですよ」
「あ……そうよね。だからテオ様も…………あら? ドレスの色の苦情しか言ってなかったわよ?」
「……こっ、心では! 今日の護衛もセオドリック殿下が決められた精鋭たちですから!」
そういえば、珍しく甲冑の騎士までいるわね。熱くないのかしら? なんて思いながら、馬車の中から外を眺めていると、大きな――アップルビー家の屋敷の五倍近くありそうな、お屋敷に到着しました。
「ミラベル様! お会いしたかったです!」
「アシュリー様っ! 私もですわ」
久々にお会いしたアシュリー様は五年前とお変わりなく可憐なのに、とても麗しい大人の女性になっていらっしゃいました。
馬車を飛び降り、走ってアシュリー様の元に駆け寄り、ヒシッと抱きしめ合いました。
ザラがいたら、はしたないですよ、と怒られて説教を一時間くらいされそうですが、今日はいないのでセーフです。
「ミラベル様、少しお痩せになられました? デビュタントボールでお見かけした時より、凄くほっそりとされたような……」
「はい……色々とありましたので」
テオ様がしつこくてしつこくて……まぁ、私も多少ノリノリになっていたのは認めますがっ。
危うく舌打ちしそうになり、グッと堪えていましたら、アシュリー様が若草色の瞳を潤ませながら、柔らかく抱きしめて、ゆっくりと背中を撫でて下さいました。
「大変な思いをされましたね。私はいつでもミラベル様の味方ですよ」
アシュリー様が少し鼻声になられたところで、あの事件の話か! と気付きました……。
非常に気不味いです。ですが、まだ方向転換、修正可能、なはずです。
「あぁりがとぉうございます」
「……ミラベル様、分かりやすく声が裏返られましたが?」
「「……」」
私からサッと離れて、一瞬真顔になったアシュリー様が、にっこりと微笑みました。
テオ様がよくする、あの目が全く笑ってない笑顔と、それはそれはそっくりのヤツでした。
「ミラベル様、我が家の庭はとても綺麗で、自慢ですのよ。私のお友達もお待ちですわ。一緒に、楽しく、ゆっくりお茶、しましょうね?」
「ふぁい…………」
――――あぁぁぁぁ。
私、蛇に睨まれた蛙です。
蛇とマングース……あら、あれってどっちが強かったんでしたっけ?
あ、猫に睨まれたネズミにしましょ。
ハツカネズミとかモルモットとかハムスターとか、可愛いですし!
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